第4話 道教の話し(^^)ノ

叔父さん曰く、私が夫と出会い、甲府盆地に越して来たのも、何か深い意味があるそうだ。


ひとしきり考えて、私は夫に質問をした。


道教って、そもそもどんなものなの?


私は、道教について何も知らない。


知らない事が、あのような形で実感を伴った夢として出て来たから、面食らってしまったのだ。


夫は、専門家ではないと前置きしながら、道教は、老子が説いた道(タオ)の概念を実践しながら、不老長寿を目指す中国固有の宗教だよ、と言った。


老子と言う名前は、聞いた事がある。


確か、紀元前に生きた、古代の哲学者だったかな。


夫は、不老不死を目指すには、体内で丹を練らなければならないが、呼吸法や身体の動きで、丹を練るのが外丹術。


飲食する事で陰陽を整えるのが内丹術であり、丹を練るには、大きく分けると二つの方法がある、と説明をしてくれた。


分かりやすく言うと、外丹術は、太極拳とかだね。


インドのヨガなんかも、その部類に入るんじゃないかな。


内丹術は、例えば、お酒って寒い地方だと日本酒が好まれて、暑い地方だと焼酎みたいな蒸留酒が好まれたりするよね。


お酒は、どちらにせよ、隠のものなんだけど、焼酎に比べると、日本酒は陽に寄ってるから、寒い地方で消費されるんだ。


飲んだ時は、身体が温まるからね。


まあ、そうは言っても、いずれは身体も冷えてしまうんだけどさ。


道教の実践者を方士と言うけど、道教の方士達は、そうやって、その昔、食べ物を隠と陽に分けたんだ。


人の身体は、隠か陽のどちらかに偏る事によって、アレルギー反応が起こるって言うのが、道教の考え方だよ。


強いアレルギー反応が起こる、蕎麦とかは、極陽のものだからね。


ただ、食べ物って温めると性質が変わるものもあって、生姜とか暑い日に、すりおろして豆腐にかけて食べたりするよね。


逆に、寒い日は鍋とかに生姜を入れて食べたりするのは、火を入れないと身体が冷えて、逆に、乾燥させたり、熱に通すと身体を温める性質を、生姜が持っているからなんだ。


じゃあ、秋茄子は嫁に食わすな、みたいな諺(ことわざ)も、そう言う意味があるのかな?


私は、ふと思った事を言った。


夫は、間髪入れず、そうだね。茄子は、身体を冷やす隠性の野菜なんだろうね。


まあ、そうやって、道教の方士達の活躍によって、漢方薬ってものが作られたんだよ。


もっとも、漢方薬だけでなく、道教の方士達は、陰陽を結合させる事で別の性質を生み出す科学者と言うべきか、錬金術師みたいな存在でもあったから、その過程で火薬とかが発明されたりもしたんだ。


つまり、道教の方士は、優れた薬学者であり、科学者であり、宗教家だった。


ただ、水と金属の性質を持つ、水銀なんかは、隠陽が極まった不老不死になる為の仙丹だと考えられたんだよ。


だから中国の皇帝って、不老不死を目指して、逆に水銀中毒に侵されて亡くなった人がかなりいたみたいだよ。


確か、秦の始皇帝の墓の土からも、基準値の100倍の水銀が検出されたって話しを聞いた記憶があるよ。


私は、それを聞きながら、私が仙人を目指すとか、柄じゃないな、と思った。


いくら不思議な夢を見たからと言って、私は特別な人間になりたいとは思わないし、夢如きに振り回されて、自分を見失ってしまいたくない。


ただ、昨日見たあの夢が何処に結着するのかを知りたいだけだ。


それを見透かすかのように夫は、僕は、昔から、古代史が好きで、大学は文学部を卒業したけど、大学が仏教系の大学だったから、僧侶の友人も多くいる。


恐らく、あの夢が何だったのかを解き明かすのに、僕は役に立つと思うよ。


でも、変に気負ったりしないで、楽しみながらが良いと思うけどね。


いきなり、仙人になる為の修行とかし始めたら、それはそれで、ちょっと引いちゃうだろうから。


それはそうだ。


私は、そもそも、スピリチュアルだとか宗教だとかに偏見を持っているのだ。


特に、ふわふわしたスピリチュアル的な、ご都合主義者に少なからず、嫌悪感を抱いている。


恐らく、夫も私にそう言う方向に向かって欲しくないのだろう。


夫が心配してくれていると思い、私は笑顔でそうだね、と答えた。

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