第22話 守護者リリーチェを、揉む! ねちょねちょの後編!

 白く泡立った粘液が、俺の右手をべっとりと濡らしている。

 俺はその手で、リリーチェの下腹部を触り、存分に撫で回してまさぐった。


「ひゃっ、……ぁ。んンッ!」


 それにしっかり反応し、リリーチェが激しく声を漏らす。

 下腹部には心臓に次ぐ血気の発生点である丹田がある。そこを重点的に撫で回す。

 そうすることで、潤滑剤を通じて俺の血気がリリーチェに伝達されていく。


「ふ、ぅ……。はぁ、ぁ……」


 少しずつ、少しずつ、無反応だった彼女が反応を見せ始めている。

 これをもっと促進すべく、俺は引き続き粘液にまみれた手でその矮躯を揉み続けた。


 それにしても、リリーチェのこの体躯はどういうワケだろうか。

 見た目、十代前半の未成熟な肢体は、俺が知るリリーチェのものではなかった。


 俺の記憶の中のリリーチェは、もっと背が高かったし、スタイルもよかった。

 だが今は完全な幼児体型で、撫で回している腹もツルンとしている。

 これは不老化の影響か、それとも彼女の魂を蝕んでいる呪いの効果の一端なのか。


「……いや、関係ないな。やることは変わらんし」


 そんな当たり前のことを呟いて、俺は今度は足のマッサージに取りかかった。

 スラリと長かったその足も、今は細く短くなっている。


 まずは右足から。

 俺は、自分の手をよく揉んで潤滑剤を泡立てさせ、太ももの付け根を両側から掴んだ。


「ひぐっ、ぅ……」


 リリーチェが弱々しく反応する。

 構うことなく、彼女の白い太ももの上に掴んだ両手をにゅるにゅる滑らせていく。


 一度に強く揉むのではなく、弱い力で幾度も太ももを擦り続ける。

 速度は、時々遅く、時々早く。リリーチェの状態を見て、都度調整していく。


「ぅぁ、ふ、ぁ、は……、ッ、は、ぁ……ッ」


 右足を揉みしごき、擦り上げているうち、リリーチェの呼吸が鮮明になってきた。

 まだ弱いながらもしっかり、はっきりと彼女は息を浅く乱す。

 そして、ずっと閉ざされていた彼女のまぶたが、うっすら開いた気がした。


「リリーチェ?」

「……ォ、……ン、様?」

「気がついたか、リリーチェ? わかるか? コージンだ。コージン・キサラギだ!」


 思わず、マッサージの手を止めて、強く呼びかけてしまった。

 するとリリーチェは、目に涙をためて、口元を綻ばせる。


「……これは、夢? 夢でございましょうか? ああ、コージン様」


 彼女の震える右手を、俺はしっかりと両手で握る。


「夢じゃねぇよ。俺はここにいるぞ、リリーチェ」

「コージン様……」


 顔を近づけて言うと、リリーチェはにっこりと微笑んで、


「何故でしょうか、コージン様のお手が、とてもぬるぬるしているような……」

「あ、ごめん。ちょっとローション嗜んでたんだわ」


 ついでにいうとぬるぬるしてるのは右手だけじゃない。おまえの全身もだ。

 もうね、全身隈なくぬるぬるのヌッチャヌチャのネッチョネチョよ。


「わたくし、全身がスース―しているような……」

「うん、そうね。今ちょっと、俺が揉んでる真っ最中だからね」

「揉み……?」


 ロクに首をかしげることもできそうにないリリーチェに、俺は軽く事情を説明する。

 すると、彼女は「まぁ」と軽く驚きながら、俺に向かってうなずいた。


「そう、だったのですね。わたくしったら、コージン様に要らぬご苦労をおかけして」

「そういうのいいから、マジで。それよりまだ全然揉めてないから、ね?」


 こうして会話ができるようになったが、リリーチェの状態は未だ危うい。

 いつ、また容体が悪化するかもわからない。彼女を蝕む呪いは、それほどに強い。


「これから、俺はおまえを揉む。いいな、リリーチェ?」

「はい、コージン様。わたくしの身を、あなたにお委ね致します。ですから……」


 その頬をほんのり朱に染めて、リリーチェは笑みを深める。


「どうか、わたくしを揉んでくださいませ。コージン様」

「ああ、死にたくなくなるほど気持ちよくしてやるよ、リリーチェ」


 そして俺は、泡まみれの両手で彼女の左足を付け根から膝へと擦り上げていく。


「ん、ふっ、ぁ、ああぁッ!」


 迸る快感に、リリーチェがのどの奥から声を絞り出した。



  ◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 俺はリリーチェを揉み続ける。

 太ももから膝へ、膝裏もしっかり揉んで、さらにふくらはぎ、くるぶし、足。

 足裏の腱は見逃しやすい箇所だ。そこからまた足の裏と、足の指。


 特に、足の指は手と同じく感度が高い場所だ。しっかり揉んで『熱』を伝える。

 足の指の隙間に自分の手の指を入れて、指の腹を前後させる。

 潤滑剤にまみれていい具合にふやけた指は、擦れても痛みを生じさせない。


「んゥッ、ぁん、く、くすぐッ……、ぁぁん!」


 色のある声を漏らし、リリーチェが細い肢体をくねらせ、よじった。

 興奮の度合いが増しているのか、呼吸の乱れも顕著になってきているようだ。


 俺は指の腹で、彼女の足の指の隙間をさらにしつこく擦り続ける。

 ヌチュ、クチュとかすかな水音が俺の耳にまで届く。


 リリーチェの手足は、じんわり火照り始めていた。

 これまでのマッサージで、俺の血気が彼女の肉体を刺激し『熱』を高めつつある。


 こうやってリリーチェの生命力を励起させることで、呪いへの抵抗力も強まっていく。

 薄皮を一枚ずつ剥がしていくかのように、徐々に呪いの影響力を削いでいく。


 そのために、次は末端から体の中心へと戻る。

 揉むのは、腰回り。足の付け根から股間、下腹部、脇腹の辺りを重点的に。尻もだ。


「悪いな、リリーチェ。触らせてもらうぞ」

「は、はぃ……」


 さすがに恥ずかしいのか、リリーチェは俺の方を見ようとしなかった。

 俺は内心幾度も謝りながら、両手で腰の両側を掴んで、足と同じく擦り上げる。


「ふゥ、ぅ、んッ、はぁ、んん!」


 リリーチェの体が、ビクンと軽く跳ねた。

 漏れる吐息は熱く濡れて、呼吸の乱れ方も不規則になっている。


 潤滑剤を使ってのマッサージは、普段のそれよりも肌が敏感になりやすい。

 そこを、俺の手が力を加えながら行き来して、じっくりと俺の『熱』を伝えていく。


「ァあ、ッ、こ、コージン、様、ァ……、ぁ。あッ」

「気持ちいいかい、リリーチェ」


「ゎ、わたくし、こん、な……、こんな、は、はしたなぃ……、んんッ。ぁン!」

「大丈夫だよ。別にはしたないなんてこたぁねぇさ」


 リリーチェの尻をじっくりまさぐり、撫で回し、ついでに『疲れ』の方も取っておく。

 ずっと寝てたからだろうが、それなりに『疲れ』も溜まってんなぁ、こいつ。


 尻を揉み終えて、次は脇腹から腋の方へと上がっていく。

 ただ擦り上げるのではなく、常に五指を動かして細かく揉みほぐしていく。


 潤滑剤のぬめりもあって、指先が非常によく滑る。

 リリーチェからしたら俺の指が全身を這い回ってるワケだが、不快ではなかろう。

 きっと。……きっと。


 粘液が泡立つくらいには五指を動かし、腋の辺りをむにむにと揉む。

 ここで、リリーチェがひときわ大きく反応を示した。


「ひゃあッ、だ、だめですッ! だめ、そんな、ぁ、ああぁッ、くぅ、んんッ!」


 ……なるほど、ここが一番弱い箇所らしい。


 内心に「ごめんて」と謝り、俺は最後に最大の『熱』の発生点を揉むことにする。

 つまりは心臓周り。――リリーチェの乳房だ。


「……ぁ、……はぁ、は、ぁ」


 仰向けの状態で、リリーチェが大きく呼吸を繰り返している。

 俺は、彼女の脇から一度両手を放そうとする。

 吸いつく感触があり、それから手が離れる。潤滑剤がヌチャと音を立て、糸を引いた。


 一度拳を握り、潤滑剤を生成し直して、俺はリリーチェの胸に触れる。

 ぬめる肌の上で軽く手を滑らせると、それだけで彼女はこれまでになく声をあげた。


「はァん! んぅ、……ッ、ぁ、ああッ、ッ!」


 リリーチェを蝕む呪いの中枢がここにある、だから、決して手は抜けない。

 俺は、しっかり力を込めて、念入りに彼女の乳房を掴み、撫でていく。


「ふゥっ、ッ、ぁ、あ! ……ひ、ぁ。ひゃあ、ァン! ンッ!」


 全身が若返っているため、リリーチェの乳房もまた膨らみは小さい。

 だが、ここまでのマッサージで十分に敏感になっているらしく、喘ぎ声は大きかった。


 未成熟ではあれど、しかし膨らみは皆無ではなく、手にはささやかな柔らかさ。

 俺はしっかり立った乳首周りも指先でなぞるように刺激しつつ、丁寧に揉んでいく。


「あァあッ、コ、ォジン、様……、コージン様、ァ! もっと、もっとしてくださいませ! ァ、わたくしの、心を、孤独を、ォ、あなたの手で、融かしてェ、ぇ……!」


 ああ、そうか……。

 そういえば、実はおまえ、結構寂しがり屋だったっけ。


「そうだな。ずっと一人にして、悪かったよ。リリーチェ」


 俺が告げると、すっかり紅潮したリリーチェの瞳から、涙が溢れる。

 そして、彼女は俺の首に腕を回し、まっすぐに見つめてきた。


「寂しかった……、ずっと一人で封印を守って、ゎ、わたくし……、ァあン!」

「大丈夫だ、俺がついてる。これからは、俺がそばにいるからな」


 俺は右手でリリーチェの頬を撫で、再び乳房を揉み始める。

 喘ぎ声はさらに高まって、彼女は身を引きつらせ、その揺れる瞳に俺が映り込む。


「コージン様、コージン様ァ……、もっとわたくし、ぉ、熱くしてくださいませ。わたくしを、もっと、もっと熱く、は、激しくしてくだ……、ンッ、ああ、ァ、ひぁっ!」

「任せろ。もっと熱くしてやる。おまえの頭が真っ白になるまで」


 赤みが差した小柄な体に改めて潤滑剤を塗りたくり、乳房に指を滑らせる。


「あっ、あん、ッ! ふ、ァん! あ、ああッ、くァあああッ! ァ……、あ!」


 震える肢体に、終わらない喘ぎ声。むせかえるような汗の匂い。

 全身を粘液にまみれさせ、リリーチェは零れる涙を拭うこともしないまま、


「コージン、さまァ、ぁ、ぁ……、ぅれし、ぃ……ッ」


 極限まで高まった命の『熱』が呪いを壊すと同時、そう呟いて意識を手放した。

 俺が見る彼女の寝顔は、とても安らかだった。

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