第18話 安堵の再会



黒い森の中に突然大きな洋館が現れた。

ヴァンパイアでも出てきそうな家だった。

周囲はぐるりと塀で囲まれ、門は固く閉ざされている。

異様な空気に体が強張る。


「うわっ!!!」


急に下降したかと思えば、地面にドサっと落とされた。


「あー、疲れた。」


「腕、取れそうだったわね。」


二人が話しながら歩みを進めて行くと、ギーッと音を立てながら門が自動ドアのように開いた。


「早く立て、置いて行くぞ。」


正直入りたくなかった。

何が起こるかわかったもんじゃない。

ただ、この森に一人で置いていかれるほうが何倍も怖かった。

僕は渋々立ち上がり、手やズボンに着いた砂を払う。

そのまま一歩ずつ歩みを進め、門の中へと入った。




広すぎる玄関ホールに、左右に分かれているが、結局2階で繋がっている階段。

剣を持った甲冑。

高そうな大きな花瓶に入ったたくさんの花。

誰だかもわからない肖像画。

まるでお城の中のようだ


僕は2階の部屋へと案内され、扉を開けるとそこには制服姿の詩織がソファーに座っていた。


「詩織!無事でよかった、、、。」


「蒼!!??どうして!!??」


探していた幼馴染と再会した時、僕は涙が出そうだった。

詩織が無事でだったこと、知らない土地で見知った顔に会えて緊張の糸が切れた。


「詩織のお母さんから連絡貰って、詩織の部屋に行ったんだ。

ここは、、、どこ?」


頭に浮かんだ言葉が次々と口から飛び出した。


「ここはお前たちの住む世界とは別の世界。

私たち魔法使いの住む世界だよ。」


背後からの声に振り向くと、美女が立っていた。

上下の黒い革の服に赤いハイヒールが映える。

黒いショートカットに赤い口紅が映える。

アニメや漫画の世界から飛び出してきたみたいに美しい人だった。


「ドロシー様!

迷い人を連れて来ました!」


少年と少女は美女に深々と頭を下げた。


「ご苦労様。

部屋にクッキーを置いておいたよ、二人で食べておいで。」


「「ありがとうございます!!!」」


二人はバタバタと走って廊下へ飛び出し、部屋には僕と詩織、ドロシーと呼ばれる美女の三人だけになった。


「まずはお前のそのずぶ濡れの服を何とかしようかね。」


ドロシーが僕を指差し、ゆっくりと指を上動かす。

服から球のような形になった水がどんどん出てくる。

まるで宇宙空間で水を撒いた時のようだ。


「すごい、、、。」


球は僕の頭の上で大きな一つの塊になって、一瞬で煙になって消えた。

蒸発したみたいに。


「さあ、お前も詩織の横にお座り。」


服や体が乾いたのを感じた僕は、促されるまま詩織の隣に腰掛けた。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る