第19話 おまけ

静養してたら、解呪から2か月が経過したわ。

状況を整理すると、誠に不本意ながらナヨチンバカの元王太子に解呪されたみたい。腐っても私と同じ精霊王の加護持ちね。借りは必ず返すわよ。


次に火事だけど、冒険者エリアはほとんど全焼だった。黒キザのシンに再開発のための計画案を説明して復興は任せているわ。フューネル記念病院を真ん中に、その両側に冒険者ギルドと娼館ギルドが完成したわ。


部屋で絶対安静の私は、できることをやったわ。

フューネル財団の設立よ。この財団から焼け出された王都民の生活費や再建費を賄ってるの。そのため、いくつかの貴族を粛正したわ。


今回帝国と地下で繋がって、帝国軍の特殊部隊と軍将ツヴェルフを王都に引き入れた貴族よ。モホー子爵家とゲイル男爵家を取り潰して資産はフューネル財団行きよ。


本命の宰相バイスには届かなかったわ、トカゲのしっぽを切って知らん顔よ。筆頭侍女のネールは、火事の翌日には王都の川に死体で浮かんでたわ。


   ♦


フッ、フッ、フッ。


「殿下、また筋トレしてるんですか。」

「どうだチャンチャカチャン、この肉体美を見よ。この体なら黒キザにも力負けすることはない。医師の許可も下りたので今日から庭の散歩も再開だ。」

「ギル様、ローズ様、黒龍の方たちも心配して極秘でお見舞いに来て下さってましたからね。特にローズ様は色々とされて・・・・。」


いや~、心配されるっていいわね。

ほとんどは東地区再開発の指示を出してたんだけど、ローズは別よ。看病という名の体のケアをいっぱいしてもらったわ。声を殺して喘ぐローズは可愛いかったわよ。

縛りプレイってやつ?


「ローズ様、激しいですよね。『ん~』とか『あ~ん』とか、私たちこっそり覗いてたんですよ。」

「もちろん気づいてたぞ。人から覗かれてると思うと余計に燃えるな。」

「え~、殿下変態~。」


「チャンチャカチャンもこの2か月間ご苦労だったな。ネールの件も含めてお前達3人は王太子専属侍女に格上げた。給料も今までの倍出す。」


「「「大好き。」」」


安い大好きだけど、この3人は使えるわ。金さえ渡しておけば裏切らないわ。さて、東地区の復興具合を見に行きましょうか。


   ♦


「やあつるぎの会の諸君、出迎えご苦労。諸君の金づるフューだ。」


王太子ということがバレないように髪の色と目の色を変えて、ただのフューとして視察することにしたわ。


「フューちゃん、全快おめでとう。これからは毎日会えるわね。」

「フュー殿、もう無理をなさらないで下さい。フュー殿が倒れた時は寿命が縮むかと思いました。」

「姉貴がそわそわして待ってましたよ。」

「今度お姉様に心配かけたら殺す。」

「お姉様嬉しそうでしゅ。」

「お姉様は今日も綺麗だぜ。」


黒キザのハーレムの世話をしてから、黒龍メンバー4人からローズへの心酔っぷりがおかしい。お姉様呼びで完全にローズの手下状態だ。よく見ると黒龍の女性3人組は、お肌がテカテカだ。逆に黒キザは目の下に隈も出来ていてなんだかゲッソリしている。


「さあ、新しくなった東地区を見て回ろうじゃないか。」

「私この2か月凄く頑張ったのよ。後でご褒美頂戴ね、チュッ。」


ローズが自慢するだけあって、計画案以上の出来だ。

東地区を1本の幹線道路で結び、その両脇には飲食店・さまざまな店舗が計画都市のように並んでいる。冒険者ギルドは倍以上に大きくなり、酒場や簡易宿泊所まで併設している。娼館ギルドも豪奢ではないが、立派な造りだ。


「大火から2か月でここまでとは凄いな。冒険者や娼婦、商人が行き交い活気で溢れていて、その顔も明るい。」

「ギル様と影さんが犯罪者やチンピラを徹底的に取り締まったのよ。騎士団の見回りの回数も増えたわ。孤児達も保護して、いろんな店に仕事を斡旋したの。」


「見ろ、夜の女帝様だ。」

「王都に咲いた薔薇ローズ様。」

「キャー、黒龍の4人もいるわよ。王都の英雄パーティーよ。」

「ギル様、いつも取り締まりご苦労様です。恋人のタマさんは今日は一緒じゃないんですか?」


なんかローズの二つ名がになってるんだけど・・・。

黒龍の4人は英雄みたいな扱いだし、筋肉アホのギルは王都民から尊敬を集めてるし、タマが公認の恋人になってるし・・・。


「あら、夜の女帝様の隣の方は誰かしら。見ない顔ねぇ~。」

「夜の女帝様のお付きの人じゃない?」

「ただのよ。」


王都東地区再開発の全権委任者でお金を出したスポンサーの私が・・おまけ?

顔を隠してるから仕方ないわね、M男だけは私の味方よね。


「影のおっちゃん、今日もぼくたちと遊ぼうよ~。」

「影のおじさん、だっこ。」

「また孤児院にお菓子持ってきてね。」


は?あいつ影のクセになんで子供達に大人気なのよ。そもそも影が人前に出ちゃダメでしょう。剣の会の会長である私の立場がないじゃない。


本来なら私が、とかの二つ名をもらう予定だったのに。


「フューちゃん拗ねてる。可愛い~。」

「すす・・拗ねてなんかないぞ。」

「ウフフフ、今夜は寝かさないわよ。」

「よ~し、黒龍の隠れ家に行くぞ。」


黒龍の隠れ家の1階は、完全に高級レストランになっていた。タマとエリザベスは完全にウェイトレスだわ、元娼婦なので客のあしらい方も上手い。


その日のローズとの夜の大運動会は私の勝利で終わったわ。

私はおまけじゃないわよ。

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