第12話

―――くそっ…。何なんだあいつは…!


 川内純、正輝のいじめの元凶、は今日を振り返ってイラついていた。

 それもそのはずだ。今までずっといじめてきた奴がイケメンだと判明して、自分よりも断然強くて……。

 とにかく、次元が違った。

 そして、川内はその事実を認められないでいた。


―――正輝の野郎。明日、ぶっ殺してやる…!!


 彼は自分の部屋で正輝の写真を張り付けた枕を殴り始める。


「くそっ、くそっ、くそっ…!」


 たった一日だけであそこまで変わるものなのか、という疑問で埋め尽くされていた。

 もともとこういう性格だったのか?

 俺はこんな奴をいじめていたのか?

 この後俺はどうされるのか?

 

 これが頭の中をぐるぐるとこの疑問が回っていた。

 これを考えてしまうと、普通の人間が出来ないようなことをされてしまうような気がした。


 □


「おはよう、皆川」

「あ、正輝君!」


 皆川が正輝に飛びつく。

 一拍


「真里菜!?」

「あ、おはよう川内君」

「川内君?」


 どうやら、皆川から自分への態度への変化に不信がっているようだ。

 そりゃそうか、昨日まで純君、純君って自分にへこへこしてたんだからな。


「あ、正輝君。昨日の夜さあ」

「うん」


チッ、やっぱ下の名前を呼ばれるのはなんだかんだムカつくな。苗字でも同じだが。



 普通?の会話をしながらその場から離れていく。

 川内、小桜、七瀬はそこで唖然と突っ立っていた。


「ちょっと待てよ」


 そこから離れようとした俺と皆川に川内が声を出した。


「なんだよ、川内。何か用か?」

「…違うな。おい、真里菜」

「ちょっと、私を下の名前で勝手に呼ばないで」

「え…?なんでだよ…。なんでそんなに変わってるんだよ、真里菜」

「だから勝手に呼ばないでよ」

「……なんでだよ」


 □


 川内は、昨日の夜から正輝からの謎のプレッシャーで全然眠ることからできずに精神的に完全に参っていたのだ。

 もちろんこの裏には正輝がいろいろしているが、

 この、皆川の変わりようがとどめを刺してしまった。


「あと何?私そんなに変わってないけど…何言ってるの、川内君」


 お前はそんな奴じゃなかったさ。

 そんな性格じゃなかったんだよ。

 お前は変わっているさ…。まるで別の人間になったみたいだ


「くっくっくっくっ」


 つい今の皆川の言動が面白すぎて笑ってしまう。


「何、正輝君?」

「いや、なんでもない」

「そ、そうだ。正輝、お前だって思うだろ…こいつ変わったよな!」

「え、何言ってるの川内君、皆川は変わってないよ」

「嘘だ!お前だって違和感を感じてるだろ!」

「えー。違和感なんてないよー」


 相手を苛つかせるような口調で喋る。


「う、嘘だ。嘘よ言うな…。わかってくれるよな、杏奈!」

「そ、そうだよ真里菜。変だよ」


 さっきまで後ろで待機していた小桜が前に出た。


「変なのはみんなだよ。杏奈ちゃんだって何言ってるの?」

「俺とのことは?覚えてるよ、な」

「川内君とのこと…?」

「そうだよ俺とのセッ〇スだよ」


 おいおいよくそんなことを堂々と言えるな。

 今の俺でもできるか分からないぞ。

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