第2話 雷鳴 side王太子

「ガイル王国王太子フューネルはここに宣言する。レイアーズ公爵令嬢との婚約を破棄す・・・・・・・・」


ピカッ。

ゴロゴロバッシャーーーーーーーーーーン。

ドーーーーン。

パリーーン。

ビューーー。

ザーザー。


「「「キャーーー。」」」

「なんだ?」

「雷が落ちたぞ!」

「ガラス窓まで割れたぞ。」

「騎士団を呼べ。」

「怪我人はいないか。」

「王太子殿下、大丈夫ですか。」


チッ、ぼーくの見せ場だったのに。

ようやくあのエロ釣り目女のレイアーズと婚約破棄をする渾身の名場面が・・・

右手の人差し指でビシッとエロ釣り目女を指差して、冷たい感じで宣言するぼーくの演技プランが台無しじゃないか。


その後、可愛すぎるアンナとぼーくで泣き崩れるエロレイアーズを断罪するばずだったのに。


まず、ぼーくが言うんだよ。

『聞きたいか? なぜこの先輩方のこの卒業パーティーで婚約破棄を言い渡されるのか、その理由を。』


可愛いすぎる子爵令嬢のアンナはぼーくの後ろから目に涙を浮かべて、セイレーンのような美声で会場中を魅了して言うんだ。

『どうしてレイアーズ様は、私に意地悪ばかりされるのですか? 平民出身の私がお嫌いなのですか。』


更に、ぼーくの側近の宰相の侯爵子息でメガネ君、アレクがメガネをクイッとしながら見下して断罪する。

『多くの令嬢方からレイアーズ嬢の悪行の証言を得ている。アンナ嬢の悪口を流布し、数々の嫌がらせを命じたという証言を。』

でもこいつはナルシストでゲイだから、アンナには安全パイなのでぼーくの敵ではない。心の中ではメガネゲイと呼んでいる。


トドメは義弟でムッツリ出歯亀のクレスだな。こいつが狙っているのはズバリ、義姉のエロ釣り目のレイアーズだ。学園内や食堂でエロ釣り目の無駄にでかい乳をチラチラ見ている。婚約破棄後に公爵に婚約を申し出るつもりらしい。

『義姉さんは、アンナ嬢を噴水や階段から突き落としたよね。義姉さんの傲慢さや嫉妬深さはぼくが一番知ってるよ。』


まあ確かに可愛すぎるアンナはこの学園のマドンサさ。エロ釣り目が嫉妬するのも無理はない。このぼーくの婚約者にこそふさわしい。美貌・家柄・能力・人望すべてを兼ねそろえてるぼーくに夢中なのも無理はない。でも、噴水や階段から自分からダイブするのはどうかと思うが・・・

それもこれもぼーくの魅力のなせるさがだな、うん、きっとそうだ。


もう今日で終わりさ。

この王立学園の2年間でぼーくへの羨望の眼差しは揺るぎない。

エロ釣り目もメガネゲイも出歯亀も今日でおさらばだ。

陛下にも后妃様にも根回し済だ、やっぱりぼーくは外交の天才だな。

明日からも王立学園のキングとして君臨し続けるのさ。


でも意外だったのは、筋肉アホの騎士団長子息のギルと宮廷魔術師長子息のロリヲタのマルスが中立の立場だったことだ。

あの2人、可愛すぎるアンナにも、ぼーくのカリスマ性にも見向きもしなかった。

将来出世しないタイプだな。


自分でも分かるが、ぼーくはスマートだ。金髪・碧眼の美丈夫だ。しかも長身で余計な筋肉が一切ない白馬が似合う王子様だ。髪型もサラサラヘアーの長髪だ。


自分語りが過ぎたかな。

そろそろパーティー会場も落ち着いて来たな。

さあ、婚約破棄と断罪の舞台劇の続きを始めよう。


華麗に起き上がろうかな・・・


「あれ?」


なんでぼーくがあそこに立っている?

なぜぼーくが見下ろされている。

ここは階段下のレイアーズの場所じゃないか。

あれ、ぼーくがなんだか固まっているぞ。何もしなくても絵になる男だな。

ぼーくは誰?

ここはどこ?

なんか胸が重たいな。

ギョエーッ、脂肪の塊が2つもついている。


「ねえ、フューネル様ぁ~。さっきの続きをしましょうよ~。早くう~。」


ああ、可愛い過ぎるアンナ。

慎ましやかな胸、細い手足。遠くから見てると一段と可憐だ。金髪・碧眼な所がぼーくとの相性も抜群だ、まさにロイヤルカップル。赤髪・赤眼でガサツなエロ釣り目とは大違いだ。


メガネゲイも出歯亀も早く言えみたいな雰囲気だな。


スーハー、スーハー。

落ち着くんだぼーく、状況確認だ。

え~っと、品のない無駄に胸がパックリと開いた黒のドレスだな。なんか足がスースーするぞ。

ぼーくの席の後ろに鏡があったはず、気づかれないように鏡で自分の顔を確認すると・・・・


「・・・・。」


ん?

んんん?

エロ釣り目のレイアーズになってるじゃないか。


考えろ、考えるんだぼーく、この場をなんとか凌ぐんだ。


「あ~諸君、雷鳴で先輩方の卒業パーティーが一時混乱したようだが、怪我人もないようだし、このままパーティーを継続しようと思う、いかがかな?」


パチパチパチパチ。


「私とレイアーズ公爵令嬢は、雷鳴で一時気を失っていたようなので、婚約者同士別室にて一時中座するが、諸君はそのままパーティーを楽しみ給え。」


「さすがは王太子殿下、その心配り流石でございます。」

「え~続きは~。」

「ぼくは義姉上を別室に連れて行きます。」


グッジョブ、メガネゲイ。

可愛いアンナちょっと待っててね。

出歯亀、ジロジロ乳ばかり見るな。


しかし、どうしてこうなった!

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