第3話  20歳(私)と14歳(彼)の現在

「今日もお疲れさまでした楓さん」


「こちらこそ今日もありがとう真ちゃん」


 今日も私は抱き着きたくなる衝動とにやけそうになる表情を抑えて軽く微笑む程度の姉の仮面を被って彼に甘える。


「今日の大学はどうでした」


「うん、授業の内容が濃くて大変だったよ。けどそれより帰り際に昨日の人にまた声を掛けられて『今晩2人で飲みに行かない?』ってしつこく絡まれちゃって。けど断ってばかりも悪いし、偶にはああいう誘いに参加した方がいいのかな?」


「駄目ですよ。そういう誘い方をしてくる人は大抵ろくな人じゃありません。楓さんはそういう人にホイホイ付いていったらいけませんよ」


 彼の言葉が罪悪感と共に私の心に痛く突き刺さる


 私は真ちゃんが思っているほど純粋じゃ…ないよ


「そっか、真ちゃんがそう言うならそうする」


 私は彼に嘘を吐いた。昨日声を掛けられたのは本当だが今日は掛けられていない。彼に心配してほしくて、引き留めてほしくてこんな嘘を吐いてしまっている。本当に悪いお姉ちゃんになってしまったものだ。しかもそれだけでなく…


「………」


(反応ナシ…かな)


 彼の私に対する女としての評価を知りたくてわざわざありもしない事実を作って彼の反応探っている。


「ん?どうしたのこっちをジッと見たりして」


「ふふ、真ちゃんやっぱりかっこよくなったなあと思って。絶対学校とかで学年関係なくモテるでしょ」


「…別にそんなことないよ」


「嘘だ~裏で絶対ファンクラブとか出来てるよ」


「大袈裟だな」


 聞く度に怯えて、その都度安堵する。まだ彼に特定の異性への感情が芽生えていないことに。彼は純粋に私を思って色々してくれるのに私ときたら彼を好きになって以降は行動も言葉も打算に次ぐ打算。彼の言ってくれる純粋な私などもう何処にもいない。


 彼を好きになればなるほどに私は自分が嫌になる。だけど彼を誰が自分以外の女の子と付き合うのはもっと嫌だ。


 だがこの幸せも彼に彼女という特別が出来た時に否が応でも崩れ去るだろう。そしてその心配に拍車を掛けるのが彼の成長ぶりだ。小学生の頃はまだ低かった目線は見上げなけれないけないくらいに背が伸びて完全に私を追い越していた。


 意識するようなり彼が段々少年小学生から青年中学生に変わっていくに連れてどんどんカッコよくなり、今では同じ部屋にいるだけでドキドキする気持ちを悟られないように毎日毎日平常心を保つのが大変だ。


 今はいなくても遠くない将来必ず彼女ができるだろう。そう、私が何もしなければ確実その未来は訪れる。


 けれど私はこの恋が正しいのかどうかもわからない。


 彼と私の立ち位置が逆で私が中学生で彼が大学生であったなら友達にでも素直に相談できたと思う。振られた私が年上の彼に慰めてもらい、それがキッカケで彼を好きになったとするのなら何もおかしくはないからだ。


 けれど現実だとだうだろうか?


『失恋した高校生女子が同居の小学生男子に慰められて』

『女子大生になって中学生の彼への気持ちに気付き恋に落ちる』


 前文だけなら情けない高校生という笑い話程度済むのだが後半はどうだろうか?6歳という年齢差は一般的には大きな数字ではなく、10歳差以上の夫婦も最近ではそこまで珍しくはない。しかしそれは両者が20歳を超えた立派な社会人である場合だ。


 彼が20歳で私が26歳であったならそこまで迷わずん済んだと思う


 しかし実際は彼が中学生14歳で私が大学生20歳


 そして恋心を抱いているのは私の方


 果たしてこの立ち位置は世間の目に、相談した時友達の目にそして彼の目にどう映るのだろうか?可愛らしい恋愛モノとして映るのか?可笑しな組み合わせ程度に思われるのか?それとも普通に気持ち悪がられて引かれるのか?


 年齢だけでなく性別も逆転させてみた時、女子中学生に男子大学生が交際を申し込もうとしたりすると社会人(20)が未成年(14)を誑かしている様にしか映らず世間的には完全にアウトだろ。


 そして私の場合もこれに当てはまるのだろうか?恋愛経験の少なさも相まって何度考えても答えが出ない。


 だれにも言えないこの恋と私はこの先どう向き合っていけばいいのだろうか?


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

JDが中学生男子を好きになったら駄目ですか? mikazuki @mikazukikouya

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ