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 「博士! 温室のサーモがおかしいです!」

 「博士! きょうのドーナツは、」

 「博士! このほっそい管がまた割れちゃって、」

 「博士! 新発売のピスタチオチョコドーナツが、」

 「博士! インクこぼしちゃいました!」


 博士! 博士! 博士! 博士っ!


 操作ミス、ドーナツ、機器の破損、論文執筆妨害、それからドーナツ……


 もうニンゲンがきらいなどと抜かして我関せず、などとは、できなくなっていた。


 あぁ、目眩がする……


 と、思って見ていると、


 博士が眠るころに彼はひとり、ブツブツとなにごとか呟きながらソファに蹲り、ドーナツのかたちをしたグラフを睨んでいるのであった。


 「キミ、もう眠たらどうかね」


 最初こそそう声をかけたが、青年にはまったく届いていないのか、顔を上げすらしなかった。


 うっすら非常灯に浮かび上がるその影は、昼間の彼とはまったくべつの、なにかべつの、白衣に包まった猛禽類が、蹲っているようだった。

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