【 ゴロゴロ 】


 寒い冬だから、夫の大好きな鶏肉と野菜いっぱいの温かいゴロゴロクリームシチューが温まっていい。

 テーブルを挟み夫と久しぶりの夕食。

 テーブルの上には、具材を追加した温かいクリームシチューが2つ並ぶ。


 彼が一口、そのクリームシチューを口へと運んだ。


「おっ、今日のこの野菜ゴロゴロシチューは、格別にうまいね。やっぱり冬は温かいシチューだな」

「うふっ、ありがとう。光輝さん」


 久しぶりの彼とふたりきりの時間。


 食事を終え、キッチンでお皿を洗っていると、後ろから光輝さんが私をいきなり抱きしめる。


「あっ……」

「浮気してごめん。美味しかったよ、美雪。君の作ってくれる野菜ゴロゴロシチューは最高だ」


「あ、ありがとう」

「今まで、こんなに美味しいシチューは食べたことがない。何か隠し味でもあるのかい?」


「あっ、ううん。特別に何かしたわけじゃないけど。強いて言うなら、愛情をいっぱい入れたかも……」

「あはは、愛情か。通りで美味しいはずだ」


 そう言いながら彼は、後ろから私の頬に軽くキスをした。


 でも、すぐに手を解き、急にお腹を抱える。


「あっ、食べ過ぎちゃったかな? ちょっとお腹が痛くなってきた……」


 振り向きながら、笑顔で彼に言う。


「ゴロゴロ野菜をいっぱい入れたからね。お腹までゴロゴロになっちゃったかな?」


「何かそうみたい。ごめん、ちょっとトイレに行ってくる」

「はい、いってらっしゃい」


 彼は額の冷や汗を左腕で拭き取ると、慌ててトイレへと向かった。



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