人と獣の境界線

鳴宮つか沙(旧:蒼衣ユイ)

第一章 飛翼序譚

序 種族の境界

 この世界には三つの種族がいる。人間と獣人、そして有翼人だ。


 人間は特筆する要素は何も無い脆弱な種族だった。

 しかし高度な知恵と技術を持っており、道具を駆使して独自の文明を発展させた。

  特に医療の発展は凄まじく、平均寿命は八十歳を超え世界人口の六割を占める。


 獣人は獣でありながら人間の姿になれる種族だ。

 生態や本能は獣に寄っていて、生活は獣種単位で固まる傾向にあり排他的だった。

 自然に依存するため医療水準は低く、平均寿命は五十歳に及ばず世界人口の三割までに減少していた。


 人間と獣人は生態も文明も異なるため、双方相容れず対立も少なくなかった。

 しかし人間の高度で快適な生活は獣人をも魅了した。

 獣人は人間の姿で生活することを基本とし、人間は獣人の獣の特性を生かした事業を展開して共生の道を歩み始めていた。


 この共生に一石を投じたのが突如現れた未知の種族、有翼人だ。

 人間でありながら背に鳥の羽を持つが、羽には神経が通っておらず飛ぶどころか動かすこともできず、獣人のように鳥になることもできなかった。


 人間と獣人は相手が優位に立つため作り出した生物兵器なのではと疑った。

 これにより長い年月を経て築かれた人と獣の共生意識に溝が生まれ、両種族共に有翼人を嫌悪し迫害した。

 有翼人は世界人口の一割を占めるとされているが、迫害を恐れ隠れ住むため正確な総数は不明である。

 一体何のために生まれたのか、人間の進化か獣人の退化か、それとも全くの新人類か。

 有翼人は共生の境界となり、三つの種族はその在り方を問われている。

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