第4話 嘘を買う愉しさ

 次の金曜の夜も、育子いくこは『悠愛ゆうあい』に行き、拓斗たくとを指名した。

 拓斗は満面まんめんみを浮かべて、育子をもてなした。

 「らっしゃいませーっ!・・・お姉さん!待ってたよっ!」

 「拓斗。元気だった?」

 「元気だよ!お姉さんに会いたかったなあ。」


 彼らは嘘八百うそはっぴゃくを、金に変える錬金術師れんきんじゅつしである。今夜もホストたちの嘘が炸裂さくれつするホストクラブのにぎわいは、異常なテンションであった。今夜も女性客たちは、ホストたちが吐く嘘に大金を使うためにやってくる。


 「ドンペリ、いただきましたぁ~!」

 今夜も育子は、拓斗の順位を上げるためにドンペリを注文した。

 「お姉さんが、俺の一番だな。」

 拓斗は育子の耳元でささやいた。

 「今夜も、俺のうち、来る?」

 「え?いいの?」

 育子の顔はとろけていた。

 閉店まで、育子は酒と料理を注文し続けた。



 「拓斗、売り上げに貢献こうけんしてくれてありがとう。お前をこの店のナンバースリーとして、店頭に写真を飾らせてもらうよ。今後の成績によって、順位は上がっていくかもしれないな。」

 チーフが拓斗に耳打ちをした。

 「ありがとうございます。貢献できるよう、これからも精進しょうじんします。」

 拓斗はチーフに真面目に答えた。


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