第20話 【魔女と手を組んだドラゴン】クカ(A Cuca)

 クカはドラゴンで、キリスト教の聖人である聖ジョージに北アフリカのリビアあたりで退治された。その後、クカは、命からがらブラジルに逃げてきたのだという。そのときにクカを導いた魔女の老婆がおり、その老婆もまたクカと呼ばれている。


 この老婆はせて、ひどく腰が曲がっている。みにくい姿を隠すためなのか、フードのついた黒いコートを着ている。そして、夜になると現れて、反抗的で親の言うことを聞かない子供たちを食べる。食事となる子どもを閉じ込めるための袋を常に背負っているという。魔女の手口はあざやかで、子どもを捕まえた後に、すぐに姿を消す。それゆえ、さらわれた子供を見つけることは非常に難しいといわれている。仮に魔女を追い詰めても、そこで登場するのが、手下にしたドラゴンである。この魔女はそうとうに手ごわく、ブラジルの、ほかの魔女ブルーシャとはタイプが少し違うようである。


 なぜドラゴンも魔女もどちらもクカと呼ばれているのかというと、それには2つの説がある。1つには、ドラゴンのクカと魔女は、ともにブラジルにやってきたコンビなので、ドラゴンの名前である「クカ」が、いつのまにかコンビ名のようになり、どちらもクカと呼ぶようになったという説である。2つ目の説は、黒人奴隷こくじんどれいが使っていた言葉で、クカは「老人」を意味しており、それゆえ魔女の老婆もクカと呼ぶ、というものである。


 ところで、ドラゴンのクカを倒した聖ジョージは、ブラジルでは人気のある聖人である。リオ・デ・ジャネイロ (Rio de Janeiro) では4月23日を聖ジョージの日として祝日にしている。また、サンパウロでは、聖ジョージ公園という大きな公園があったり、コリンチャンスというサッカーチームのエンブレムにこの聖人が使われたりしている。

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