闇なくして光はない

 読んで字の通り、闇なくして光はない。鬱なくして希望はない。つまりストーリーの話するよってことです。


 昼間も変わらず星は輝いているのに見えないのと同じく、人間は平時、大事なものに気付くのが難しい難儀な性質をしている。大事なことは痛い目に遭わないと自覚しない。よって気付くためには闇が必要になるわけです。光より闇の方が印象に残りやすいだろうし。

 鬱や絶望に直面してこそ人間。乗り越えても乗り越えられなくてもいい。君の人生の主人公は君なんだから、乗り越えられなくたっていい、君にとっての正解を見せてくれ。


 話が暗闇になればなるほど、希望や平穏が、夜空の一等星や暗中の灯明になっていって、美しく尊いものになるんですよね。たとえそれが消えてもいい。すべてが上手くいく、常にハッピーエンドが待っているなんて誰にも保証できないもの。そこに光が灯り蘇るとアツい。滾る。うおおおーっ!!ってなる。


 仮に、今スポットライトが当たっている主人公が諦めたところで、また別の誰かが歩き出す。じゃあ主人公なんて誰だって良いんじゃないかって? 馬鹿野郎張り倒すぞボケ。君の歩いてきた道は、この世でたった一つの道、たった一つ君という存在が見つけた正解だ。それを見出すことが主人公たる意義だ。たとえ諦めて終わったからって、過程が、君の考えたことが無かったことにはならないんだよ。

 それに、終わりは始まり。諦めたとしても、もう一度歩き出すことはできる。止まない雨に降られたら雨宿りして一休み。行けそうならゆっくり歩き出せ。君の人生はいつだって、何度でも、君が歩き出せば始まる。


 とまあ、ストーリーには闇がないと、答えを見つけるには至れない(もちろんそうじゃないストーリーだってあるかと)。第一、闇なくしては、目指す光や元ある光すら見えないままなわけです。美しいものは醜いものがあってこそ比較され、初めて真価を見出されますからね。こういう対比も好き。


 闇に直面した時、キャラがどんな本性を隠し持っているかが暴かれる。何を思い、どんな答えを導き出すかが分かる。そういう風に迷いながら、あるいは迷いなく一直線に生きていく君たちが大好き。そんなキャラクターを書いてくれる作者様たちも大好き。出会わせてくれてありがとうございます。あなた達の輝きを見て、何かを感じ抱いた人間がいたこと、どうか覚えておいてくれると嬉しいです。私も忘れないので。


 こういう光に気付くために、やっぱり闇は必要なんですよね。

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