3


 *


 四輪駆動車に揺られながら、青年はずっとドーナツのまんなかになにがあると考えるか、現地ガイドに尋ねていた。


 現地ガイドはできた人物で、青年の問いに、かつて神さまが地球のまんなかにあけた穴にまつわるタカーイの伝承をはなしてきかせてくれていた。


 そのあいだにも車はぐんぐんと山岳の巻道をのぼってゆく。岩だらけの道を、右に左に揺れながら。


 のぼってのぼってのぼって……


 やがて高い樹木はなくなり、次いで低木もなくなり、ついには殺伐とした礫地にチラホラ、地べたに這うような草本しか見られなくなる。


 空が近づく。


 「森林限界を超えた。標高三五〇〇メートル。まだしばらく、」

 「博士! すっごい青空です! 陽の光もこんなに、うわっ!」

 「…キミ、太陽を直接見てはいけないと、初等科で学習しなかったのかね…」

 「びっくりした! 博士! これがレイリー散乱! ほんものの青! 純度一〇〇パーセント!」


 「タノシイワカモノデスネ」


 ガイドが顔をくしゃくしゃにして笑うのに、

 「…いや、騒がしくて、申し訳ない」


 博士も思わず笑っていた。

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