第17話 闇の道を歩むとも ④

 ドレニアメローが爆発四散する映像がモニターに映される。ガリヴァーに移動したドラゴニア人にとって家に等しい艦が藻屑と化していく光景を見て、彼等はどう思っているのだろうか。

 

「いいのか? もう少し丁寧にできたのに」


 ブリッジで爆発するドレニアメローを見ながら、レーダー席に座るアチータへ問いかけた。アチータはモニターから目を逸らさず言葉だけを返す。

 ドレニアメローには、ベクターによって殺された彼等の仲間達が眠っている。最初のガリヴァークルーのように弔う事もできたのだが、アチータ達によってこのように艦ごと爆発する事を希望されたのだ。

 

「我々は死者を弔うという事をしない、火葬しエーテルへ戻す事が出来ればそれでいい」

「そうか」

 

 エーテル界に酸素は無いためこれ以上燃える事は無いだろう、艦内の空気が無くなるまで待つ気も無い。目的地を定めてからリオはガリヴァーを発進させる。

 最初の目的地はドレニアメローが王族と別れた地点だ。

 

「エーテルドライブ始動!」


 エーテルフィールドに突入したガリヴァーが十光年の距離を詰める。人数が増えて機関部の人員を増やしたおかげでリアクター出力の安定が段違いだ、これなら例えベクターと遭遇しても万全の体制でのぞめるだろう。

 フィールドを出る直前に副長が障害物の有無を確認し、無事に出られることを確信してからドライブを解除する、と同時にアチータが広範囲に索敵を行う。

 

「半径二百万キロメートル以内にベクターの反応はありません」

「ふぅ、毎度この瞬間は気疲れするよなあ」

 

 進路を王の艦と別れた地点に合わせて、ドロイドに運行を任せて休憩に入った。到着予定時刻は二時間後だ。この間に各セクションを回って問題は無いか確認してみよう。

 まずは保安部、といっても保安部主任のガラドはブリッジで火器管制の担当になっているのでリオの直ぐ横にいる。

 

「ガラドさん、保安部の方は何か問題あったりするか?」

「今の所ございません、それと自分の事は呼び捨てで構いません艦長」

「わかった、アチータさんは?」

「私も問題はない、連盟の基本システムは習熟しているので直ぐ慣れるだろう。あと私のことも呼び捨てで構わない」

 

 ドラゴニアは上下関係も厳しいらしく、下の者が上の者を呼ぶ時は敬称をつけるか役職で呼び、上の者が下の者を呼ぶ時は呼び捨てでないといけないらしい。

 口調の指定はなく、文化の違いも考慮はしているが、やはりそういった風習で育ったためか落ち着かないのだろう。

 いずれドラゴニアについて学んでおく必要があると感じた、またドクターの名前の件もあったのでノーム族やドワーフ族、そしてエンシワ連盟についても学ばないといけない。

 相手と分かり合うためには相手の文化と価値観を学ばなければ、少なくともガリヴァーにいればそれができる。

 

「あぁそうだ。どちらでもいいんだけど妖精人種についての資料を出しておいて欲しい。ドレニアメローには妖精人種がいなかったし、王様は妖精らしいから予習しておきたいんだ」

「では私がやっておこう」

「じゃあ俺は少し皆を見て回るよ、ドラゴニア視点でガラドも来てくれないか?」

「了解した」

 

 ひとまずブリッジを副長とアチータに任せ、リオはガラドと共に艦内を移動する。これまでバイトの後輩以外で部下という部下を持ったことがないリオにとって、一歩後ろを下がるガラドのような部下はむず痒い思いがする。

 ドクターとヒデはどちらかと言うと友人のように接していたし、副長はあくまでシステムなのでどうしようもない。ドラゴニア人はまさに新しい価値観となっていた。

 

「艦の地理は把握したか?」

「いえ、見取り図は頭に入れてありますが。まだ自分の足で回っていませんので」

「そうか。保安部を機関砲要員にするから、砲座ルームへ常に誰かを一人配置しておいてくれ」

「了解です。あと非常招集時の訓練と避難訓練を行いたいのですが」

「そういえばやった事ないなあ」

「良ければ自分がプログラムを組みますが」

「じゃあできたら持ってきてくれ、副長と俺とガラドの三人で更に詰める事にしよう」

 

 艦内を歩いていると保安部員とよく擦れ違う、ここも人が増えたと実感する。ドラゴニア人が三十人も増えたのでドロイドと合わせて運行最低人数をようやくクリアしたのだ。これでガリヴァーを最大限動かす事ができる。

 なんのかんので医療室へ着いた。

 

「というわけでドクターは何か問題あるか?」

「薬がきれそうなので補充してほしいですね」

「うーむ、どこかの惑星に降りるか」

 

 一度休憩を兼ねて惑星に降りようと決めた。

 最後は機関部だ、本当は科学研究部や天体観測部など細かく部署が別れているものだが、今の所そこまで人員を回す余裕はない、最低限を確実に回せるだけまだマシだ。

 

「機関部は人員補充されたから今の所問題はないな、しいて言うならドラゴニア人が堅物でジョークが通じない事だな」

「そこは頑張ってもろて。物資とかはどうだ?」

「大丈夫だが……そうだな、一度どこかで鉱物系を採掘しておきたいな」

「鉱物ね、なるほど」

 

 やはり物資の補給が必要らしい。ドレニアメローからそれなりに持ってこれた筈だが、そもそも艦のサイズが違うので足りていないのだろう。人数も増えた事で食料も考えなくてはならないし、やはり惑星を探して補充するしかない。 

 

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