幕間の夢物語

『searth,

  itbreak.

   srok,

    itabrk.

     stukti,

      breathfire.

       sthem,

        drofirohell』


 女は無敵だった。

 今はもう失われた古代の言葉の呪文を唱えれば、地を裂き、岩を砕き、地形を変えるほどの呪文を用いて、敵を破った。

 一人で万をも超える大軍を前に戦ったことさえあった。


「先の戦争」の折、残された伝説の多くは彼女のものだった。

 これは、ポドが祖母から寝る前に聞かされたおはなし。

 または、夢なのかもしれない。





 

 この皆の住まう、一つの星では二つの世界があった。

 我々の住まう表の世界と、魔族の生まれた裏の世界。

 彼らは星の中の、地下世界に住んでいたが更なる繁栄を望んで地上へと現れた。それも地球を半分に割り、裏返して地上に現れるという恐ろしい手段を持って。恐ろしい手段によってもたらされたのは、地上の半分が敵に回るという圧倒的な陣地と数の拡大。それに地上に生きる者の半数が人質にとられたという事実だった。


 子どもの寝物語に、相応しくない部分はさすがに話さなかった。

それはただわたしが歴史を学んだ結果だ。

ポンの御伽噺は、英雄の冒険譚である。




 

 その日──の王は、地上の最前線に立って戦っていたという。

 

一振りの伝説の剣が、王の手にはしっかりと握られていた。ドワーフが地中深くから掘り出した上質な日緋色金オリギンダルを引き伸ばし、エルフとともに槌を振るい、最上級の技術で打たれた宝剣。

 一振りで敵の一団を殲滅せしめたのは、ハンドガードの中心に嵌め込まれた緑色の石の力だ。


 人の王。エルフの王。ドワーフの王が必死に最前線で戦い、魔王に致命傷を与えるという冒険譚。

 それの結末を聞いた時、ポドは眠ることができなかった。

 




 溢れんばかりの興奮が、わたしを包む。目が夜の闇を照らすように光った。

 ワクワク。ドキドキ。

 心がフワフワと躍った。

 ポドも、彼女のようになりたいと願い、

 そう思いながら、いつの間にか夢の世界に落ちていた。

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