第2話 これは天罰!? でも……

 祐介と由紀子はいつの間にか付き合い始めていた。特にどちらからか告白したとかではなく、佳奈の事で色々と話し、色々な所に二人で行ったりしている内に意気投合し、二人は一つになったのだ。


 そんなある日、佳奈が自殺した原因として一番疑わしいと言われていた江口義之の娘、江口まりかが突然亡くなった。まだ中学2年生だった。死因はスキルス性の胃癌だ。


 この癌は、胃壁や胃の組織にしみこんでいくように進行し、進行すると胃壁が硬く厚くなる。通常の胃がんとは異なり、潰瘍などの病変を作らない。だから内視鏡検査胃カメラなど肉眼で確認する検査では発見が困難なのだ。また、とても進行が早く、診断時には既に転移した状況で見つかる事が多いという特徴がある。


 まりかは発見時にすでにステージⅣで、手の施しようがなかったらしい。


 インターネットでは、これはまりかの父である江口義之が佳奈をもてあそんで、しかもその罪を染谷彰に押し付けた事への天罰ではないかと言われていた。


「やっぱり、黒幕は江口義之なのかな」祐介は言った。

「そうだね。間違いないと思う」由紀子も答える。


「でもさ、何か証拠が出て来た訳じゃないよね」

「うん。でももういいよ。前から江口義之が怪しいって思ってたし、私そろそろ佳奈推しはやめようと思ってるから」

「え! あんなに熱烈なファンだったのに?」


「そうなんだけど、やっぱりもう亡くなった人だしね。『去る者は日日に疎し』って言う言葉もあるし」

「なんか由紀子変わったね」

「そうかな」


「うん。前はさ、ちょっと変な言い方かもしれないけど、住田佳奈に執着してたっていうか。そんな感じだった」

「そろそろ前を向いて生きていこうかなって」

「いいと思うよ」祐介は言った。


 由紀子の様子がちょっとおかしいような気もするが、祐介はそんなに大事おおごとではないだろうとたかをくくっていた。


 ところが……

 次の日、今度は由紀子がこの世を去った。自宅クローゼット内でタオルで首をつっていたのだ。


 警察は自殺であり、事件性なしと判断した。


 しかし、祐介にはどうしても由紀子が自殺したとは思えなかった。なぜなら、少し様子はおかしかったものの、長年心にひっかかっていたはずの佳奈の自殺原因に一区切りついて、前向きに生きようとしていると感じていたからである。


(これは事件だ……由紀子は自殺なんかじゃない。何者かに自殺に見せかけて殺されたんだ。それも佳奈の自殺と深く関係している人物に)祐介は確信に近いものを感じていた。


 そして、祐介の確信が間違いないであろうと思われる事が判明した。


 由紀子は今日、佳奈ファンの一人、杉本陽子と会う約束をしていたのだ。自殺するような人間が人と会う約束などするだろうか。


 祐介はこの事実を警察に伝え、自殺ではないから捜査するように促したのだが全く相手にしてもらえない。

(ちくしょう。こうなったら僕が独自に調べてやる)


 祐介は陽子と会う約束をし、待ち合わせ場所へ向かった。


 もしかしたら自分も殺されるかもしれない。でも祐介は例え命を落としてでも自分が調べなければ、佳奈も由紀子も浮かばれないのだと思い、勇気を振り絞って行動を開始した。


◇◇◇◇◇◇



 読んでいただきありがとうございました。



 次は第3話(最終話)です。お楽しみに。

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