萌黄

目ざとい目ざとい

線香花火せんこうはなび

いいことしたいな

きみのとなりで


いいな、いいな、あの子はいいな

きみとふたりっきりなんて

木陰こかげにかくれるわたしのからだ

ねずみ花火と死んだふり


なにしてるの、ねぇ、なにしてるの

花火と花火がチュウしてる

あー、薄紅色うすべにいろの灰色もどき

ひかりとひかりがチュウしてる

どんな味なの、ねぇ、どんな味なの


青色バケツにおぼれているのは

目立ちたがりのジュワジュワ花火

さっきまで

あんなにジュワジュワしてたのに

いまじゃあ

思い出ばかりにおぼれているのよ


ねぇ、赤猫のようながんばり屋さん

わたしの頭をどうにかこうにか

昼鳶ひるとんびを燃やして燃やして燃やしてあげて


ねずみ花火をゴックンしたら

メリーゴーランドな口当たり

舌がもたげてたちまちれてさ

結論けつろん十二指腸じゅうにしちょうが大笑いなの


ひたひた、ひたひたと

前をゆくゆく、ふたつの背中

右手と左手、チュウしてる

いいな、いいな、あの子はいいな

わたしだって、わたしだってさ

きみと目くばせがしたいの

きみの左手が欲しい

きみのクスクス笑いが

死ぬほど欲しいんだよ

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