第4話:誤算

 俺と中田は話し合った結果、第一店舗の清純派の店舗を選んだ。中田はやはりギャルに行きたそうだったが俺が清純派を選んだ。しかし、中田もギャルに行きたかったのか、粘られたせいで時間が押してしまった。そのためタクシーで俺たちは店へ向かうことにした。


「タクシー代も高いからな。中田、お前今日いくらもってきた?」

「うん?あー10万ちょい位だな」

「10万?!超高級風俗の何分コース行くつもりだよ!」

「い、いや一応な」


 10万は持ってきすぎだろ。俺は2万位しか持って来なかったぞ。どうせすぐに果てるだろうし。


 タクシーが到着し、運転手に料金を払い、俺と中田は店の前に立った。中田はすぐに正面の入り口に向かったが俺が慌てて静止する。


「おまっ馬鹿、正面から普通いかないだろ」

「は?」

「普通、店横の路地に面してる入口から入るだろうが、こんな大通りに面してる所から入るとか恥ずかしさで死ぬわ!」


 俺が店舗横の路地を指さすと中田があたふたとしていた。....さっきの異常なギャルへの粘り、そして金銭感覚のおかしさ、そしてこれ、....コイツもしかして。


「さぁ!行くぞ!」


 中田は俺が何か言うのを察っしたのか路地にある入口へ速足で歩き出した。


「お前、風俗どころか....お前も...童貞なのか?」


 中田が足を止めた。そして肩が若干震えてる。


「聞かなかったことにしてくれ」


 俺がそう言うと中田はこちらを一切見ずに再び歩き出した。まぁあれだ、いろいろあるんだろう。人って見かけによらないしな。


 路地に入ると、何やら行列ができている。確かこの先に俺も行ったことがある隠れた名店のラーメン屋があったはずだ。その行列か?しかし、こんな夜更けに?


 嫌な予感がして、二人で店舗の入り口を探すと、直ぐに不安が的中していたのが分かった。行列の出所は風俗だった。


 よくよく考えてみれば予想できたはずだ。風俗に童貞が集まることくらい。この人数だと店に入る時間は閉店ギリギリか。仕方ない。


 行列は意外と早く消滅していった。

 いよいよ俺たちの番になり中に入ると、狭く薄暗い個室があり、ボーイが女の子の写真を俺たち二人に持ってきた。俺が目をつけていた女の子はその中にいたので直ぐに決定した。中田も気に入った嬢を見つけたようで、ボーイに伝えた。


 いよいよだ。ついに童貞を捨てる時が来たんだ。

 そう意気込んで待っているとボーイが急いで戻ってきた。


「お二方とも大変申し訳分けございません。」


「?」

「?」


「実は、お二方の情報を照会したところ...性行為を経験したことがないとのことでして...そうなりますと料金の方変わってきまして、こちらの料金になります」


 なんで風俗が個人情報を照会できんだよ。どんだけヤバイのこの国。と思ったのもつかの間、新しく出てきた料金表に書かれていた金額に言葉を失った。


「あのーこれ間違ってません?」


「いえ、間違っておりません」


 いやだって、最低10万から???どんだけ足元見てるんだよ。


「童貞税が導入され、風俗に多く童貞の方がご来店するようになられたので、嬢の供給が追い付かないのです。ほとんどの風俗が値上げしている状況にあります。」


 嘘だろ。俺は今日2万しか持ってきてないし、他の店ももう閉店する時間だ。そして今からATMに行ってもこの人数だ、もう一度入る時間はない....中田はいけるか。


「中田、俺は無理だが、お前は捨ててこい」

「いいのか」

「ああ、終わるまで待ってる」

「すまん」


 こうして俺は待機所に中田が終わるまで待つことになった。その間にも入口からは流れるように童貞と思われる男が入ってくる。

 皆、必死なんだな。そりゃ、税金とられた上に辱めを受けるリスクもあるんだもんな。当然ちゃ当然か。


 約30分が経ち、中田が帰ってきた。


「おつかれ、どうだった?」

「最高だった。めっちゃよかった。」

「そうか」

「ごめんな。待たせて」

「元は俺から誘ったやつだし、金持ってこなかった俺が悪いからいいよ」


 しかし、本当に残念だ。もっと金を持ってくるべきだった。こんなことを考えても後の祭りだ。切り替えよう。


「さて、帰るか」

「おう」
















  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る