第37話 苛立ち

2022年5月22日


「おはよ。」

「おはよ。今日母親の病院に付き添ってた。血液検査の結果があまり良くなくて来週も検査になってん。。会うのその次の週やと駄目かな?」

 また延期か。28日の土曜日、デートは中止になりそうだ。母親の病院なんてきっと嘘。例え本当だとしてももう私は彼を信じられない。

「そうなん、心配やね。とりあえず落ち着いたら考えよ。付き添ってあげてね。」

「次はいつ空いてる?」

「次は2日かな。」

「木曜日かあ。」

「またランチしに行っていい?ベーグル食べたい。」

「いいよ。ごめんね。」

「謝らないでね。お母さん心細いと思うし、頼りにしてるやろうから、傍にいてあげてね。私も信頼してる。落ち着いたら遊んでくれたらいいから。。下鴨神社のかき氷も行きたい。」

「うん、行こね。セックスもしたいね。」

「うん。したかったり、したくなかったりやね。私はいつもしたいと思ってる。」

「体調によるねん。今日はしたい気分。」

「天気良かったしね。体調良いんやね。」

「少しね。薬はなかなか減らないけど。」

「頑張り過ぎなんかも。ゆっくりして。」

「うん。」

「私はたまにしか一緒にいれないから、話聴くだけしかできない。薬減らせる手助けできるのはいつも傍にいる人たちにかかってる。自分だけで減らそうとしても逆効果だから。」

「カメラマンから連絡は?」

 話を聞いてるのか、この人は。こっちは騙されつつも体の心配をしているのに、あなたの頭の中は私とカメラマンとのセックスの事でいっぱいなんですか。本当にイライラする。

「あるよ。」

 本当は連絡なんてない。

「なんて?」

「試し撮りしたいとか。色々言われてる。」

「試し撮りって?」

「服着たままで、写真撮ってみたいって。」

「外で?」

「家かな。」

「どっちの?いつ?」

「相手の。親が亡くなって誰も住んでない方の家。」

「いつ?」

「土曜日デートできないならその日にしようかな。」

「今週末?」

「うん。」

 もしかしたら彼は自分がデートを断ったことで私とカメラマンがデートする事になったら、それを避ける為に予定を返上してくれるんじゃないかと私には淡い期待があった。でもその考えは甘かったと思う。彼は私にカメラマンと会って欲しいから。それで興奮してオナニーをしたいだけなのだから。

「する?よね?」

「わからん。」

「ゴムは持っていく?」

「まだ買ってないし。」

「持ってくかどうか聞いてる。」

「しないでって言われたら持っていかない。

してもいいって言われたら持っていく。」

「Rさんの気分はどうなん?」

「私の気分?その場にならないとわからん。」

「じゃあゴム持って行って。することなったら動画撮って。カメラ越しに僕がずっと覗いてると思って見せつけるように乱れて。」

「うん、わかった。」

「それは絶対ね。嘘はなしで。」

「それって何?」

「したのにしてないとか。」

「わかった。」

「服着てだけじゃなくて、裸も撮るでしょ?」

「裸撮ったら本番やん。」

「でも乗ってきたら脱いで撮られて、ハメられそう。」

「するなら誘惑せんと。。」

「してよ。」

 人でなし。

「うん。」

「やらし。」

「好きになったらどうしよう。」

 彼を不安にさせたかった。

「。。。」

 週末の土曜日、私はカメラマンではなく友人と会う事にした。家で鰹を藁焼きしてくれるという友人と、他にも刺身などを準備し、昼間から飲むことになった。さて、面倒だけど少し演じてみようか。


2022年5月24日


「明日誕生日だから、おめでとうって言ってね。」

「自分で言ったらあかんやん、それ。」

「いつもと同じ、おはよ。ってきたら何か寂しいやん。先回りして危険回避w」

「デートした時になんかお祝いせんとね。」

「デートしたい。。」

 他の男とセックスするのばかり期待されるんじゃなく、純粋にデートがしたい。日が変わり、彼からお誕生日おめでとうとLINEがきた。私が根回ししたからだと思う。していなかったらきっと忘れていただろうから。

「今日はいっぱい自分にご褒美あげて贅沢するんやで!撮影あさってやろ?」

 やっぱりすぐにその話になるんだ。

「誕生日だからご飯食べに行こって。写真撮ったら外行くかも。」

「そのまま好きになってしまうんちゃう?」

「私のこと信じてないの?」

「不安なだけ。」

「大丈夫。」


2022年5月25日


「誕生日満喫できたかい?久しぶりに勃起したよ。」

 誕生日の夜、彼から勃起した性器の画像とLINEメッセージが入った。なにこれ。。

「笑。誕生日プレゼント?」

「誕生日プレゼントはデートした時に買うよ。」

「ありがと。セックスしたい。」

「土曜日するやん。」

 カメラマンとはしないと何度も言っているんだけど、相変わらずしつこい人なので、こちらも乗った方がいいのか。

「そやね。」

「どんな会話してるん?」

「今日はしてないよ。」

「土曜日何時にどことか決めてないん?」

「うん、時間はまだ。」


2022年5月26日


 次の日も朝から、

「おはよ。準備してる?」

 また同じようなLINEが入る。

「土曜日は2時間ぐらいしか時間ないみたい。試し撮りするだけで終わりそう。本業建築士なんやけど、今やってる設計大きい仕事みたいで。。」

「2時間あればセックスできるやん。。。」

 この人でなし。変態野郎。その為に行くんじゃないって言ってるのがわからんのか。

「いや。だからセックスじゃなくて、試し撮りに行くから。」

「ふーん。建築士なんやねぇ。几帳面そう。」

 それは。。お前と違って几帳面で素敵な人だ。お金もある。


 あれ。。私、彼の事が冷めた?うっとーしいと感じたり、気持ち悪いと感じたり、イライラするようになっている。でも気にもなっている。楽しみたい?いいように扱いたい?とにかくこのままでは済まさないとは思っている。

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