第14話「サイダイノカンジョウ」1

 翌日。茹だるような暑さの中、私は公園の自動販売機の影で善君を見守っていた。

 噴水前で待つ彼は見慣れた制服ではなく私服のため新鮮だった。


「お待たせしましたー!」


 翔子ちゃんの声が聞こえた。けれど私は目を疑った。善君も同じ気持ちね。


「えっ、おっ、あっ、翔子ちゃん?」


 そこに現れたのはスポーティな少女のカケラもない、白とピンクのふりふりな服を着てショートヘアを活かす白い帽子のお姫様だった。


「に、似合わないですか?」


 これが意外と似合うんだからギャップって怖い。とりあえず私はムカついた。こういうのってジャージ着てきちゃって一緒にランニングして終わっちゃうパターンじゃないわけ?


「いや、似合うよ。可愛い」


 ムカつくと同時に、善君の言葉で私の胸の奥がざわついた。小さな針で今にも割れそうな風船を突くかのように。


「へへっ、ありがとうございます。今日は私に彼氏がいるって証人のために友達の一人が離れたところから見てますが、気にしないでください!」


 公園入り口に立っている女の子。私はその子を知っている。隠れた私と目が合った瞬間、顔が青ざめている。


 早田椎奈ちゃん。


 歩き出した二人の後ろをすぐ様走り抜け、私は逃げようとする椎奈ちゃんを捕獲した。


「た、助けてくださいっ!何も私は!」


「もう、今は何もしないわよ。怖がらないで?」


「今は!?今はってなんですか!?」


「ほら、落ち着いて。ひーひーふー」


「フスー…フスー…。お、落ち着きました。」


「あなたが翔子ちゃんのお友達だったのね。」


「はい…。あの、私翔子が彼氏いるなんて見栄張ってるだろうから適当な人でも来るんだと思ってたんです。まさか諸星先輩だなんて。」


「他の友達には絶対に彼氏だなんて言わないでちょうだい」


「わ、わかってますよ。うまく誤魔化しますから…帰りますから…」


「ダメよ。一緒に最後まで見届けるの。何かあったら大変でしょ」


「何かって……何が?」


「何がって…あの……」


 目が泳ぐ葵を見て、すぐに椎奈は察した。


「あ〜…。なるほど。大好きな大好きな諸星先輩が取られたら嫌ですもんねぇ」


「椎奈ちゃん?調子に乗ってるとこの前あげたキーホルダーの寄生虫みたいにホルマリン漬けにするわよ。」


「ひんっ、ごめんにゃしゃい」


「図書室、荷物、秘密」


「さぁ!追いますよ葵先輩!何か起きてからでは大変です!このまま無事ふつーに終わるように!」


「そうそう。いい子ね」


 こうして葵と椎奈は二人を尾けることにした。もう一人、厄介なばかがいることも知らずに。

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