0日前
五月の晴れた週末、予定通り櫻子は販売員を退職した。
しかし秋風が吹きはじめた九月の今、櫻子はもう一度乳酸菌飲料販売員として働き始めようとしていた。
櫻子が退職してすぐに今井は解雇処分となった。櫻子が発見したという事実は山下と工場長の尽力で外部に漏れずに処理され、櫻子は胸を撫で下ろした。
その後、山下が長年の勤務で築いた人脈を駆使し坂上工機の社員や近隣の人からの「櫻子に辞めないでほしい」という手紙を数ヶ月かけて集め、櫻子の義父へと届けてくれた。
第三者からの意見は義父を冷静にしたらしい。ついに義父は櫻子が働くことを認め、誤解していたと謝ってくれた。
櫻子は義父の行為が誤解だとは思っていなかったが嬉しくて泣いてしまい、それに驚いた愛莉も大泣きしてしまった。そして事件の熱りが十分に冷めた秋口、櫻子はもう一度制服に袖を通すこととなったのだ。
櫻子は知らなかった。
周りが羨ましくて羨ましくて、不甲斐なくなることも、自分に自信を無くして涙することも沢山ある。
でも、自分だけが出来ることも必ずある。
櫻子が知らぬ間に作り上げていた信頼は、紛れもなく自分自身の努力と頑張りから生まれたものだったのだ。
(またもう少し、頑張れそう)
まだ見ぬたくさんの出会いに胸を膨らませて、今日も櫻子はジャイロを走らせるのだ。
#5日後に退職する乳酸菌飲料販売レディ 萌木野めい @fussafusa
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
どうでも日記/萌木野めい
★60 エッセイ・ノンフィクション 連載中 10話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます