第28話 【太陽の使者】ジュルパリ(O Jurupari)

 ジュルパリといえば「太陽の使者」とされるときもあれば、「悪夢を司る悪魔」といわれるときもある。


 トゥピ族を始め、南米インディオの各部族に伝わるジュルパリは、地球にやって来た太陽の使者である。太陽は宇宙の王であり、その王と結婚するのに相応しい女性を探すために、ジュルパリは地球にやって来たとされる。


 ジュルパリが来る以前、女性の族長がアマゾンを支配していた。しかし、ジュルパリは、女性が支配者であるのは太陽の掟に反するとして、アマゾンの男性に今まで女性しか知らなかった秘密を教えた。アマゾンの男性は、女性の支配から独立し、部族長になっていったという。


 なお、ジュルパリによって権力を失った女性達だが、アマゾンのどこかに太陽王の影響を受けない女だけの部族が密かに残っており、彼女たちは「南米のアマゾネス」と呼ばれる。アマゾネスは別名でフィーリャズ・ダ・ルア (Filhas da Lua :「月の娘たち」の意) とも呼ばれている。こちらの名のほうが、太陽の使者ジュルパリの対抗勢力にふさわしい呼び名のように思われる。


 さて、話をジュルパリに戻そう。ジュルパリは「太陽の使者」であるか、「悪夢を司る悪魔」であるとは前述のとおりで、「悪夢を司る悪魔」のジュルパリは、全身を様々な花でおおっているといわれている。そして、その花は目まぐるしく変化するそうだ。イエズス会の宣教師せんきょうしが、アマゾンの部族にキリスト教を布教させるために、ジュルパリを不吉な精霊に仕立て上げたと考えられている。宇宙の王の使者を悪魔化させ、新しい信仰対象にキリストをかかげたということだろう。


 ところで、アマゾン川にむカワスズメ科の熱帯魚で、口の中で卵を育てるジュルパリという魚がいるが、この妖怪とは何の関係もない。なぜ魚に妖怪の名が付いたのかよく分からない。

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