#5

 あれから数日が経ち、あの少女に──波瑠花に会うことはなかったし、電話もかかってはこなかった。

 だけどわたしは、勝手に登録された番号を消さずにそのままにしていた。気味が悪かったけれど、わたしの番号を知られてしまっているので、消去することに意味がないと思ったからだ。

 そんなある日、部屋のベッドで寝転がりながらスマホの画像を整理していると、そのなかに撮った覚えのないムービーがあって、そのサムネイルは、灰色のうろこに見えなくもない、とても不気味な物だった。

 なんだろ……これ……?

 ちょっと怖いけど、やっぱり気になるので再生してみる。

『ごめんね! 違うの、違うの! ほんとうにごめんね!』

 えっ……これって……あのときの……わたしの声?

『あー! やだ、ごめんごめん、ごめんなさい! ほんとにごめんなさいっ!』

 どうやら、わたしが波瑠花に駆け寄ったときにスマホの動画撮影が起動していたらしく、サムネイルの正体は、そのムービーだった。ほとんどの画像は無茶苦茶なもので、指先のアップやアスファルトの道路ばかりだったけれど、そのなかに一瞬だけ、波瑠花の泣き顔がしっかりと映っていた。

 嘘泣きと言っていた彼女。

 でも、動画に記録されていた波瑠花の表情は、とてもそんなふうには見えなかった。

「マジ泣きじゃん、絶対に……」

 びっくりして泣いただけ──ううん、違うと思う。やっぱ、情緒不安定なのかも。だけど、そう決めつけるには情報が足りないし、そもそも、わたしが知っている事といえば、彼女の名前と通っている中学校くらいだ。あ、それと携帯電話の番号も。

 スマホの画面を閉じて横向き寝になる。

 それからしばらくのあいだ、波瑠花について考えていた。


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