一章(16)

 「お兄ちゃん?」

 朝日と共に目覚めたエルは、誰もいない廊下を歩き、リュトの部屋へと向かった。扉を開けてもリュトは姿を見せず、エルは寝床に近づく。

 しかし、そこにリュトの姿は無い。無造作に乱れた掛布団に膨らみは無く、兄の温もりも残ってはいなかった。

 「お兄ちゃん……」

 冷えたベットを見つめるエルの瞳には、次第に涙が溜まっていく。

 「お嬢さん、どうして泣いているのかな?」

 誰もいない部屋で、エル以外の誰かの声が聞こえた。

 エルはその声に疑うことなく、素直に答える。

 「お兄ちゃんがいなくなっちゃったの」

 「お兄ちゃんって、赤い髪の青年のことかな」

 「うん。お兄ちゃんの髪は赤くてとっても綺麗なの。でも、ここにいるみんなは、そう思ってないみたい」

 「赤は皇帝の色。この世で最も魔王に愛された色だからね。みんなが怖がるのも無理はないさ」

 エルは言葉の意味こそ分からなかったが、大好きな兄のことを悪く言われたような気がして、しょんぼりと俯いた。

 「お嬢さんの髪は綺麗な白だね」

 姿なき声は、エルを元気付けるために言葉を重ねる。

 「えへへ、ありがとう。昔は嫌われてたのに、今はみんなが褒めてくれるの」

 エルは顔を上げ、嬉しそうに笑った。

 「ふふっ。城は神に愛された色だからね。誰もが敬意を払う尊い色なんだ。誰もが大切にしてくれる。お嬢さんのように愛らしければ尚更ね」

 「ほんとうに?」

 「本当さ。私もお嬢さんを大切に思っているからね」

 「あなたは、だれ?」

 「私は***。お嬢さんを見守り、力を与える者だよ。お嬢さんのお名前を教えてくれるかな?」

 「エルの名前は、エル!」

 「エルか。いい名前だね」

 エルと姿なき声は互いに見つめ合う。エルに声の主の姿は見えないが、何となく気配を感じ取れるようになっていた。


 「ねえ、***。お兄ちゃんはどこにいるのかな?」

 エルは姿なき声が、何となく兄の居場所を知っているような気がして、尋ねてみる。

 「彼は砂漠で異形と戦っているようだね」

 「いぎょうって、黒くて大きなお化け?お兄ちゃんが食べられちゃうよ!」

 エルは慌てて姿なき声に詰め寄った。

 「彼なら大丈夫さ。強力な魔法が使えるからね。普通の異形なら問題ないさ」

 「じゃあ、すぐに帰って来るんだね」

 「うーん……。返ってくるのはもう少し後になるかもしれない。彼はいま、仲間を探して砂漠の奥へと進んでいるんだ。仲間が見つかるまでは返ってこないんじゃないかな」

 「え!?そんなの寂しいよ!エル、また一人でお留守番なの……」

 「一人じゃないよ」

 涙ぐむエルを暖かな温もりがそっと包む。

 「え?」

 「これからは私がいつも傍にいるから。エルはもう一人じゃない」

 「ほんとに?エルは一人じゃない?」

 「ああ。私がずっと傍にいる」

 姿なき声が、先ほどよりもずっと側に感じられる。兄に抱きしめてもらった時と同じような、暖かな気持ちと安心感が、エルの寂しさと悲しさを満たしていく。気づけばもうエルの涙は止まっていた。

 「さあ、今日は何をしようか。夜が明けたばかりで、今日はこれからだ。エルが疲れるまで、沢山遊ぼうか」

 徐々に鮮明になっていく声の姿を見上げ、エルは元気いっぱいに部屋を飛び出した。

 「うん!でも、遊びに行く前に朝ご飯を食べないといけないんだよ。ちゃんとご飯を食べないと大きくなれないって、お兄ちゃんが言ってたの」

 「それなら、ご飯を食べてから行こう」

 二人は並びたって、食堂へと向かった。


 エルが食堂に到着すると、仕込みを終えたルーシャが朝食をとっている所だった。

 「あら、おはようエルちゃん。早起きね」

 「おはよう、ルーシャさん」

 ルーシャはエルに席を進めると、キッチンからエルの分の朝食を持って来た。

 内容は昨日と同じで、パンとスープだ。スープの具材が昨日と少し違っていたが、パンは同じものだった。

 エルはルーシャにお礼を言ってから食べ始める。

 エルには少し硬いパンだが、小さく千切ってスープにつければ、柔らかくなって食べやすくなった。昨日スファラに教えてもらった食べ方だ。

 「早起きしたいい子はお代わりしてもいいのよ。いっぱい食べてね」

 「うん!でも、もうお腹いっぱい」

 最後にミルクを飲み干したところで、エルはふと思い出した。

 ――***はお腹空いてないのかな?

 「***はご飯食べないの?」

 エルは声に出して尋ねた。

 「私は食べないよ。なんせ実態が無いからね。でも味覚はエルと共有できるようだ。先ほどのパンやスープの味が分かったよ。洞調律がもっと上がれば、感覚や感情も共有できるようになるだろうね。それと、私に話しかける時は頭の中で思うだけでいいよ。私の声はエルにしか聞こえていないから、声に出すと不信がられてしまうから」

 「エルちゃん、***ってどちら様かしら?」

 「ほらね」

 ――わかった。

 「えっとね、友達なの」

 「そうなの。どこにいるのかしら?」

 「どこにもいないよ。だから、ご飯はいらないの」

 「そう……」

 ルーシャは自身の中で納得した。***は故郷にいた時の友人で、もうこの世にはいないのだということを。

 「今日も広場に行くのかしら」

 「うん!今日は縄跳びをする約束してるんだ」

 「怪我しないように気お付けてね。あ、そうだ。せっかくだからお昼はお外で食べるのがいいわ。お弁当を作るから、持っていってね」

 「わーい!ありがとう、ルーシャさん」

 

 エルは外へ出て、その足で広場へと向かった。日が出たばかりの広場には、まだ誰も来ていいなかった。静かな広場は、昨日の楽しい時間とは打って変わって、すこし寂しく感じる。なんとなく進む足は、自然と中央に立つ大木、神聖樹の前で止まった。

 「ここへ来たのはもう何年ぶりだろうか」

 ***が、懐かしそうに言った。

 「***は、ここに来たことがあるの?」

 「もう何年も前にね。私にとってここは、特別な思い出のある場所なんだ。聖女の物語を知っているかい」

 「ううん、知らない」

 「そうだったね。どこから話そうか」

 ***はゆっくりと目を閉じた。

 「この木は、私と古い友人が三百年に植えたものなんだ」

 「元気がないね。エル、この木に神力を注いでくれないだろうか」

 「神力?」

 「元気のようなものだよ」

 「わかった!元気になーれ!!」

 エルの体から白い光が溢れ、神聖樹へと流れていく。手の触れた太い幹から、枝の先、葉の一枚一枚まで、白い光に包まれ輝いている。

 「さすが、私の選んだ子だ」

 この声はエルには届かなかった。

 急激に体が重たくなり、たまらず瞼を閉じる。エルはそのまま眠ってしまった。

 眠るエルを***はふわりと浮かせ、ゆっくりと精霊樹の傍に寝かせた。

 「この感覚、三百年ぶりか。あの時は時が足りず成し得なかったことの続きが、ようやくできそうだ」

 神はエルの隣に腰掛け、子守唄を唄う。三百年前に友人が歌っていた歌だ。


 それからしばらくして、広場に子供たちがやって来た。エルたちは一日中広場で遊んだ。

 日が暮れる頃、子供たちは迎えに来た親に手を引かれ家へと返って行く。けれど、エルを向かいに来る者はいない。

 たった一人取り残されたエルは、広場の入り口を悲し気に見つめる。

 しかし、そこに望む人はいない。

 「お兄ちゃん……」

 どうして兄は迎えに来ないのだろうか。

 今日は朝からずっと会っていない。お城で暮らしていた頃は、朝と晩に必ず会いに来てくれたのに。

 こんなに長い時間兄に会えなかったことは初めてだった。どんな時も優しく抱きしめてくれた兄の温もりが段々と冷め、消えていくのが怖い。

 ここに来て一週間になるが、エルには沢山の友達ができた。村の大人もみんな優しくしてくれる。

 城では優しいのは兄だけだったから、とても嬉しかった。

 でも、どんなに他の人が良くしてくれたとしても、兄を越える者はいない。エルのは幸せは、兄無しでは成り立たないのだ。

 ――もしも、これからずっと兄に会えないのだとしたら、あんなわがままは言わなかった。薄暗いあの城で永遠に兄と暮らしていければそれでよかった。

 あんなちっぽけな望みなんて、お兄ちゃんと比べたらどうでもいいものなんだから。お兄ちゃんさえいれば、エルは幸せなんだから。


 「エルちゃん!」

 俯いた顔を上げ、声のした方に顔を向ける。広場の入り口から、ルーシャが慌てた様子で駆けて来きた。

 「エルちゃん、探したわよ」

 エルの前にしゃがみ、心配そうに顔を覗き込むルーシャと視線が合い、エルは自分が責められている様な気がした。

 「こんな時間まで帰ってこないから、お姉さん心配しちゃったわ」

 気のせいではない。ルーシャは少なからず怒っている。いつもより声が低くて、笑顔も曇っているから絶対にそうだ。

 でも、どうして自分ばかりが怒られなければならないのだろうか。

 エルはただ昨日みたいに、お兄ちゃんが迎えに来るのを待っていただけなのに。

 お兄ちゃんが自分を置いてどこかに行ってしまうなんて、あるはずない。お兄ちゃんはエルのことが大好きなんだから。

 だったら、どうしてお兄ちゃんはいないの?お兄ちゃんはエルのことを嫌いになってしまったの?エルが悪い子だから?

 ちゃんとお兄ちゃんを待ってたのに。ずっとお兄ちゃんを待ってたのに。

 エルは要らない子なの?

 「だって……、お兄ちゃんが迎えに来ないんだもん……」

 涙があふれて止まらなかった。

 ――寂しくても、怖くても、痛くても、ずっと泣かないでいられたのに。お兄ちゃんに泣かないで偉いねって、褒められたのに。泣いたらダメなのに……。

 ぽろぽろと涙が頬を伝い地に落ちる。声を殺し必死に涙を堪えようとするが、溢れる滴が止まる気配はない。

 小さな体を震わせ、必死に悲しみに耐えるエルを、ルーシャが優しく抱きしめた。

 「ごめんなさい。今日は私がお迎えに行くって、リュトさんと約束していたのに。来るのが遅くなってしまったわね」

 抱きしめられた肩越しに、ルーシャの優しい声がエルの耳へと届く。

 「お兄ちゃんと、約束……?」

 震える声で、エルは何とか言葉を紡いだ。

 「ええ。リュトさんは留守の間、私にエルちゃんをよろしくって言っていたわ。それなのに私ったら、こんなにエルちゃんを待たせてしまうなんて。リュトさんに怒られてしまうわね」

 兄が怒ったらどんなに怖いか。優しく抱きしめてくれているルーシャも、お城の人のようになってしまうのだろうか。

 そう思うと、以前はなかった悲しい気持ちが込み上げてきた。

 「大丈夫だよ。エルがお兄ちゃんに怒らないでってお願いするね」

 「こんなにもダメなお姉さんを許してくれるの?」

 「うん!ルーシャは、ダメなんかじゃないもん。優しくて、綺麗で、温かい人だから」

 「ありがとう、エルちゃん」

 「お家に帰りましょう」

 「うん!」


 夕食はカウンター席で、ルーシャと話しながら食べた。食堂で料理を作るルーシャとは並んで食べることはできないが、キッチンにいるルーシャと話をすることはできる。

 食事に来た人たちも小さなエルを気遣って、ルーシャが忙しい時は話し相手になってあげた。

 食事が終わりエルはお風呂に入った。小さい兄弟がいる団員が、ルーシャに変わってお風呂の世話をしてくれた。

 昨日はスファラと一緒に入ったけれど、それ以前はお兄ちゃんと一緒に入っていたことを話すと、団員は目を丸くして驚いた。

 それから、エルちゃんは立派なレディなんだから、お兄ちゃんとの入浴は駄目です、と怒られてしまった。

 お風呂から上がって部屋に入ると、一人になったせいか急に寂しさが込み上げてきた。布団に入ってもなかなか寝付けず、何度も寝がえりを打っていると、部屋の扉がノックされ静かに開けられた。

 足音を当てないようにゆっくりと入室する人物に、エルは声をかける。

 「ルーシャさん?」

 「あら、起こしちゃったかしら」

 「ううん。起きてたの」

 「眠れないの?」

 「うん」

 「じゃあ、お姉さんとお話ししましょうか」

 ルーシャはエルの隣に並んで横になった。顔の前に垂れるエルの邪魔そうな前髪を優しい手つきで、そっと後ろへ流した。

 「どんなお話がいいかしら」

 「お兄ちゃんはどこへ行ったの?」

 「リュトさんは、スファラと一緒に悪い怪物を退治しに行ったのよ」

 「いつ帰って来るの?」

 「エルちゃんがいい子にしていたらすぐに帰って来るわ」

 「今日もエル、いい子にしてたよ」

 「そうね。いい子だったわよ」

 ルーシャが優しくエルの頭を撫でる。エルは気持ちよさそうに目を閉じた。

 「どうしてお兄ちゃんは帰ってこないの?」

 「悪い怪物がいっぱいいて、退治するのが大変だからかしら。お姉さんと一緒に、早くみんなが返ってくるようにお祈りしましょう」

 「お祈りしたら、お兄ちゃん早く帰ってくる?」

 「ええ。きっと」

 「じゃあ、エルお祈りする」

 エルは目を閉じて、両手を胸の前で合わせ祈った。

 ――大好きなお兄ちゃんが早く帰って来ますように。ずっと一緒に居られますように。


 昨日はそのまま眠っていたらしい。目を覚ました時は、日が高く昇っていた。昨日は早起きで、今日は大寝坊だ。重たい瞼を擦って、急ぎベットから体を起こせば、ベット横の椅子に座っている***と目が合った。

 「おはよう、エル。今日はお寝坊さんだね」

 「うん……」

 昨日、お兄ちゃんが早く帰ってくるように、いい子でいようと誓ったのに。こんな時間まで寝てしまうなんて、これではお兄ちゃんが帰って来るのが遅れてしまう。

 そう思うと元気が出ない。寝坊を指摘されてますます落ち込んだエルを見かねて、***はエルの手を引き部屋から連れ出す。

 エルはすれ違う人たちと挨拶を交わしながら、一階の食堂で朝食を兼ねた昼食をとる。

 昼食はルーシャが仕事でいないためバイキング形式だが、小さいエルには少し難しく、周りの大人がよそってくれたものをテーブルに運んでくれた。

 エルはお礼をいい、よそられたものを、残さす平らげる。

 空いた皿をキッチンに運ぶと、皿洗い番の団員が褒めてくれた。

 いいことをしたからお兄ちゃんが早く帰って来るかもしれないと、エルは少し晴れやかな気持ちになった。

 「エル、広場に行こうよ」

 エルは首を横に振った。

 「今日は皆のお手伝いをするの。いい子にしてたらお兄ちゃんが早く帰ってくるんだって」

 「子供は元気に遊ぶのがいい子なんだよ」

 「エルは早く大人になって、お兄ちゃんのお手伝いができるようになりたいの」

 「それならなおさら広場に行った方がいいよ」

 「なんで?」

 「行ってみてからのお楽しみさ」

 エルは***に促されるがまま、広場に向かった。


 広場へと来たエルは驚いた。昨日まで辛うじて生きているようだった木が、青々とした葉をたくさん生やし、その下に広い木陰を作っていたのだから。

 広場には子供たちだけでなく、多くの大人の姿もあった。

 「木が元気になってる」

 「昨日エルが元気をあげたからだね」

 エルは昨日、神聖樹に元気になるおまじないをしたことを思い出した。

 「ほんとに元気になっちゃった」

 「エルには皆を幸せにする力があるんだよ。だからこの木も元気になったのさ」

 自分にそんな力があるなんて、今まで思いもよらなかった。お城にいた時、兄以外の人たちはいつもエルを疎んでいたから。

 でも、もしそれが本当なら、この力でお兄ちゃんを幸せにできるかもしれない。

 そのことに嬉しくなって、エルは神聖樹のもとへ駆け出した。

 昨日まで乾いていた太い幹は、たっぷりの水を吸ったように潤っている。数枚だった葉も、まだ高い日を遮り、広場の半分にも及ぶ影をつくる程に茂っていた。

 風に揺れ、重なりあった葉たちがさわさわと音をたてた。葉の隙間からキラキラと零れる木漏れ日が、乾いたこの町にそぐわない涼やかさを与えていた。

 「綺麗……」

 生まれて初めてみる力強い緑に、エルは見入っていた。

 自分には皆を幸せにする力があるんだ。だって枯れそうだった木が、こんなにも元気になったんだもん。お兄ちゃんだってきっと幸せにしてあげられる。いつもお兄ちゃんに守られてばかりだったけど、これからはエルがお兄ちゃんを守ってあげるんだ。

 「ねえ、***。お兄ちゃんに早く帰ってきて欲しい時は、どうしたらいいの?」

 「そうだね。今、彼はピンチなんだ」

 「え!?」

 「強い異形が彼が帰って来るのを邪魔しているね」

 「異形って怪物のことだよね?どうしよう……」

 「彼一人では少し大変そうだから、エルが手伝ってあげるのはどうかな?」

 「どうやって?」

 ***は、自分の胸元を指さし言った。

 「簡単さ。そのペンダントに願いを込めるだけ。お兄ちゃんを助けてってね」

 見ても***の指さすところにペンダントは無い。エルはハッとして服の上から自身の胸元に手を当てた。スファラが出かける時にお守りにとエルに渡してくれたペンダントがそこにあった。

 「わかった。やってみる」

 エルは胸元からペンダントを取り出し、両手に握り願いを込めた。

 ――どうか、お兄ちゃんを助けてください、神様。


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