第472並行世界 レッツゴー異世界 3つのチートを持つ男

 その車体には轢殺痕とおぼしきヘコみや血の汚れとともに、「レッツゴー異世界」、「転生は救済」、「人類総轢殺」といった狂気的文言がなぐり書きされている。


「そこの少年!」


 男が運転席から身を乗り出して狂気的な微笑みを向ける。

 

「君も異世界に転生させてあげるよ!」

「うわッー! 発狂異世界マニアック!」


「レッツゴー異世界 3つのチートを持つ男」より

https://kakuyomu.jp/works/16816927859413888606


●転生と転移のための世界

 第472並行世界は異世界転生もしくは異世界転移を成立させるために存在する世界である。

 第1並行世界に住む「なろう系」と呼ばれるファンタジー小説の愛好者達の集合無意識を元に、この並行世界は生成されている。


 この並行世界の文化は一見すると、第1並行世界と限りなく同じであるが、「なろう系」と呼ばれる物語類型が異常に普及している。

 たとえば、第1並行世界では日本のみで運営されている、「■■■になろう」や「カ■■ム」といった小説投稿サイトは、この並行世界において世界各国で運営されている。

 

  少なくとも、第472並行世界では1970年代頃から、「ファンタジーと言えば異世界転生と異世界転移である」と人々は考えている。

 そのため、ホラーの帝王と呼ばれる作家や、魔法使いの学校を舞台にした作品で有名な女性作家も、この第472並行世界では異世界転生や転移をテーマとした作品を執筆し、小説投稿サイトに投稿している。


 これにより、第472並行世界の人間は異世界転生や転移に極めて高い順応性を発揮する。ある日突然、異世界に飛ばされたとしても、即座にそれが現実だと認め、本来自分の日常とはかけ離れた世界に対して、「そういうものである」と疑うことはない。


●発狂異世界マニアック

 異世界転生と言えば自動車による轢殺だが、第472並行世界ではこれを自発的に行う者がいる。

 これは異世界へ送り出す転生者を出すための、第472並行世界独自の自然現象のようなものであり、この世界の人間は1億人に1人の確率で正気を失い、強制轢殺転生殺人鬼に変貌する。


 これになってしまった者は「人々を幸せにするため異世界に転生させる」、「神の意志を代行して人々を救済する」といった思考を持つようになり、無差別に轢殺転生を行おうとする。


 これによって樹上多次元世界全体で発生する異世界転生のおよそ7割が、第472並行世界の発狂異世界マニアックによってもたらされている。

 どこかの並行世界で異世界転生者と遭遇した場合、その者は第472並行世界の出身者である可能性が高い。


●調月考知郎

 この少年は特殊な異世界転移者である。

 通常、異世界転移や勇者召喚といった異世界側の行動によって転移するが、彼の場合はアカシックのある目的によって異世界へ転移する。

 彼は異世界転移する際、C.H.E.A.T能力と呼ばれる超自然技能をアカシックから当たられている。


 C.H.E.A.T能力は正式名称をCoordinated 調整された Human 人類 Evolutionary 進化 Augmentation 増強 Technology技術と言い、アカシックが自分の能力で収集した知識を融合・発展させ、極めて強力な超自然技能を後天的に自由に付与可能としたものだ。

 

 考知郎に与えられた3つのC.H.E.A.T能力は完全不死、超効率成長、超自然技能コピーであり、彼はこれらを駆使して第473並行世界を冒険した。

 この冒険には第2並行世界からアカシックに連れてこられたトラベラーが同行しており、その繋がりで並行世界調査機関は考知郎の存在を知った。


 冒険が終わった後、並行世界調査機関は考知郎に与えられたC.H.E.A.T能力に着目し、彼を調査員としてスカウトした。並行世界調査機関の歴史上、初の外部協力者の誕生である。

 その後、彼は完全不死能力を買われて、危険な環境にある並行世界の調査を行っており、かつての冒険で共にしたトラベラーの任務に協力することもあった。

  

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