第2話 精神論

音楽雑誌『ロッキンオンジャパン』の7月号を読んだ。音楽家米津玄師さんの1時間半に及ぶインタビューの記事だった。映画『シンウルトラマン』の主題歌『M八七』のシングルとカップリング曲について語っている。


凄く仕事に対して、音楽に対して並々ならぬ情熱を持っている人。信念があり、ぶれない心の強さがある。天才的な才能もあるが、それだけでは無い努力も相当している、そんな印象を受けた。


誰かに何かを言われて、流されてしまったり、本当にそれはあなたのやりたい事なの?というようなことをしたりして流されて潰れていく人を沢山見てきた。一般的に人ってやってみる前は天才だと思っていて、始めてみるとだめだと収束してしまって。でもやってみなければ何も始まらないと言うことを米津さんは語っている。


自分の信念を潰してしまうようなことは、誰に何を言われようとも明け渡してはいけないと。彼の言葉は昔や今も漠然と思っていた私の心の迷いを上手く言語化してくれていて驚いた。その迷いの正体を言い当てられたようだった。


この人の精神論は自分の人生の欠点を気付かせてくれる。考えもしなかったことを。流されて、諦めて、楽な方へと行ってしまった弱い自分を。この人に10代の頃に出会いたかった。言葉を聞きたかった。心の柔らかい10代の頃に、こんなに精神論を語ってくれる人っていなかった。何となく無難な道を取るのが当たり前と思っていて、周りもそれを望んでいて、夢を道半ばで諦めてしまった。こうして考えてみると誰かに何かを言われてすぐにブレてしまう人生だった。そしてそれは今もそう。


私には信念がない。そして信念を貫くだけの気の強さも無い。性格上すぐに相手の言いなりになってしまうところがある。10代でこの人の話を聞いていたら、芯の強さを持てたなら、また今とは違った景色を見られたかもしれない。


この心の弱さはどこから来るのだろう。いつも相手にとって良い子で居ようとする。相手を怒らせてしまわないように失望させないようにとそれを心がける。気が付けば自分の信念なんてどこにも無くなっている。明け渡してしまっている。流されている。


米津さんは31才と言う若さであるが、精神が凄く成熟しているようだ。この人の精神論は何も考えずのほほんと生きてきた自分にとって、どう生きるのかを問いかけてくれる。人って生きた長さでなく、多くを聞き何を取り入れてそれをどう考えてきたかで心の成熟度が変わる。


師匠のように尊敬出来る人。それが米津玄師。





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