第5話 敵

そんなある日の事――――



「南波さんっ!!」

「何だ?騒々しい。そんなに慌てて。落ち着けよ!」


「落ちついてられませんよ!仲間がヤバイ奴等にやられたんですから!」


「ヤバイ奴等!?名前とかは?」


「それ所じゃなかったッスよ!南波了に伝えておけ!と…お前の子分を可愛がってやるからなと捨て台詞言われて……」



「…俺を恨んでいる奴の仕業か…?」

「誰か検討つくんすか?」

「分かるなら苦労はしねーよ。…悪かったな…」

「…いや…大丈夫ッス!」


「しばらくは、こっちも様子みるから、お前ら出入りしない方が良い!」



「…でも…」


「…その前に仲間を調べられてるかもな…気を付けて行動しな!」


「はい」


「今日は、もう帰れ!」


「はい」




「………………」



「俺を恨んでいる奴等…?誰だ…?」




そんな中、私達4人はいつもの寄り道コースでファーストフード店にいると―――




「アイツ今頃、焦ってんじゃねーの?」

「ハハハ…良い気味ってやつだろ?」

「だよなーー?」



複数の男の人達の会話が聞こえてくる。



「でも、まだまだ、これからだろう?」


「兄貴の女、傷付けてんだし。しかし良く脱獄出来たよなー?どうやって脱獄したんだ!」


「さあな。つーか、ありえなくね?」


「先生と生徒の禁断だろ?」




「……………」



《やっぱり存在するんだ!つーか…脱獄とかって…まさかね…》



彼等は話をして店を後に帰って行った。




「………………」



「さっきの話ってさ…」

「もしかして…」

「多分、そうなんじゃな〜い?」

「えっ?やっぱり?」

「他に誰がいるの〜?」


「…だよねーー」

「…だよなーー」



「…でも…あーいう輩って…結構、危険な人物絡んでいるから下手すれば死ぬかも〜?」


「冗談にも程があるぞ!」


「ちゅーか、お前が言うとリアル過ぎて怖いわ!」



クスクス笑いながら



「そう?…という事で希美ちゃん下手に近付かない方が良いよ?」


「えっ?誰に?」


「アイツらみたいな輩に。喧嘩どころか…傷付くよ〜」


「うん…ヤられてポイッだね?」



「おいっ!」

「ストレート過ぎやろ?」

「えっ?いや…ついノリで…」

「それから…大きい声で言えないけど…脱獄犯にもね」

「うん…」




《やっぱ、そうだよね…》

《巻き込まれたら大変だもんね》



「…でも…ヤバイ時…もしくは…ヤバくなった時は…協力せざるを得ないかもね…?」


「…えっ…?」



話し方の口調が変わった。




「そうだよなー」

「えっ!?仲間入りしちゃうの?私は?」

「お前は辞めとけ!」


「ちゅーか、女の出る幕ちゃうやろ?自ら傷付きに行くのと一緒やで?」


「あー、大丈夫、大丈夫!色気ないし!つーか…私の今の環境じゃ、近付く、近付かない関係なく目をつけられるでしょう?多分」



「でも…まあ…男みたいだし」と、蒼介。

「えっ!?酷っ!」


「可愛いけど性格悪いもんな?」


「そう?って…ちょっと!!」



別の所から声がし、視線をやると、そこには――――



「うわっ!」


「うおっ!いきなり、しれっと紛れ込まんといて下さいよ」


「わりーな」



深く帽子を被っている人影。


南波了だ。



「ていうか〜下手に出歩かない方が良いですよ~」


優人君が言った。



「まーな」

「ついさっきまでいましたよ。噂してましたけど~」

「ああ。話は少しだけ聞こえていたからな」


「どうするんですか〜?」


「何も打つ手ねーし。お前らにも迷惑かかるのもと思ってな」


「相手が何処まで調べ尽くしているかの問題もあると思いますよ〜?」


「そうだよな?」




そして、私の食べているポテトに手を伸ばす姿。




「あっ!!」

「何だよ!一本くらい良いだろ?」

「返せ!」

「じゃあ、どうぞ!」



口でポテトを渡す。

まるで、王様ゲームみたいなやり方だ。



「なっ!もう良いし!」

「あっそ!」




そして、もう一本取り出す。



「ちょっとっ!! 2…」



私の口に入れた。




「………………」



「美味いか?」



頷く私。



「………………」



《南波さんって…怖いイメージあったけど…違うのかな?》


《お茶目?》




「何だよ!」



私の視線に気付いたのか、振り向くと南波了は、私に、そう言った。




「ううん」

「俺に惚れても良い事ねーぞ!」


「誰も惚れてないし、むしろ惚れない。そういう自分こそ、高校生のガキ(子供)相手に本気にならないでね」


「はあぁぁぁぁっ!?なるかよ!」



「本当に?ねえ、そんな事より先生と恋愛してたの?」

「あー、それはな…でも…理由あんだよ…」

「理由?」



「お前らの知らない事情がな…」

「えっ?何?何?理由、聞きたい!」

「話す理由ねーし!」

「じゃあ、いつか話してよ!」


「お前に話さなきゃいけない理由が分かんねーんだけど?」


「じゃあ、心残りというのは?」

「ねーな」

「えっ!?ないの?じゃあ何で?」

「はあぁぁぁぁっ!?お前ウザ過ぎ!」

「恋愛話ほど、面白いのないし!」



「あのなー」

「…恋する気持ちが…あるだけ良いよ…」

「えっ?」

「私…良く分かんないや!…ごめん、先に帰るね」




そう言って先に帰る事にした。



「アイツ1人で帰らせても大丈夫なのか?それとも、いつもこんな感じなのか?」



「いや…今日は先に帰ってるみたいですね」

「えっ?」

「大丈夫ですよ」

「心配やけど、気を付けて帰ると思いますよ」

「…だと良いが…」



「何か心配事あるんですか〜?」


「ああ…ちょっとな…さっきの奴等の会話からすると案外、他の周囲の事も調べられてるんじゃないかと思ってな」


「あー、なるほど〜。その範囲が分からないから怖いんですよね〜?」


「ああ、そういう事だ。だから、お前らも気を付けて行動して欲しい。仲間じゃないとはいえ油断は出来ないからな」


「大丈夫ですよ!」


「まあ、お前らなら大丈夫だろう?腕は確かだしな。じゃあな」


「はい」




「南波さん変わった〜?」

「そうでもないと思うで」

「そうか?」

「まあ、少しは丸くなったんじゃないか?」

「まあ、更生中だしな?」



「それよりも…さっきの事だけど…恋愛の理由があるとか?」


「あー」


「…もしかして…南波さん…ハメられたとか…?」

「…ハメられた!?」

「おかしいと思わない?」


「…まあ…言われてみれば…そう考えられなくはないけど…」




そんな中。



「なあ、さっき見た?男の中に女一人いた高校生」

「あー、見た見た。女の子可愛かったよな?」


「結構イケてたよな?あれってさ、どういう関係だと思う?」


「SFじゃね?」

「そうか?誰かの本彼女(カノ)とか?」


「…おいっ!噂をすれば、女、出て来たぜ?」


「マジ!?一人じゃん!」




―――――そして――――




「か〜のじょ!」



グイッと肩を抱き寄せた。




「な、何ですか?」 

「一人?」

「…そうですけど…」




《…あれ…?コイツら…さっき南波了の話をしていた…奴等じゃ…》




「ねえ、遊びに行こうよ?」


「えっ…?ごめんなさい!そんな暇ないので失礼します!」


「他の奴等の相手しに行くんでしょう?」

「えっ!?相手!?」




《えっ!?相手って?つまり…それって…体の関係…の事…?》



「あの…何か勘違いされてませんか?話しが見えないんですけど…?」


「またまた〜」


「それだけ可愛いんだし、男と結構ヤってるんでしょ?」




「……………」



「俺達の相手もしてよ」




グイッと肩を抱き寄せられる。



「や、やだ!離して!」



私は、振り払い走り去る。



《私…もしかして…そういう目で見られてるって事?》


《つーか…私の事、3人と一緒にいる所、気付いてたって事だよね…?》


《と、なると…私の存在って…そういう…イメージ?》



私は色々と考えて逃げるうちに、捕まってしまった。



「別に逃げなくても良いじゃん!」

「やる事やってるんでしょ?」

「違う…!私は、そんなんじゃない!」

「隠さない!隠さない!」



私は路地裏に連れて行かれる。




「や、やだ!離して!」



ドサッ


押し倒される。



「いや…!」


「おいっ!しっかり押さえろ!!」

「了解!」



抵抗し暴れる私に容赦なく制服を脱がされ肌が露わになると、同時に私の足が相手の股間に当たったようだ。


「…ってぇ…」


「わ、わざとじゃないし…!」



私は逃げるも、体が恐怖からか上手く逃げれず、すぐに捕まり、再び押さえつけられた。


私は過去の出来事が一瞬過ると同時に、相手の手が私に向かって振り落とされ……


私は瞳を閉じた。




《あれ…?》




「は、離しやがれ!」

「ああ。じゃあ、望み通り離してやるよ!」



そう言うと相手は蹴っ飛ばされた。


「…っ…」

「野郎っ!」



もう一人が襲いかかって来る。


相手は蹴っ飛ばされた。



すると、最初の相手が襲いかかって行く。


何かを手に持っているようにも伺える。


スッと交わされ、相手の手を捻り上げた。




「…って…」


「ナイフなんて、そんな物騒なもん持たねーと闘えねーのか?」


「う、うるせぇ!」

「男は素手でタイマンだろ?」

「黙れっ!」


「…はいはい。じゃあ、面倒なんで、お前が黙れ!クソ野郎っ!」




ドカッ

頭突きをかます姿。


相手は伸びてしまう。



「お、おいっ!」

「死んでねーよ!そいつを連れて、とっとと帰りやがれ!」



彼等は去った。




「つーか、俺の頭が割れそうだっつーの!石頭野郎!どんな頭してんだよ!…なあっ!」



私に問いかけた。



「………………」



「大丈夫か?」



歩み寄る人影。




《何となくだけど…誰か分かる気がする…》


《多分…これは……》




「良かったな!ヤられなくて」




私の前に腰を降ろす人影。


やっぱり奴・南波了だった――――




















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