フェイトキーパーとフェイトブレーカー

●運命を巡って競い合う超自然存在

 別の並行世界の創作物がベースとなって生まれる創作1種型並行世界は、その創作物のストーリーが運命として強力に作用する。


 創作1種型並行世界ではこの運命に対して、ある二つの超自然存在が生まれる。運命を守るフェイトキーパーと、運命を打破するフェイトブレーカーである。


 フェイトキーパーは運命こそが自分の生まれた並行世界の基礎であると考えている。運命が実行されることで、並行世界は現実世界として確かな強度を得る。もし運命を変えてしまえば、その世界は道しるべのない荒野を歩くことになり、いつ滅んでもおかしくない。


 一方でフェイトブレーカーは、運命があるからこそ、自分が生まれた並行世界は生まれる前の胎児のような状態になってしまっていると考えている。運命に従っている限り、自分の並行世界はベースとなった創作物の二次創作にすぎず、真の現実世界になりえない。


●フェイトキーパーとフェイトブレーカーの行動基準

 どちらの超自然存在も表だって行動することは無い。その運命の当事者達にそれとなく干渉するのが基本的な行動だ。直接的な行動をしたとしても、当事者達にこれから起きる運命を教えて、守らせるか変えさせる程度に過ぎない。


 フェイトキーパーにとって自分はそもそもベースとなった創作物には登場しない存在なので、表だって行動すれば「原作に存在しない登場人物が現れる」事になり、それ自体が運命を変えかねないからだ。


 フェイトブレーカーにしても、運命は当事者達が自力で変えるべき者と考えているので、よほどのことが無い限り、自分が直接行動することは無い。


●性格の多様性

 フェイトキーパーとフェイトブレーカーは個々の並行世界にそれぞれ生まれる存在である。たとえば、ある並行世界のフェイトキーパーは男性であるが、別の並行世界のフェイトキーパーは女性である。

 性格も並行世界によって様々だ。

 

 あるフェイトキーパーは自分のスタンスを守りつつ、運命が変えられても「世界がそれを望んだ」として受け入れる。

またあるフェイトキーパーはなりふりを構わず、あらゆる卑劣な手段を使い、時には表社会に姿を見せてでも運命を守ろうとする。

 

 これはフェイトブレーカーも同じである。

 幸福な運命を守るからと言ってフェイトキーパーが善良とは限らず、また悲劇的な運命を変えるからと言ってフェイトブレーカーが正義の味方とは限らない。

  

●運命の是非

 実は、運命が実現しようと変わろうと並行世界の存続には一切関係が無い。それが一つの世界として成立した以上、たとえベースとなった物語があり、それが運命として作用しても、その並行世界で紡がれる膨大な歴史からすれば、ほんの一瞬の出来事に過ぎないからだ。

 フェイトキーパーとフェイトブレーカーは、いわば並行世界そのものが「運命を変えるべきか否か」と自問自答する思考が、個人としての自我と肉体を得た存在ともいえる。

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