ラブコメの告白の瞬間ってテンション上がるよね?

電車がトンネルの中を通る。トンネルの中にひびき渡る電車の音に混じえて男の叫び声が混じっていた。と言うよりかは男の声は全て電車と風の音でかき消されていた。

「!!!!!!!(ああああああ!)」

男は仰向け状態で電車の屋根に必死にこびりつき、振り落とされて死なないように必死でしがみついた。

「えー?なにー?」

男の前ではツインテールの女の子が同じ体制でしがみついていた。だが彼女の声はかき消されなかった。

「!!!!!!!(ああああああああ!)」

「えー?「パンツ見れて嬉しい?」次言ったらあんたの顔面蹴って降りてもらうからね?」

女の子はスカートで男の前には当然パンツが目の前にあった。だが見る余裕もなく見れてはいないし、そんな事は一言も言ってはいない。男はただずっと叫び続けるだけだった。

「ちょっと待ってて!もう少しで着くと思うから!勘だけど!あと今から回想シーン入るからほんの少しだけ、いや数時間だけ待って!!少し前に戻るよ!」

―少し前―

ピピピピ、、、、ピピピピ、、、。目覚ましのなる音が部屋中にひびき渡る。彼、鬼目芥はゆっくりと体を起こしベッドから下りる。ゆっくりと一歩一歩床を歩く音が響きわたり、静かな家の中に足音を鳴らす。眠いながらもTwitterに「おはよう」と言葉をツイートし、朝ごはんを食べ始める。

「おはようございます。○月✕日。おはようテレビのお時間です」

「ではまず最新のニュースから。先日今週から各地で行方不明事件が発生しているとお伝えしました。また新たに行方不明が出ました。今回で5件目です。警察は今後も捜査の方を進めていくとのことです。では次のニュースです。下野動物園で新しい子がやってきました」

毎日ほぼ同じようなニュースを見る。大きな事件が起きたら毎日そのニュースをやる。朝ごはんを食べ終えたら顔を洗い、髪の毛をとかし、歯を磨く。身支度が出来たら彼は家を出る。

「いってきます」

芥は家を出てイヤホンを耳に指し、音楽を聴いた。音楽を聴きながらの通学は一日のモチベーションをあげるのにピッタリだった。芥は音楽でモチベーションを上げながら最寄りの駅まで向かった。駅に着くと芥の友達が待っていた。

「おっす」

「うっす。行こうぜ」

耳からイヤホンを外しポケットの中に手を突っ込み、イヤホンをポケットに突っ込む代わりにICカードを手に取った。

「ガチでさぁ、、、眠すぎるんだが」

「それな。まぁいつもの事じゃん」

彼らは電車が来るのを待ちながら朝の淡々とした会話を始めた。眠気と戦いながらも通学する日課はロングスリーパーな彼にはかなりの苦痛であった。

「そういやこの前言ってたやつみた?」

「どれだっけ?」

「ほらあの動画の」

「あー見た見た。いやー、あの類のやつめっちゃ好きだわ」

「でしょ?」

朝早くにする会話は眠気を含んでおり、とてもゆっくりと進んでいき思考が回りづらかった。ただ、そんな緩い会話が彼らにとっての日常であり、いつも通りの会話であった。電車に乗り込むと彼らはスマホを見始めた。

「これみてみて」

芥が面白そうな顔をし、友達にスマホの画面を見せた。

「え、なにこれ」

友人はクスッと笑った。

「分からないけれどこうゆう物作る人のまじ天才だと思うわ」

「それな」

電車の中なので先程と比べとても静かな声で話した。だが彼らの会話のテンションは先程よりかは上がっていた。乗り換えの駅に着いたら流れるように沢山の人が電車から降りた。彼らも例外ではなく流れるように電車をおりた。電車を乗り換え、終点まで向かった。その電車内は空いていたので座った途端寝てしまった。寝て起きたらそこは終点だった。歩きながらけのびをし眠気を完全にはらった。

「まじでたった2時間のためだけに朝早く起きるの嫌なんだが」

「あーね」

「正直めんどい」

彼らは乗り換え駅で電車を乗り換え、今度は満員電車の中でギュウギュウに押しつぶされながら大学の最寄り駅まで行った。途中彼らは疑われたくない等のため手を上に持ってきてはいたが、つり革や手すりからは少し遠い位置にいたので捕まろうにも掴まれなかった。なので度々バランスを崩していた。最寄りの駅に着くと一斉に電車から人が流れて行った。まるで大量に水が溜まった貯水タンクから噴出されるように流れて行った。押されるように流れたので2人とも少し不満がっていた。そこから2人はバスに乗り大学に向かった。バスに乗る前は小話程度にちょくちょく話してはいたがバスに乗ってからは特に何も話さなかった。

「んじゃ」

「ういっす」

バスから降りると2人は別の学科なため別々の教室に行った。別れた先でも芥は友達がいたので特に緊張とかはなく気軽に行った。入った教室では先に芥の友達が入っていたので芥はその友達の隣に座った。

「おっす」

「おはー」

教室に入り席に座ると芥は自分のノートパソコンを開いて授業の準備を始めた。準備が終わると芥は漫画アプリで漫画を読み始めた。授業が終わる。それは今日という日の序章が終わったということだ。毎日ほぼ同じことを繰り返す「短編」の序章が終わったことを知らせる合図だ。彼らは別の教室に行き、また授業の準備をした。友達との会話は楽しいがそれ以外は特に楽しくはない。

「なーここ分かるか?」

「ちょいまち」

先生に聞こえないような声で芥は隣に座っている友達に声をかけた。その友達もまだ終わってないとの事で分からなかった所は解消されなかった。

「はいはいどれどれ?」

「ここなんだけど」

「あーね」

椅子を近づけ、教えようと友達が芥のパソコンの画面を見た。ただ単に確認のためだったので間違ってる箇所はなかった。

「まぁこんなんでいいんじゃね?それで試してみ」

「おけーせんきゅっ」

試してみたら間違ってはいなかった。授業が終わりその場で課題を終わらすと彼らはさっさと教室を後にして5,6人で食堂に向かった。

「今回の課題ちょろ過ぎなかった?」

「いや今回のあれは楽勝すぎ」

「ただちょろすぎるの問題だけどね」

課題の簡単さを笑いながら歩き、本館を出た。本館を出ると中庭を通り食堂がある館まで歩いて行った。

「なんかあの先生って日本語理解できてるのかってぐらい通じてないよな」

「いやまじでそれな。こっちの話を聞いてるのか分からないぐらいだしほんと理解出来てるのかな?」

「いやーあれは理解出来てないと思うぜ。だってこの前俺が分からないところ聞いたら全く別のこと言ってきたんだぜ?頭おかしいだろ」

「いやガチで頭おかしくて草」

先生への不満を淡々と笑いながら言った。

「いやー俺はああゆう先生について行きたくはないな」

「いやまじでそれな」

芥が言ったことにそこにいた全員が共感した。これらのことを彼らは小さな声だが公の場で話した。

「そういや今期何見てる?」

「あー、、、何見てたっけな?」

友達が今期のアニメのことを聞くと芥はスマホを開いて画面を見せてきた。

「俺はこれかな」

「あーね。やべぇほとんど見てねぇ。てか最近アニメ見れてないんだよな」

友達は笑いながらアニメを見れてないことを流した。大学生になり通学時間などのことを考えると妥当だと言える。それは芥も同じで高校時代に比べ見る機会が半分に減った。それでも彼は少なからずだが数々のアニメを追っていた。

「知ってるのでも「恋した」かな?」

「あーね。これ俺原作持っててめっちゃ嬉しかったんよな。あともう少しで原作の髪シーンが来るはずだから今後も楽しみ」

そのまま彼らは学食を食べに食堂に着いた。

「何食べる?」

「俺いつも通り定食で」

「んじゃ俺これ」

「俺もそれにしよ」

各々選んだメニューの所に並び、買っていった。芥はいつも通りの日替わり定食を頼んだ。全員同じ席に座り静かに食べ始めた。

「お前それ少なくない?」

「ダイエットしてんだよこっちは」

「また変なダイエットとかしてるんじゃないよな?」

「あれはもうやめた」

友達の頼んだメニューが極端に少なくパンひとつという事に気がついた。そんな事を芥が聞くと皮肉を交えたような喋り方で返してきた。芥は彼が前に無理なダイエットをして貧血になった経験があるのでその事を黒歴史扱いをし、気遣いを混じえながら笑った。その後黙々と食べスマホを触り始めた。と言うよりかはTwitterを見始めた。

「なぁこれこれ」

友達がTwitterの画面を見せてきて芥含め全員クスリ笑いをし始めた。昼食が済、次の教室に向かった。次の講義はテストもなく、ただ課題のみの講義だったため聞かずにだらけていた。特にその日は眠かったので授業中は寝てた。体感時間15分がたった時講義は終わっていた。

「すまん寝てた、、、。課題見せてくれない?」

寝てた芥は眠そうな顔をしながら友達の課題を見始めた。それをお手本にして課題を終わらせた。というか丸写しをして課題の提出をした。(もちろん所々は変えている)

「せんきゅっ」

そんな課題(写し)を出し終えて帰る支度をして大学を後にした。大学を後にした彼の次の目的地はバイト先だ。電車に揺られ、眠くなりながらもバイト先のラストの時間帯に働きに行った。

「おはようございます」

そういい彼は仕事をし始めた。ちょうどその頃ピークだったので入ってからすぐに動き始めた。全員がキビキビ動いていてそれに負けず芥も動いた。

「牛コース、3名様入ります!」

そう言いながら芥はお客さんに出す出汁を作り、提供しに行った。バイト先でもほぼ同じことの繰り返しだったが彼は楽しくて、例えクレーム等が入っても気にせず出来た。

「お電話ありがとうございます。はい。今日の営業は23:00までとなっております。はい。ではお越しの方をお待ちしております」

電話の受話器を取りお客さんからの要望にも容易く答えた。そんな業務も終え、タイムシフトを切りあがっていた。

「はぁー、、、疲れた」

「おつかれー」

「お疲れ様です」

仕事を終えた先輩が気軽に話しかけてきた。そこで先輩たちと10分ぐらい雑談した彼はバイト先を後にした。彼はイヤホンを耳にして、暗い夜道を歩いて帰った。帰り道は大きな登り坂道があり、それはまるで1日の疲れが1歩歩く度にぶり返されるようだった。その疲れを彼は音楽で中和していた。

「、、、、!」

彼が坂を一歩一歩登っていたらどこからともなく叫び声が聞こえた。だが彼はイヤホンをしていたので当然だが聞こえなかった。だが次第に声が大きくなっていった。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

イヤホンのノイズか?そう思い彼はイヤホンを取り外した。だがそれでもどこからか聞こえる音が気になった。耳鳴りとはまた違うような音が耳の中に入っていった。

「うわああああ!どいて!!!」

芥は上を見上げた。女の子が空から降ってきた。と言うよりかは落ちてきた。そんなことはどうでもよく、芥は避ける暇もなく直撃した。

「うわあああああ!あうっ!あ、いた!うぅ、、、」

女の子は芥と直撃し、2人はそのまま下に転がり落ちていった。女の子は転がる時に跳ねるように転がっていき、微かに声を上げて転がっていった。

「いたた、、、。あ!ごめんね。私前を見てなくて、、、。って聞いてる?ねぇ?」

芥は転がる際にどこか頭を打ち、打ち所が悪く気絶をしていた。女の子は少し気まずそうな顔をして後ろめたい気持ちがあった。

「ええっと、、、どうしよう、、、」

さーて!あたしがどうしてここにいたか説明するからよーく聞いてね!。そ!の!前に!あたしは今有名なアニメ「恋がしたいですっ!」のサブヒロインの"兼井レイナ"でこのアニメの主人公"葵 夏澄"の大大大大親友!。そんなあたしがなんでこうなったかと言うと、ちょっと時を巻き戻そう。

―――――――――――――――――――――――

「あのなぁ!俺はお前の気持ちを理解できないしはっきり言ってもらわないと分からないんだ」

「あたしの気持ち、、、?」

阿久間裕二はレイナ少しキレ気味になりながらレイナの後ろに立っていた。レイナは泣きそうになるのをこらえて拳を握った。

「なら、、、、。これがあたしの気持ちだばか!」

レイナは泣きながら彼の制服のネクタイを引っ張り、顔を赤くしてそっと唇を彼の唇に添えた。裕二は何が何だかよくわからず困惑していた。

「カットカットカットカーッッット!」

「どうしたんです?監督」

いきなり監督がカットを入れてきた。レイナは涙をひっこめ、裕二は疲れながら監督に聞いた。

「いやーあんたはいいんだよゆうじくん。君の演技は素晴らしいよ!問題はあんただ巨乳女!」

「はぁ?あたし?」

監督は裕二にだけとてもいい顔をした。だがレイナの方を見ると顔を変えた。レイナも疲れたような表情をしていて毛先を弄っていると監督に名指しで呼ばれた。はぁ?ふざけんなチビが、、、。そう思いながら監督を睨み返した。

「ねぇ?あたしの演技の何が悪かったって言うの!」

「てめぇのが本物の恥じらいがねぇんだよ!」

監督はレイナの耳を引っ張り台本を見させた。

「いいか!?お前はここのシーンでシリーズ最大の恥ずかしさと最高にドキドキした胸の高鳴りに見舞われるんだよ!なのにお前のはただの照れじゃねぇか!」

「照れるシーンだろここは!あたしはここのシーンを何度も読み返して何度も練習してきたの!シリーズ最大の見せ場だってことを知っているから何度も何度も練習して向き合ってきた。それとも何?あたしが適当にやってるようにみえるって言うの!?」

レイナと監督が言い争っているのを周りは呆れながら放っておいていた。裕二も呆れており椅子に座りながら台本を読んでいた。

「ああみえるさ!これは俺のアニメだ!俺のだ!お前は俺に色々と脚本のことで口を出せる立場じゃねぇんだよこのビッチ!」

「は、はぁ!?誰がビッチだって!ふざけないで!もういい!あたしは楽屋に戻るから!」

「ああ戻れ!そして帰ってくんな!」

監督はキレながら台本を床に叩きつけてスタジオの出口を指さした。監督は怒りに任せながら言ったが半分本心のようなものだった。更にレイナもキレながら出口に向かい、出口のドアを力強く閉めた。

「、、、、っ」

楽屋でレイナはただ1人泣いていた。そんな時に楽屋の扉をノックする音が聞こえた。レイナは涙を拭い顔を上げた。

「レイナ、、、?大丈夫?」

夏澄だった。

「夏澄、、、!あ"た"し"、、、、」

夏澄が部屋に入ってきた時にレイナの涙が小粒から大粒の涙に変わっていった。大粒の涙を流しながらレイナは夏澄に飛びついた。レイナ濁点がつくような声を出しながら夏澄の服で涙を拭いた。そんなレイナをみて初めは戸惑ったが優しく頭を撫でた。

「あたしのせいで撮影が遅れてみんなの足枷になってる。初めて沢山セリフがあるオファーを貰って、台本覚えたり役作りをしたりとかして、、、あたし色々頑張ったんだよ!それでもあたしがあれをすれば"違う"。これをすれば"違う"。もうほんと、、、なにがいいのかよく分からない」

2人はソファに座りながら話した。レイナは両手で顔を覆いながら今の気持ちを壁越しでも聞こえるぐらい大きな声で言った。

「そうね。うん。レイナの気持ち私もわかるわ」

「あたしだってこの性格何とかしなくちゃなって思ってるんの!だけど全然治らなくてどうすればいいのか分からない!」

レイナの泣きじゃくった声が部屋中に響いた。そんなレイナの隣で夏澄は片手でレイナの背中を擦りながら片手でティッシュを渡した。夏澄の優しく撫でる手はまるで神の手のようにレイナの気持ちを和らげた。

「裕二君に相談はしたの?彼氏なんでしょ?」

「あいつ、、、裕二はあたしより仕事だから」

レイナと裕二は裏で付き合っており、同棲2年目のカップルだ。だがお互いの仕事や関係のマンネリ化が進み最近はあまり話が出来ておらずいた。今回のことも1度は話そうかと思ってはいたが気まづくて何度も失敗をしていた。

「わたしは子供の頃体もろくに動かせずにいて自分が厄介な存在だと思っていたの。でもそこをとある女の子が助けてくれた。「誰かと笑い合いたいのならあたしと笑いあお!」って。だからねレイナ!」

そう言うと夏澄はレイナの肩を掴み無理やり自分の方に向かせた。夏澄の真剣な表情を見てレイナの涙は流れなくなった。

「わたしはレイナの大大大大親友だしこれからもずっと仲良くしたいと思っているし、わたしはずっとレイナの味方だよ。だから今後もしも何かあったら連絡して」

「うん、、わかった、、、、」

レイナの肩を持ち、夏澄は真っ直ぐレイナの目を見た。彼女の目には一点の曇りもなければ偽りもなかった。

「それにおっと、それに技術進歩で合わなくたって話せる便利な世の中だけれど顔を合わせることも大事だしね」

「ねぇ、誰もノーポイッ!の話なんてしてないじゃん」

夏澄はソファから立ち上がりドアの方へと向かった。ドアのところで靴を履き、ドアノブに手をかけた一瞬滑ったがすぐに立て直して冗談混じりに軽く彼女に連絡するように言うと言うとレイナは笑いながら軽くツッコミを返した。

「ふふっ。確かにね。それじゃあわたしの方から監督に言っておくから、早くスタジオに戻ってきてね」

笑顔になったレイナをみて夏澄は優しく微笑んだ。そうすると夏澄はドアを開け、レイナがスタジオに戻るように促しながら楽屋を後にした。去り際に夏澄が手を振っていたのでレイナは手を振り返すと少しばかり悩んだ。あたしだって頑張りたい。頑張って勝ち取ったチャンスを逃したら後で一生後悔するかもしれない。と

「よしっ!」

そう意気込むように立ち上がると両手で頬を思いっきり叩いた。頬を赤くしながら意気込むと鏡と向き合い、自分と向き合い睨み始めた。彼女の鋭い目が彼女自身を見ている。

「ねぇレイナ。あんたさっきからNGばかり出してみんなの迷惑ばかり掛けてること分かってるの?本当にウザイんだけど?演技もザルだしブスだし巨乳だし。あ、これは褒め言葉か、、、。それと、、、あっ!可愛こぶってて本当にキモイんだよ!」

鏡の中の自分を指をさしながらアニメのいじめっ子キャラをイメージしながら罵倒し続けた。彼女は鏡を使って自分を罵倒することによって自分を他人からの目線で自分を語った。つまり彼女は自分と自分を向き合ったのと同時に自分の演技とも向き合った。彼女はゆっくりと落ち着きながら鏡に向かって覚悟の瞳を向けた。

「さて、、いっくぞー!」

そう言いながら鏡に背を向けた。そのとき鏡が紫色の液体のようになり、禍々しい渦を作り出した。部屋はまるで台風のような強風が吹き荒れ、雷が鳴り響きレイナを驚かせた。レイナは大きな音にびっくりして飛び跳ねた。

「ひぃぃ〜!ななななななに!?」

レイナは怖がりながら鏡の方を向いた。すると鏡の中から無数の透明のような腕が伸びてきた。その腕はまるで関節がない触手のような動きをしながらレイナを目掛けて飛びかかってきた。

「うわぁぁ!な、何よあんた!魔女教の怠惰担当なの!?そ、それとも二觭人なの!?いやそんなことはどうだっていい!誰かー!助けてー!ちょっと胸触らないで」

透明な腕はレイナの体を縛るように巻き付き、動けないように空中に浮かせた。するとソファや机、荷物など楽屋に置いてあった全ての物が浮かび上がり、レイナやドレッサーを含め全てが最高のBGMと風に乗って部屋の中を凄まじい勢いで回り始めた。レイナは必死に抵抗するも体が固定され、固まったように動かなかった。大声で助けを求めるもすぐさま手で口を閉じられてしまった。レイナは抑えられてもキレながら抵抗した。何を言っているのかがさっぱりだ。彼女が聞き取れない叫び声で叫んでいると透明な腕は徐々にレイナを鏡の中に引きずり込もうとしていた。

「いたっ!いたい!いたいって!」

抵抗し続けて怒らせたのか腕はレイナを何度も床に叩きつけた。すると腕は引っ張るようにゆっくりゆっくりと鏡の中に引きづりこもうとした。レイナは両腕に巻き付かれた腕を取り払いドアノブに手を伸ばした。だがドアノブの金属部分がとても滑りやすくなっており、掴んだはいいもののすぐにすり抜けてしまった。

「お願いやめて!あたしまだ死にたくないの!やりたい事だってまだた沢山あるしこの"アニメ生"ここで終わらせるのは嫌なの!!」

空中を舞いながら両手を組みお願いをするように鏡に向かって言った。だが文字通り聞く耳は持ってないのでそのままズルズルと引きづりこまれた。レイナはドレッサーにしがみつくように抵抗しても腕に力が入らず、ゆっくりと腕が伸ばされていく。最終的にドレッサーから腕が離れ、鏡の縁を持ちながら抵抗した。

「お願い!助け!たーすーけーてー!!!!うわああああ!!!」

レイナは涙目を浮かべながら助けを呼ぼうとし叫んだが案の定誰にもその声は届かず鏡の中に吸い込まれた。レイナが吸い込まれた途端、鏡は激しい光と音を出した。部屋が光に包まれると飛んでいた物達は元あった位置に綺麗に戻されていた。

「レイナ?夏澄から言われたんだが、、、。あーレイナ?」

裕二がレイナの楽屋に着いた頃には楽屋はもぬけの殻だった。なぜならレイナは今超空間を飛んでいたからだ。レイナは四方八方色んな方向に飛ばされては、止まり、また飛ばされていた。

「はぁはぁはぁ、、、何ここ、、、魔女の結界の中?はぁはぁ、、うわぁあぁぁああああ!」

宇宙空間、水中、よく分からない空間などをレイナは駆け巡った。色々な空間を巡りに巡って今現在に至る。

「そう!そしてあたしはこの男を担いでここまで来て疲労と吐き気が一気に来てもうダメ、、、、」

レイナは芥の部屋に居て芥をベッドに寝かせていた。ベッドに芥を運び終えたら今までの疲れと吐き気が同時に襲いかかり、レイナは壁にもたれかかった。そしてそんな死にそうな顔をしているレイナは頭の中で重要な事が浮かび上がった。

「あー、、、やばい、、、。どうやって帰ったらいいの?」

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アニメな女とオタクな男 TAIGA @ranmitake

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