　青ざめた太陽が頭上で煌々と輝いている。

　ビルの屋上で俺は異星の街を見る。青い日光に照らされた建物たちは、恐怖で凍りついたかのように青ざめていた。

　屋外型ダンジョンにいると俺は異星の大地にいると実感する。

「ダンジョンハック・アサルト」より

●異星人との共生関係

　この第５１０並行世界の地球人は〈依頼人〉と呼ばれる異星の知性存在と特殊な交流を行っている。

〈依頼人〉は地球から千光年離れた惑星上に存在する大量のダンジョンの攻略を地球人に依頼している。

　地球人は〈依頼人〉からアサルトスーツと呼ばれるパワードスーツを供出されており、これをもちいてダンジョンを攻略している。

　このダンジョン攻略以外で地球人と〈依頼人〉との交流はほとんど無い。地球人側にとって〈依頼人〉の文化は不明で、また何の目的でダンジョン攻略を依頼されているのかすら知らない。

●ダンジョン攻略の報酬

〈依頼人〉は地球人に対しダンジョン攻略の報酬として１個１ｃｍ四方の立方体状の物質を成果に応じて渡している。

　この物質は万能物質と呼ばれ、その名の通りほぼ全ての分野において極めて高い利用価値を発揮する。

　燃料として使えば原子力以上のエネルギーを発する。

　万能物質を素材として使用すれば、それだけで製品の性能が飛躍的に上昇する。

　肥料としても優秀で、作物の収穫量と栄養価を数倍にする。

　これにより第５１０並行世界の地球文明における資源問題はほとんど解消されている。

第５１０並行世界の地球人にはまだ知られていないが、この万能物質は特殊な加工が施された物質化フォースエナジーである。フォースエナジーは想像力を現実化するエネルギーである。万能物質の効果は消費者の理想を現実化するという形でもたらされている。

●アサルトスーツ

　このパワードスーツは〈依頼人〉が地球人のダンジョン攻略用に開発されたものである。　最大の特徴は成長する点にある。

　魂を有する生物が死亡した際、魂の消滅にともなってフォースエナジーが空間中に放出される。アサルトスーツはこの放出されたフォースエナジーを吸収することで性能を強化する機能が搭載されている。

　またアサルトスーツが吸収するフォースエナジーは全てが強化に消費されているわけで無く、少なくとも半分程度が〈依頼人〉の元に送られている。

　おそらくそのフォースエナジーは万能物質に加工され、地球人の報酬や〈依頼人〉自身が使用しているのだろう。

●〈依頼人〉

　第５１０並行世界を観測した第２並行世界は調査員を送り出して〈依頼人〉の正体を探ろうとした。

　調査員を送る直前に、なんと〈依頼人〉のほうから第２並行世界へ直接のコンタクトがあった。そして、万能物質の製法やアサルトスーツの設計図の提供と引き換えに、第２並行世界に調査活動の中止を要請した。

　この出来事は第２並行世界に大きな衝撃をもたらした。

　第２並行世界が他の並行世界へ移動可能となってから数百年が経過するが、それまで自分たち以外に並行世界の観測や移動が可能な文明と遭遇しなかったためだ。

　第２並行世界は軋轢を避けるため、〈依頼人〉の要請を受け入れ、彼らの正体の調査を中止した。

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