第8話 下山

「おーい!お前らまだカレー食べてないのか?」

「はい、真祐達がまだ帰って来てないんです。」

「もしかして、なにかあったんじゃ…」

他の班が食べ終わって片付けをしているなか、十和達は野外の椅子に座り帰りを待っていた。


しばらくして教師は食事をしていない彼らが気になったのか声をかけたようだ。

十和達から事情を聞けば、深刻そうな表情をして他の先生へもすぐさま連絡をとる。

生徒がいなくなったと知れれば、学校は大問題だ。


「3人は私達が責任もって探しに行くから。」

「ねぇ!あれって結愛達じゃない?」

教師達が動き出そうとした時、遠くに人影が見え郁利は思わず声をあげた。


「神野ー!大丈夫か?」

「あら!雅さんどうされたの!?」

彼の発言に教師2人は真祐達の元へ向かい事情を尋ねる。

そしてきららを寝かせられるように、教員達が利用するバンガローの中へと案内した。


「実は雅が滑落して、担いで下山してたら遅くなった。」

「神野くんと姫海さんは怪我してない?」

「あぁ、俺とアイツは大丈夫…っていねぇ!」

真祐はバンガローへ入ると、一緒に来た十和とともにきららをベットに寝かせ事情を話す。

途中自分達は大丈夫だと教師へ伝える際、後ろを振り返るも結愛がいない。

彼は一瞬戸惑うが、すぐ彼女がどこにいるのかが把握できた。

何故かというと、外から泣き声が聞こえてきたからだ。


「怖かった…」

「よしよし、もう大丈夫だよ。」

結愛は皆の元へつくなり、幼なじみの郁利に泣きながら抱きついた。

きららが滑落したことがよほど辛かったのだろう。

彼はそんな彼女の頭を優しく撫でながら、落ち着かせるようになだめる。

いつもは可愛く振る舞っているが、結愛の前ではカッコいい幼なじみだ。


「先生がカレーを食べて休んでてって話してたから、皆で食べようか。」

「じゃあ私、カレー温めなおすから。皆は座って待っててね。」

「宮森さんありがと!」

バンガローから帰ってきた十和が教師から言われたことを皆に話すと、花凜が率先して鍋の元へ動き出す。

彼女の言葉に聞き、それぞれ席についたところでようやく真祐の班も食事にありつけるのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る