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「だってこれを食べたらドーナツのまんなかになにがあるかわかるじゃないですか! こんなにいろんなものが存在していただなんて……やっぱり位相幾何学は偉大です!」
「…キミはしあわせだね」
「え! 博士は違うんですか⁉︎ 穴のないドーナツが実在するなんてすごい発見だしまして中身がカスタード、チョコレート、ホイップ、クリームチーズ、カフェラテ…こんなに多様だったなんてこれ以上のことがありますか⁉︎」
「キミがドーナツのはなしをしているのか幾何学のはなしをしているのか、ついていけないな」
「なにって、ドーナツじゃないですか!」
ありえない! みたいにくりくりの目を見開くのに、博士は思わず頬が緩んだ。
紛争がはじまって以来、笑うことなど忘れていた。そういえば、ドーナツも。
「なるほど、」
その『貴重』なドーナツを手にとりふたつにわる。中にはとろりと甘い、マロンクリームが詰まっている。
「ドーナツのまんなかは、甘いクリームだったというわけか」
博士はその結論と甘いまどろむような午後の時間を、気に入った。
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