専業主夫です

 俺の朝は、お弁当作りから始まる。

 愛する妻のために、栄養と愛情がたっぷりのお弁当を作るのだ。

 妻は、トマトが苦手なので赤い色どりを入れるのが少し難しい。どうしてもパプリカなどに頼らざるを得なくなる。

 だが、そんな悩みすら楽しい。

 妻が、午後からも仕事を頑張れるように、テンションが上がるようなお弁当。それが、コンセプトだ。

 生姜焼きに玉子焼き。ほうれん草の胡麻和え、人参とさつま芋のきんぴら。そして、白いご飯。

 なかなか今日もいい出来栄えじゃないか。

 そうしていると、ドアを開く音が聞こえる。

「おはよー」

「おう。おはよう」

 妻は、あくびをしながらコップに牛乳を注ぐ。そして、その流れで食パンをトースターに入れる。

 本当は、朝ご飯も俺が準備すればいいのだが、焼き立てのトーストを食べたいらしく、いつも自分で準備する。そのせいで、会社に遅刻しかけることもあるのだが、焼き立てトーストへのこだわりは捨てられないらしい。

 そんな所も愛おしいのだが。

 ご飯を食べて、歯磨きやらなんやらを済ませて、8時になる。

「行ってきます」

「ああ、気をつけてな」

 玄関で、妻を見送る。

 さて、普段なら洗濯を始めるのだが、今日は違う。

 近所のスーパーで、牛乳が特売なのだ! 急がなければ、売り切れてしまう!

 スーパーの開店は、9時。現在時刻は、8時30分。

 身支度を済ませて、家を出る。自転車に乗り、猛スピードで目的のスーパーへと向かう。

 のだが、途中で警察に呼び止められた。

「えーと、職業は?」

「専業主夫です」

「……えー?」

 怪しい目で見られる。

 筋肉隆々りゅうりゅうの185センチでひげもある。確かに怪しくみられるのかもしれない。

 でも、ピンク色のジャージに可愛い猫のエプロンを身につけて親しみやすい、妻にも太鼓判を押された格好にしているのに、どうして警察に声を掛けられる頻度ひんどが多いのだろうか?

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