第十七話 『デートではないといったな、あれは嘘だ④』
現在時刻、12時20分
高瀬さんがDQNにナンパされかけるなんてこともあったが、それ以降はひとまず目立ったトラブルは起こらなかった。まあといってもちょっと服が売っているところを冷やかしに行っていたら、ちょうど昼飯時になり高瀬さんの提案で近くにあるフードコートでまずは腹ごしらえをする事になった、のだが。
俺は失念していた。
こういう場所、この時間帯でのフードコートという魔境に自分が一度もきたことが無いことに…
高瀬さんに連れられてフードコートに到着した俺は、
(人多すぎじゃね…?)
視界には所狭しと並べてある大量のテーブルにはほとんど空きがなく、さらに現在進行形で他の人がどんどん来ている。このショッピングモールに来た時点で人の多さには驚いていたのだがまず外出しないというかする機会がないというか、そんな自分はまず人混みに出る機会はなく、この狭いフードコートという空間の人口密度に驚愕していた。
そして、
「あの、高瀬さん?こう言う所って、どういうふうにご飯を頼むんですか?」
違うんだよ!俺はこういう場所にはきた事ないからさぁ…知らないことは知らないってちゃんと言わないと高瀬さんにも迷惑をかけちゃうから!
「ああ、葉山さんはあまりこういう場所には馴染みがありませんからね。かといってそんな複雑なわけではありませんよ。自分が食べたいお店に並んで注文して、あとは料理が完成するまで待っていれば呼ばれるので取りに行けば終了です」
「は、はあ」
「百聞は一見にしかず、ですね。では並んでみましょうか」
「え、ちょっとま」
有無を言わされぬまま連れていかれ…
「もう、ダメぽ…」
「意外と葉山さん余裕あります?」
「いや、ないです…」
高瀬さんに連れていかれたのは有名なチェーン店であるマク◯ナルドで、おそらく現代の高校生では絶滅危惧種であろうマ◯ク処女である俺は一体どんな物があるのか全く知らず、店員さんに「おすすめって何ですか?」と聞いてしまうほど焦っていた。
結局は高瀬さんにひるマックセットと呼ばれるものを頼んでもらったのだが。
「…高瀬さんってこういうのも食べるんですね」
「葉山さん、女子だってハンバーガーは食べるんですよ?」
いやなんというか。高瀬さんって上品なイメージがあって、こういうジャンク系のものは食べないんじゃないかと勝手にイメージしてしまっていたのだ。けど、それは間違いだったようだ。まあ普通に考えて高瀬さんもあくまでみんなと変わらない1人の女子なんだよな。
「……ふふ」
「どうしたんですか?」
「いえ、なんでも。これを食べたら服を買いに行きましょうか」
「は、はい」
なんというかはっきり言うと、高瀬さんと向かい合って食べるハンバーガーの味は、よく分からなかった。
今現在俺は窮地に立たされている。
「葉山さんはこれとこれ、どっちがいいと思いますか?」
「ええっと、その、ええぇ…?」
そう悪魔の選択だ。
最初は普通に俺の服を選んでくれていた。それこそ俺の好みに合わせた派手な色じゃない落ち着いた色合いの服を、上手く組み合わせたコーデをしてくれて値段も一万円を超えず、流石高瀬さんだと感心したのだが。
そこからは高瀬さんのターンだった。
当然高瀬さんもオシャレに気を抜かず自らを磨き続ける女子であるから、自身の服装もこだわるであろうことは理解していた。しかしまさかどっちがいいなどという、自分で服を選んだことのないセンスゼロの俺に聞いてはいけない質問をしてくるとは思えないでしょうが!
右の方は高瀬さんの清楚なイメージにぴったりなシックな色合いの淡い青のワンピース、もう片方の左の方は清楚なイメージとは逆の黒や白の色を使用したいわゆるボーイッシュな感じのコーデ。
ぶっちゃけ言おう。どっちの高瀬さんも見てええええ!!
絶対似合うじゃんこんなの!
いや落ち着け俺。ここでどっちもなんて言ったらそこでゲームオーバーだ。
あくまでどっちかに絞らなきゃあならない。
どっちだ、どっちなんだーーー!!
よしもうヤケクソだ。俺の趣味で答えさせてもらおう!
高瀬さんには申し訳無いと思うけど、俺に選ばせるのが悪いんだああ!
「み、右のワンピースの方が、いいと思います…」
「右ですか…分かりました。ではこちらを買いますね」
「は、はい…」
え、いいの?完全におれの趣味だったんだけど。
「葉山さんは清楚っぽいのが好み、ですか」
「一通り周り終わりましたし、そろそろ葉山さんの家に向かいますか」
「つ、ついにですか…」
現在時刻は5時30分。
そろそろ父さんも帰ってくる時間だし、ついに高瀬さんが家に来るのか。
母さんもいるし、俺の誕生日は一体どうなるんだろうか…わからねえ
「大輔くんのご家族…しっかりとご挨拶しないと!」
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