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四輪駆動車に揺られながら、青年はずっとドーナツのまんなかになにがあると考えるか、現地ガイドに尋ねていた。
現地ガイドはできた人物で、青年の問いに、かつて神さまが地球のまんなかにあけた穴にまつわるタカーイの伝承をはなしてきかせてくれていた。
そのあいだにも車はぐんぐんと山岳の巻道をのぼってゆく。岩だらけの道を、右に左に揺れながら。
のぼってのぼってのぼって……
やがて高い樹木はなくなり、次いで低木もなくなり、ついには殺伐とした礫地にチラホラ、地べたに這うような草本しか見られなくなる。
空が近づく。
「森林限界を超えた。標高三五〇〇メートル。まだしばらく、」
「博士! すっごい青空です! 陽の光もこんなに、うわっ!」
「…キミ、太陽を直接見てはいけないと、初等科で学習しなかったのかね…」
「びっくりした! 博士! これがレイリー散乱! ほんものの青! 純度一〇〇パーセント!」
「タノシイワカモノデスネ」
ガイドが顔をくしゃくしゃにして笑うのに、
「…いや、騒がしくて、申し訳ない」
博士も思わず笑っていた。
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