第10話 余韻

 おかしい。

 さっき帰ってきたお兄ちゃんの様子がいつもと違う。

 しかも、今日は帰ってくるの遅かったし…。

 私、渡辺明菜は今起こりうる最悪の事態を想像していた。

 今日はなぜかお兄ちゃんはいつもみたいに化粧をして学校に行かなかったし、今日帰ってくるのが異常に遅かった。

 もしかしたら……。

 いや、やめよう。お兄ちゃんに聞くまで分からないもんね!


 □


こんこんこん


「何?」


 部屋の中からお兄ちゃんの声が聞こえてくる。


「あ、お兄ちゃん。入っていい?」

「え?ちょっと待っ「入るね~」」


ガチャ


 勢いよくお兄ちゃんの部屋に入っていき、部屋の中を確認した。

 …よし、変なものはないぞ。

 お兄ちゃんの方を見ると呆れるような目で私を見ていた。


「おい、妹よ」

「なに?」

「今、『ちょっと待って』と言ったはずだぞ」

「え?私が聞いたのは『ちょっと待っ』だけど?」

「変わらねぇよっ!」

「お兄ちゃん、変」

「はぁ…もういい。で、何の用だ」


 お兄ちゃんが自分のベッドに座ると隣に手をポンポンとベッドをたたき私を隣に座るように促した。

 示してくれたところに飛んでいき、


「とりゃ!」

「うおっ。……危ないだろ」


 お兄ちゃんの注意を無視して。


「単刀直入に聞こうかお兄ちゃん。なんで、今日は化粧をしなかったの?」

「あ、それは」

「なんで今日は帰るの遅かったの!?」

「えーっと」

「なんで!?」

「だから」

「早く!?」

「え」

「遅い!?」

「しゃべらせて!?」

「で、なんで?」


 □


 分かっていたことだ。

 親は見逃してくれるかもしれないが、明菜は絶対に問い詰めてくるだろう。

 自分で言うのも恥ずかしいが、こいつ、かなりのブラコンだからな。

 化粧をしなかった事や遅く帰ってきたことはどう説明しようか…。


「……遅く帰ってきたことに関しては、今日図書館に寄っていったんだ。成績を上げたくなったからな」


 少し見苦しかったか…。

 すると明菜はどこからかメモ帳を取り出しメモを書いていた。


「ふむふむ。では、化粧をしなかった事に関しては?」


 これは本当に言い訳しずらい。

 …ごめんなさい、世界上の人々。

―――――――――――。

 時間を止めた。

 本当になんて言い訳をすればいいのか分からないのだ。

 …誤魔化す、か?

 

 □


 あれから必死に誤魔化して、明菜を部屋から追い出して自分のベッドに寝転がっていた。

 先ほどの明菜との戦闘のせいでシーツがぐちゃぐちゃだ。

 でも、それにしても、復讐って最高だ。

 まだ、あの時の興奮を覚えている。後悔は一切していない。

 あいつは少し大きすぎる。

 ちなみに、川内の趣味なのか知らないが、三人とも大きい。何がとは言わない。

 俺は大きいのより形が大事だと思う。そう、まさに明菜のように。

 明菜は理想の体をしている。が、妹だからかまったく興奮しない。


 …何考えてるんだ俺は。

 復讐をしてつい舞い上がっているんだな。


 それにしても…


 癖になりそうだ、復讐は。


 俺はこの時の自分の表情がどのようなものか分からないでいた。



あとがき

遅くなってすいません。

学校のテストとか、発表の準備が重なって執筆できませんでした。

夏休みに入ったのでこれからは頻繁に書けると思います。

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