第三話 理解不能

門という物を皆知っているだろうか?というか、知ってない人はいるんだろうか?別に知らん人をバカにしてる訳じゃないが。


それは、内側と外側を隔てるものであり、敵から自分達の拠点を守ったりするものだが、まぁ身も蓋もなく言ってしまえば、大きな扉だ。


学校にも使われているし、日本のありゆるところに存在している。内側と外側を隔てるものは、門だけじゃない。


扉や、窓、柵など、何種類もある。

まぁそんなんがあるから、俺は門と扉の違いなんて、大きさだけだと思っていた。


だがそれも今日まで。


こんなものを見たら、門と扉を一緒になんて見れない。


そう、俺の前には、今門がそびえ立っている。紛れもない、門である。


まわりには、天使や悪魔、竜などが彫られており、ギリシャ神話などに出てきそうなものだった。

悔しいが、正直に言って圧巻だった。


「すげぇ」


だが、どれだけ門に見入っていても、現実逃避をしていても意味ない。


忘れてはいけない。


今、俺はのなかにいる。

部屋の高さは一般的に二メートルちょっとぐらいだろうそんな場所に、その門は顕現していた。



「え、いやどうすんの?振り返ってみれば門があるし、画面には前の言葉しか書いてねぇし。............ ねぇうんとかすんとか言ってよ。というか書いてよ、こちとら指示待ちなんですけど?」


どれもこれも、このパソコンで会話してくるアイツが原因だ。現実的に考えて、一瞬で門が、しかも家のなかに立つなんてあり得ない。こんなのファンタジーもんだ。

誰かいるなら返事してほしい。



〈呼びましたか?〉



「お前は返事せんくていい!て言うか、答えられるんだったらさっさと説明してくれ!」



〈............〉



「黙ったし。何なんだよ......まったく。」


帰ってきてからずっとこの調子だ。

たった一時間ぐらいの出来事なのに、俺は精神的にとても疲れていた。



〈ここからは、あなた次第です。〉



「............何だって?」


ここからは、ってどういうことだよ。なんかいじらなくちゃいけねぇの?無理だよ!そんな建築知識ねぇよ!


そんなことを考えていたそのとき、門から音がなる。


大音量で。


ギィィィィィィィィィィィ............


「あぁ!?うるせぇうるせぇ!ご近所迷惑になる!」



門が開いたのだ。

どんな原理かは知らないが、人の手じゃ一生かかっても開きそうにないぐらい頑丈そうな扉が、ゆっくり、ゆっくりと、開いていく。



「え、何どうやって開けてんの?それ。というか、何があるんだ?」


恐る恐るなかを見ようとする。

そこには..........


「はぁ?」


なにもなかった。否、ただひたすら奥まで闇が広がっていた。ただただなにもない、黒い空間のみ見ることができた。


「またかよ。勘弁してくれ。これ以上混乱を招くものを見せんな。マジで頭が..........追い付かなくなる。ってかどうして─」


だが、台詞を言い切る前にそれは始まった。

「ん?なんだ?なんか...........─」


ゴォォォォォォォォォ............


「─なんか、吸い込まれてね?」


門が、さしずめブラックホール彷彿とさせる吸引を始めた。実際ブラックホールがどんなんかしらないけど。


って、今はそんなどころの話じゃない!


「吸われるっ!?  くっ!」


咄嗟に机にしがみついた。


不思議なことに、ものだけはこの吸引を微動だにしなかった。吸われてるのって俺だけ?おーい物理の法則さん仕事をしろぉぉぉ!


「うぉぉぉ!どういうことだ!お前!なんか

吸われてんだけど、これもお前の仕業か?」



〈........................ 。〉



「黙んじゃねぇぇぇ!」


パソコンの画面に新しい文字が浮かぶことはない。


「くそっ!このままじゃ.........って!?」


なにか解決策は、と必死に考えようとしたとたん、しがみついていた机が消えた。


「えぇっ!?そんなのって、うぁぁぁぁぁ!?」


そして俺は、あまりにも腑抜けた声を上げながら門に吸われ、意識を落とした。





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ギィィィィィィィィィィィ   バタン



門が閉まり、部屋がもとに戻る。

そこには、電気が消えた何時もと変わらない彼の部屋の風景と、起動したままのパソコンがあった。













〈あなたは、あなた自身を探し求めなければいけません。〉


〈そう、あなたは何者なのか。過去に何があったのか。〉


〈なぜあなたがあそこに生まれ落ちたのか。〉


〈『断罪の戦争』の後に何が起こったのか。〉


〈知ってください。〉


〈そして、私たちを............ 〉





     ”救ってください”








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「........................いっててて。」


ぼやけた意識が全身の至るところから感じるピリピリとした痛みによって覚醒する。


目を擦り体を見てみると、服や体は切り傷やうちみだらけ。


............ 何があったんだ?


「確か、変な門に吸い込まれて..........そして、あれ?何があったんだっけ?」


吸い込まれたところまでは覚えている。

だがそのなかで何があったか覚えていない。


だけど、今はそんなことはどうでもいい。考えるべきことは他にある。


だからどうでも............

どうで、も.....................



.................................... 、うん。




「どこ、ここ?」







やっぱりここに来るまでにあったこと、少し思い出す必要がある気がする。







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