第31話 【狼男】ロビゾーメン(O Lobisomem)

 ロビゾーメンはブラジルの狼男である。狼の顔をして、歯は大きく鋭い。目は爛々らんらんと赤く輝いており、耳は人間の何倍もよく聞こえるという。つまりは西洋の狼男と同じである。ブラジルではサンパウロ州かミナス・ジェライス州あたりによく現れたという。


 狼男になるにはいくつかのパターンがあるという。1つは、全員が男である7人兄弟の末子が狼男になるというもの。2つめは、7人姉妹の次に生まれた8番目の子が男の子だった場合、その子が狼男になる。3つ目のパターンとしては、狼男に噛まれた者が満月の夜に狼男になるということだ。ほかにも、狼男の血を浴びた人が狼男になるといわれている。


 狼に変身した男は、人間の子どもを狙って食べる。特にキリスト教の洗礼を受けていない赤ん坊が好物で、赤ん坊をお尻から食べるそうだ。狼男が狼の姿でいるのは、木曜日の夜から金曜日の朝までの間であり、それが過ぎると、彼は再び人間に戻るのだという。


 狼男になる呪いを解くには、狼に変身した日の夜12時までに誰かが狼男を傷つければよいとされる。狼男は血を流すことによって呪いから解放されるのだ。しかしこのとき、狼男の返り血(特に小指からの血)を浴びてしまった場合、今度はその者が狼男の呪いにかけられてしまうという。返り血を浴びた者は、朝までに7つの墓場を走り回ることによって、狼男の呪いから開放されるそうだ。しかし、呪いを解くことに失敗すると、もう二度と人間に戻る機会を得られないという。人間に戻れるチャンスを逃してしまった者は、永遠に狼男として生きるか、哀れにも銀の武器で殺されるか、炎で焼き殺されることとなる。


 ロビゾーメンは西洋の狼男のイメージを強く持っている。したがって、ヨーロッパからの入植者が、ブラジルに伝えたものだと考えられる。「洗礼を受けていない子供は、狼男に食べられる」と言い伝えることによって、キリスト教の布教を進めたのかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る