第6話 二つのスキルについて

 まとめるとスキルで個人の優劣が決まってしまう事も多いこの世界において、俺は『無能』の烙印をスキルの儀によって押されたのだという事を実のお父様から分かりやすく教えてもらったという事である。


 正直お父様もまだ三歳である俺にはいくらでも騙そうと思えば騙せる状況であっただろう。


 俺がお父様の立場であるのならば、間違いなく良心の呵責にやられて適当にはぐらかしてしまうのが目に浮かぶ。


 しかしこれは子供の為ではなく、ただ単に自分が目の前の嫌な事から逃げ出したいだけであり、根本的な部分は何も解決していないため年月を重ねて、いつかその嘘が通用しない時が必ず来る。


 結局は問題の先送りでしかなく、先送りにすればすればするほど子供の心は深く傷ついてしまうだろう。


 しかし俺の父上は逃げる事をせず真っ正面から、まだ三歳である俺を一人の人間として対応してくれたのである。


 逃げる事は簡単だし、三歳の子供を騙す事など造作もないだろう。


 本当に、こんな俺には勿体無いくらいできた父親だ。


 だからこそ俺もお父様を一人の男性として対応してみようと思える事ができた。


 なので俺はお父様には、俺の取得したスキル二つについて全てを話そうと決心する。


 きっとお父様ならば子供の戯言だと馬鹿にしないという信頼もしている。


 その根拠なんて『俺がそう思ったから』で十分だろう。


 そして俺は一つ深呼吸をするとお父様であるエドワード・ウェストガフに向かって、この世界に来て初めて子供の仮面を外して真剣な表情で見つめ、口を開く。


「お父様、その事についてお話があります」

「………………お前は、いや、お前が誰であろうと俺と妻の子供のローレンスだな。 すまん。 それで、話とは何だ?」

「スキル【奴隷使役】とスキル【回復】の有能性についてでございます」


 そして俺はこの二つのスキルについて話し始めた。


 流石にスキルの入れ替えについてはこの世界の根幹を覆しかねないので話さないのだが、いつか万が一必要な時が来たその時には話そうと思う。


 とりあえず、まずはこのスキル【奴隷使役】なのだが、使役した奴隷の忠誠度がマックスになると、その奴隷が覚えているスキルを使えるという能力なのである。


 はっきり言ってこの能力だけ聞けばぶっ壊れなのだが基本的にゲームの世界ではそこまで使えるスキルを持った奴隷は多くない上に自分の選んだジョブにあったスキルをスキル変更によって厳選するのも面倒であるという事。


 簡単にいうと奴隷の個体値ガチャの後に奴隷のスキルガチャ(プレイヤーと違ってストーリーなどでスキルを取得できないため特定の課金アイテムでランダム交換をする)をしなければならない。


 そしてゲームでは・・・・・使役できる奴隷はシステム上二人までと決まっているのだ。


 早い話が膨大な時間と金があれば奴隷使役の能力が実質そこそこ強いスキル二つになるよねという程度のスキルであるのだが、この世界には奴隷制限に縛りは無い。


 当たり前である。 

 

 現実の世界ではゲームと違い奴隷を大勢使役しても遅延も落ちる事もなければゲームバランスなどによる規制も当然ない。

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