第14話 救世主〜もう一人の私〜

「暴力ってさーー、犯罪じゃね?」



相手の手を掴み、そう言う人影。



「…蒼…介…」



「女の子に手を挙げる男ってさ…ろくな奴じゃないんだよね〜?」



「…優…人…君……」



「その拳で彼女、殴ってみぃ。俺達が黙っておかんで?」


「…勇…真…君…」



「後で彼氏に冷やしてもらえ!」と、蒼介。


「そうやな」と、勇真君。


「その前に可愛い顔が台無しだよね〜」と、優人君。


「えっ?そっちかよ!」と、蒼介。


「確かに間違うてへんけど……」と、勇真君。





こんな時でも変わらない、のんびりとした会話。




「お前ら…どうでも良い会話は後にしろよ…」



微かに微笑みを浮かべながら言う南波さん。





「こいつらっ!!馬鹿にしてんのかっ!?」

「ふざけてんじゃねーぞ!」




別の奴等が3人に襲いかかる。


3人は、すぐに戦闘態勢のスイッチに切り換え闘う。




「野郎っ!」




ナイフを出してきた。




「出たよ!」


「素手に自信のない人が必ず出すぶっそうな物がね〜」


「ナイフって…こんな時に使うのとちゃうねんけど」




「ゴチャゴチャうるせーーっ!!纏めてぶっ殺す!!」



「へえ〜、纏めてね〜」

「誰から一番に殺(や)るん?」

「3人一気に串刺しは、そのナイフじゃ無理じゃね?」



「じゃあ、ジャンケンで負けた奴から天国に召されとく?せやけどタチの悪い奴等やし、案外ナイフが刀並みに伸びるんちゃうか?」


「それは凄い特注ナイフだね〜。この際、先に死にたい人からどうぞ〜」


「誰も死にたくねーしっ!」




「マジムカつく!!お前ら死ねーーっ!」







――――そして――――





相手が―――――





一番最初に向かった相手は――――







――――優人君だ――――






「俺から〜〜?」



余裕の笑みを浮かべながら、スッと交わすと同時に相手に足を引っ掛けた。


相手は転倒し、押さえつけられる。




「………っ!」



「相手が悪いわ〜」

「そうそう」



「チクショーォォォォっ!」






そして――――




「きゃあっ!」




私をとらえる人影。


リーダー的な存在と思われる。


さっき私を押さえつけ、みんなに指示をしていた人だ。



「希美っ!」

「希美ちゃん!」


「君達の事は調査ミスだったなぁーー?そして…ここにいる女もねぇーー」




ボスと思われる人が私を睨む。


ドクン

蛇に睨まれるような感じで恐怖さが増す。



《コイツ…ヤバイ…》



「ここまで手下がやられるとは…」




グイッと私を更に掴み、お腹を殴られた。




「…っ…!」



体が崩れ落ちる。



私は気が遠くなり、気を失いそうになる瞬間、私は起き上がった。




「…希美…?」

「希美…ちゃん?」

「…何か…様子…おかしないか?」




「…………」



「…超痛いんだけど!?」



ドカッ

相手を蹴っとばす。




「…っ…!」



相手が休む暇なく相手に立ち向かう。



「…な、何ぃっ!?」



相手の胸倉を掴み、引き上げると同時に相手の首を締め付ける勢いで、ぐっと力を入れる。




「暴力で女を黙らせる男って最低ーー!あんたみたいな奴等がいるから世の中の人間が犯罪者になるんじゃん!」



「………………」



「どんだけの犯罪犯して、どんだけの女泣かせた?」



「………………」



「どんだけ他人苦しめればいいわけ?」



 「………………」



「今までの罪を全て打ち明けて南波さんの…南波了の人生を返してやりなよ!つーか返せっ!!」




「………………」




そして、警察官か駆け付け、そこにいた全員が事情徴収されたのは言うまでもなく――――――



私達は、すぐに解放されたものの南波さんはすぐにとは、いかなかった。


無理もない。


南波さんは脱獄しているのだから――――




警察署の前に待機している私達。




「希美ちゃん」

「希美」

「…みんな帰って良いよ」

「女の子一人おいて帰るわけには行かないよ〜」

「そうだぞ」




―――その時だ――――




「何してんだ?お前ら」

「南波さん!」



3人は南波さんに駆け寄る中、私は少し離れた所からみんなを見つめる。



「釈放されたんですか?」と、蒼介。

 

「まだだ。ただ、俺をハメた奴が捕まったんだ。色々と聞かれるだろう?相手は裏社会の人間だからな…取り敢えず、1日だけ待ってもらうように話をつけてきた。1日経ったら必ずここに戻って来ますという条件付きで頭を下げてきた。どうしてもやっておきたい事があるからってな」



「………………」



「希美」と、南波さん。




私は名前を呼ばれたものの傍に行きたくても行けなかった。


さっきの自分の状況と関係を持ったかもしれないと、まだハッキリしていない自分の不甲斐なさに――――


自ら南波さんの方から歩み寄る。



「どうした?」



私は下にうつ向く。



「何か気になる事があるなら後で聞く」




頭をポンとする。




ドキン


胸が高鳴る私。



自分の心は正直だ。


自分の色々な部分を見られた挙げ句、心は嫌でも反応してしまう。



好きという想いに――――



そして、南波さんは私を抱き寄せると耳元で―――




「お前は、俺ん所に今から来い!お前が断っても強制だぞ!?」


「強制…?」


「ああ、強制だ」




「………………」



「お前らはどうするんだ?」



「お邪魔しちゃ悪いんで帰りまーーす」

「ここからは誰ん家が近いんだ?」

「蒼介ん家なんちゃうん?」

「俺ん家!?」




3人は会話をしながら移動する。



「気を付けて帰れよーー!」

「はーーい」



「俺達も帰るぞ」

「…うん…」

「それよりも…お腹大丈夫か?」

「…うん…」

「そっか…しかし、お前、本当強いんだな?」

「…引いたでしょう?女じゃないみたいだよね?」




微かに微笑む。



「驚いただけだ。でも、お前が無事なら、それで良い」

「…優しいんだね?普通なら引くよ。ていうか距離…」




グイッと抱き寄せられ、オデコ同士をくっつけた。




ドキン…



「距離をおいているのは、お前の方じゃないのか?気になる事があるんだったら話せ!全て聞く!」



「………………」



私は勇気を出して話した。




「簡単な事だ」

「えっ…?」




グイッと人目の付かない所に引き摺り込むようにすると壁に押し付けた。



「南波…」



キスで唇を塞ぎ深いキスをしながら、私の太ももに大きい手が伸びて来る。



グッと下着の上から手が入った。


「…っ…」


私は一瞬の痛みに、唇が離れる。


私の両頬に触れ、何度も何度もキスをされ、時折、深いキスをされた。


まるで痛みを和らいでくれるように………




「痛かったろ?」



私は頷く。



「まだ…大丈夫な証拠だ」





確かに初めては痛いと聞いた事がある


あの痛み……それじゃ私はまだ……?




再びキスをされ何度も角度を変え深いキスをされる



「大分、慣れてきたみたいだな」



微かに微笑む彼の優しい笑顔に胸が大きく跳ねる。






―――― 私 ―――――




本当に



好きなんだ



「希美、俺だけの女になれ!」



ドキン



「今日、お前を抱く!」




ドキン

今までにない胸の高鳴り。




私―――――



南波さんに



抱かれる――――!?





そう考えた途端、私は一気に体が熱くなるのと同時に顔が真っ赤になったのが分かった。




「良いよな?」



私は頷くのが精一杯だった。



手を繋ぎ私達は移動する。


南波さんのアジトだ。


一気に胸が早鐘のように早くなる。




「おいっ!」

「わわ…な、何?」

「緊張しすぎ!つーか…伝わるから!」




「………………」




「こっちまで緊張するだろ!」

「ご、ごめん…」



「……………」



「すぐに手は出さねーよ!安心しろ!一先ず落ち着きな」




優しい笑顔を見せ頭を撫でてくれた。


私は南波さんに抱きつき、お互いが、引き寄せられるようにキスをする。


私達は少しの間話をする。




「ねえ、いつから?」

「えっ?」


「私の何処が良いの?性格悪いし、強いし、女じゃないみたいじゃん?」


「そこが良かったんだと思う」

「えっ?」



「男みたいにサバサバしている感じで、女になったり、コロコロ変わるお前に目が離せなかった。おもしれー女だなーって…。目障りなくらい、俺に付き纏うお前。それに…危なかしい奴だって…」





色々な事が、私の頭の中を駆け巡る。




私は……いつから…?



優しくて


時折見せる優しい笑顔に


自分の心に


変化が見え隠れしていた





――――気付けば――――





     私は




好きになっていた―――――






「希美、改めて言う。俺は、お前が好きだ!」




ドキン




「私も…好きだよ…気付けば……」




キスをされ、見つめ合う私達。




フワリと体が宙に浮く。



ドキッ





《わわ…こ、これって…いわゆる、お姫様抱っこってやつ?》



「お、重くない?」


「別に」




《ていうか…これは…このまま…》




そのままベッドに下ろされ、私の上に股がった。



微かな重みを感じる中、私の胸が早鐘のように早くなる。



上から見下される、この状態が妙に恥ずかしいのと照れてしまう。




「………………」



私の両手を押さえると、キスをした。



つい力が入ってしまう。




「怖いか?」


分かったのか心配そうに、優しい眼差しで見つめる。




「…大丈夫…」

「…捨てられた仔猫みてーー」

「な、何それ!」

「仔犬でも良いけどな」



クスクス笑う南波さん。




「ひ、酷い!私、人間なんだけど!?」


「モノの例えだよ。そう、ムキになんなよ。変な動物に例えられるよりマシだろ?」


「それは…っ!」



キスで唇を塞ぎ、制服が脱がされる。


緊張からか胸のドキドキが治まらない。




「………………」



「お前は俺の女だからな!」

「…うん…」

「蒼介達とつるむなとは言わないが……妬く」

「えっ?」




ちょっとイジケた顔で言う南波さん。




《やだ…可愛いかも…》



「クス…」



つい笑ってしまった。




「なんで笑うんだよ」

「可愛いなぁ〜と思って」


「か、可愛いって……男に可愛いはおかしいだろう?」


「そうだとしても、母性本能くすぐられる様な顔して言うから」


「…お前にしか見せれない部分だってあるんだよ…」



ドキン


「…南波さん…」





キスをされ、ゆっくりと首筋から徐々に下へ下へと唇を這わす。



くすぐったいような、心地良いような感覚。


時々、吐息が洩れてしまう。




「…………」




いつになく今まで以上に


優しい南波さん



この優しさは


いつまで続く……?



そんな事を考えつつも―――――





気付けば私の中で


不安や恐怖感はなくなり



南波さんに身を委ねていた―――――――


























 

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