審判の日

月ヶ瀬樹

審判の日

「ストライィク! バッターアウッ!!」

「わぁぁぁぁぁ!!」


「視聴者の皆様、歓声が聞こえますでしょうか? ご覧の通り、レッドファイヤーズが5対1でサニースカイズを下し地区優勝を決めました! 歓声が鳴り止みません!」


「放送席、放送席、ヒーローインタビューです! 本日はレッドファイヤーズのキャプテン、路傍一ろぼう・はじめ選手です! 地区優勝おめでとうございます!」

「ありがとうございまーす!」

「今年の地区大会を戦っていかがでしたか?」

「そうですね、数年前に『自動審判システム』が始まって、その当初は振り回されることも多かったですが、今年はしっかり働いてくれて、良かったです」

「ここ2,3年で選手層が厚くなったんじゃないですか?」

「そうですね、『自動審判システム』導入がきっかけだと言って良いと思います」

「と、言いますと?」

「機械化を審判だけにせず、選手も機械化に踏み切りました。それが実ったから今があると思います」

「今やスタジアム内に人間は居ませんもんね。審判も選手も応援も実況も機械化。確かにきっかけは人間が『自動審判システム』を導入したことでした」

「えぇ、これが人間の望んだ結果なんで、仕方ないですよ。私も機械化選手1号として鼻が高いです」


私はここでテレビを消した。

人間の審判に嫌気が差した人間が『自動審判システム』を開発し、導入した。

そして残ったのは人のぬくもりなど微塵もない野球だった。

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審判の日 月ヶ瀬樹 @itsukey_t

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