第52話 最終?決戦

 翌日、俺は不機嫌ながらも帰ってきたベルと、ヴィディ達を連れて神の待つ魔界庁へと向かった。


 正面玄関から入ると、そこには既にスタンバイしていたハーデス様が大手を振って出迎えをしてくれた。その隣ではファミが小さく手を振っていた。


「よくぞ来てくれた、幸太君! 今日はお互いに力を合わせて、あの悪魔を打ち倒そう!」

「うっ、打ち倒すかどうかは分からないですけど、全力はつくしますよ」


 その後、何故かボクシングのセコンドの様なトレーナーに着替えたハーデス様とファミを連れて、神のいる部屋の階にエレベーターに乗っていった。


 再び魔王の大きな扉の前に立つ。


 今日は違う意味で緊張感が俺を襲った。


 俺はつばを飲み込む。しかし、昨日の様に逃げ出したくなる気持ちは無く、今日は決心を持ってその扉を押した。


 そして、扉は重くて開かなかった。


「……ファミ。お願い」

「……はい」


 ファミによって開けられた扉の先に、決心を持った俺はゆっくりと足を踏み入れた。


 目線の先には、前日と同じ様にゲームに興じている神がいた。そして、部屋の隅には何故か体育座りで、膝のあたりに顔を埋めているアテナがいた。


「ファミ。アテナはどうしたんだ?」

「ええ、実は昨日皆様が帰られた後、アテナ様のご要望通り神との対決をされまして。……その後三十連敗をされて、今に至るです」


 三十連敗とか……あの見た目の者にいうのはあれだが、大人げなさすぎる。これではただのいじめっ子ではないか。


 いつものバカ元気さが無くなったアテナの元に歩み寄る。


「あっ、アテナ……大丈夫か?」


 俺の言葉に反応したアテナが、顔を上げてこっちを見た。アテナは目に一杯の涙を溜めながら、腰に抱き付いてきた。


「ごうだぁぁ! ごうだぁぁ! おで! おで! ぐやぢぃいよおおおおお!」


 まさかの号泣だった。


「ごうだぁぁ! おで、がんばったんだよおおお!」


 俺は子供をなだめる様に、アテナの頭を撫でた。


「そっ、そうか、そうか。よく頑張ったな。後はこの幸太お兄ちゃんに任せてくれ」


 俺はアテナの敵を取る為に、神もとい、悪魔もとい、いじめっ子である者の後ろに立つ。


「待たせたな。決着、付けさせてもらうぜ」

「構わん」


 神は座っている椅子をクルリとこちらに回して、いたずらっぽく笑みを見せた。


「暇つぶしは出来たからの」

「これからは暇なんて言ってられないぜ。何故なら……一般人の本気を見せてやるからな!」


 俺の最終決戦が始まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る