第13話 再会

「回復魔法、感謝する。

 大魔法使いという言葉、本当のようだな。

 勇者の子というのも事実なのだろう?」


「シンジル」「オレモ」「オレモ」


「世界の浄化というのは、オーク族を殺す事なのか?」


「…」「…」「…」


「それはわかりません、私達が傭兵になったのは母を探すためなので」


「分らんな、なぜそれが傭兵に繋がるのだ?」


「傭兵になる前に冒険者として3カ月程母を探したのです。

 しかし信じられる情報も目ぼしい情報も得になく時間を無駄に過ごしました。

 ただ、その3カ月で気がついた事があるのです。

 情報は権力者の下に集まると」


「一理ある」


「支払いが多い仕事は権力者からの依頼。

 私達は権力者の下に集まる情報から母を探そうと思ったのです。

 そしてその情報は信頼できるものでなければいけません。」


「俺様達がマーチャンから手を退けば二人は権力者の信頼を得るのだな。

 分かった、フトウ様に話を通してくるから申し訳ないが少し待っていて欲sh」


 バンプが全て語り終える前に遠方から雄叫びが聞こえてきた。

 先ほどバンプが発した雄叫びよりもそれは大きく感じる。


「ドイタドイタドイタドイターーーー!」


 猪に乗ったオークライダーが勢い余って転げ落ちながらバンプのもとに駆け寄ってきた。


「たたたたたたたた大変ですバンプ様!!

 急ぎフトウ様のもとに!!」


「何事だ!騒々しい!」

 

「敵襲です!!

 こ、このままではフトウ様が!!!」


「な、なんだと!?

 …す、すまないが、赤のシェリーと緑のフィノよ。

 しばしの間、俺様達の傭兵になってはくれまいか!?」


「ヒヒーン!!」


「ぺ、ペドロ殿も頼む!」


「ヒヒーン!!」


 バンプに頼まれたペドロは誰よりも早くオークライダーが走ってきた方角に走り始めた。


「おお!これは勇ましい、馬にしておくにはもったいないな、ガハハハハ!」


 そう言ってバンプは駆け出し、二人も返事をする前に慌ててその後を追う。


◆◇◆


『GUUUoooooooooOOOOOO!!!!!!!!!!!』


「お、お前何者だ。儂にスキルを発動させず、たった一人で儂を追い詰めるとは」


「すみません、別にあなたの命が欲しい訳じゃないんですよ。

 ちょっとした情報が欲しいんですけど、落ち着いて話して貰えませんか。

 情報を教えて頂けたら解放しますので」


「手も足も出ない儂にそんな口約束、信じられるものか」


「トウリョウ!」「トウリョウ!」


「おおっと、皆様落ち着いて。俺を攻撃するとトウリョウさんは死にますよ」


「キタナイ」「キタナイ」


「こうしていても埒があかんな。

 仕方ない、ひとまず聞きたい情報について話してみるがいい、」


「ありがとうございます。

 こちらに空飛ぶ馬が来たと思うのですが御存知ありませんか」


「フトウ様ああああ!!」


「おお、バンプよ!それ以上近寄るな、こやつ妙な技を使う」


「あれ?あれって…なんだろう聞いた事があるような…」


「はぁ…はぁ…、バンプさんもフィノも足が速いんだから」


 先に走っていたペドロを3人は追い抜いていた。


「そういうシェリーもペドロを抜かしてるし」


「ヒヒーン!!」


 そしてペドロも到着する。


「aaaaaaaaaAAAAAあああああああ!!!」


 自然と声が漏れていた。


「ぺ、ペドロ!?」


「え、あ、え、えええええええ!!!?!???」


「え、ふぃのま…うぇ?

 …かかかかかかかかかか??!?!?!?!?」


「ど、どうしたのだ?だだだだ誰だ!?」


 私は周囲の目も声も気にする事無く、


「第6勇者!!い、生きていたのか!!」


 初めて会う目の前の男に声を掛けた。


「え?」


 第6勇者は対峙していたフトウから私へと視線を向ける。

 この世界には無い特徴的な質感と姿がそこにはあった。


「間違いない!!

 そのサラリーマン姿!繋げた腕の傷跡!!

 やはり第6勇者なのだろう!?

 私は12年前、転送直後のあなたを見たんだ‼」


 ああ、まさか、まさか生きていたなんて。

 これで転送された勇者6人全員の所在は掴めた。

 あとは、あとはどうすれば良いんだろう。

 元の世界に戻る方法はあるのだろうか。

 とにかく彼の知っている女神の情報が知りたい。

 

「貴様!!勇者なのか!?」


「なななな、なぜそれを!?って?

 ええええ、いやいやいやいや!?

 ちょちょ、ははは、裸!?裸ですよ!?

 ちょっと!!隠して隠して!!」


 私の神から授かった恩寵は光学迷彩。

 完全に姿を消すには全裸になる必要があった。

 二人の成長が見たくて数カ月間ずっと見守ってきたけど…


「母様‼」「母様‼」


 衣服を何も身に着けず、ペドロに跨る私に娘達が飛びついてきた。

 本当にこの娘達は、まだまだ可愛い子供だ。


「全く、いつまでたっても甘えん坊なんだから」


「ヒヒーン!」


 再会に泣きじゃくる二人娘の頭をそれぞれ撫でながら視線は第6勇者に向ける。


「改めまして…第6勇者さん、初めまして。

 私は第2勇者、四天王寺冥シテンノウジメイ

 貴方とこの世界の情報を共有したい」


◆◇◆


「な、なにがどうなっておるんじゃバンプ!」

「ガハハハハ!

 良くわかりませんが、時代が変わりそうな事は確かですな!

 面白くなってきやがりましたよ、これは!

 ガーハハハハ!!!!」


◆◇◆


 その後、生け捕りにされていた

『オークスレイヤー』『ホムラ―』のメンバーは解放され、

『マーチャン』を包囲していた『百鬼夜行』の姿はいずこかへ消えた。


「あの娘達、マーチャンを救ったというのにいつになったら来るのだ…。

 ブルゴーよ、報酬を受け取りに来ると思うか?」


「さぁ、どうでしょう?

 金に興味は持たれなかったのでしょう?」


「ああ、この魔法付与されたミスリルにも興味を示さなかったよ。

 しかし、そうか、勇者の情報を欲していたな。

 そのうち来るのでは無いかと思うが…、我が現役のうちに礼を言えれば良いが」


「しっかりご自分の口で礼を言って下さいね、まだまだ現役でいてもらわないと」


「グッ」


 シャンベルは息子の言葉に目尻に涙を浮かべた。



――――――――――これは母を探した、赤と緑と馬の傭兵物語。

 

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