第13話 【吸血アリクイ】カペロボ(O Capelobo)

 カペロボとは、インディオの言葉 Cape(「壊れた骨」の意)とポルトガル語の Lobo (「狼」の意)の造語らしい。別名クペロボ (Cupelobo) といい、パラー (Pará) 州、マラニョン州に現れたという。一説によると、カペロボの正体は、魔法の薬を飲んで変身した、シングー (Xingu) 川の老いたインディオであるとも語られている。


 カペロボは長く黒い毛に覆われている。体は人間のようだが、顔はバク、あるいはオオアリクイのようであるという。足は丸太のように寸胴ずんどうで、この妖怪が通った道には、丸い形をした足跡が残るといわれている。


 カペロボは、夜行性で、すばしっこく走り回りながら、叫び声を上げて狩りをする。とても恐ろしい叫び声であるため、多くの人は、この声に震え上がって身がすくんでしまうそうだ。森や湿地帯しっちたいに姿を現し、周囲に何もない川の近くでも見かけることができるので、かなり広範囲に渡って獲物を求めて移動しているのだろう。


 カペロボは、獲物の脳を食べ、血を飲むことを好んでいる。そして、豚や犬を食い殺すために、家畜かちく小屋や犬小屋を襲うこともある。この怪物が人間を襲うとき、まるで大アリクイが舌を伸ばして蟻塚ありづかありをすくって食べるように、口から細い舌を出し、それを人の鼻腔びくうに突き刺して脳をすくって食べ、生き血をすすると考えられている。獰猛どうもうな肉食怪物であるが、ヘソを攻めると、この妖怪を退治できるといわれている。


 ところで、妖怪漫画家の水木しげるの著書『図説日本妖怪大全』を読むと、「おいがかり」という妖怪について語る文の中で、ブラジルの吸血アリクイの話が紹介されている(水木しげる著『図説日本妖怪大全』講談社1994)。この話は、恐らくカペロボのことを語ったものかと思われる。

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