第8話

「約束とは何なんだルイズ。おおっ、王子。私が代わって罰でも、労でも行いますので、娘だけ・・・ルイズだけは許してください・・・」


 お父様が息を荒くして、王子の腕を掴みましたが、


「お父様・・・これは私にしかできないことなの」


 私は微笑んでそう言いながらお父様の背中を擦る。すると、王子が鼻で笑って、


「では、僕の妃になってもらうかな」


 王子がそう言うと、お父様は、


「本当か、本当なのかルイズ」


 と言って、パッと咲いた花のように驚いた顔で私の腕にしがみつく。私が頷くと、お父様の顔が徐々に綻んでいかれます。


「でもやっぱりやめた」


 そう王子が私たちに告げると、今度はお父様の顔がしおれていく花のように徐々にしおらしくなっていきました。


「そうですよね・・・犯罪者の姉、犯罪者の家との縁組なんて・・・・・・仕方ないですよね」


 さっきのさっきまで、別の男、しかも罪を働き、罪を私に被せようとした男と婚約していたです。そんな女と由緒正しい王子が結婚なんて・・・・・・


「いや、僕は本気さ。でもね・・・・・・」


 そう言って、クリス王子は片膝を地面につけ、右手を心臓の前で拳にしました。私とお父様は恐れ多くて慌てふためき止めてもらおうとしましたけれど、王子は一切譲りませんでした。


「僕はルイズ・・・・・・キミのことを一人の男として愛している。だから、キミには一人の女性として、ボクを見て欲しい。だから、もし、ボクでよければ、この手を握って欲し・・・」


 私は迷いませんでした。

 クリス王子がゆっくりと差し出したその手を私はすぐに握りました。すると、王子がとてもびっくりされた顔をされました。


「あっ、いえ、その・・・・・・」


 はしたない女と思われてしまったかしら。レディーたるもの相手が王子だからと言って、奥ゆかしさはマナーとして必要だったに違いない。でも・・・


「ルイズっ!!」


 クリス王子は軽い身のこなしで立ち上がり、私を抱きしめ、私を回転させ、細身なのに軽々と私を持ち上げた。


「はっ、恥ずかしいです。クリス王子」


「あぁ、すまない。あまりの嬉しさに天にも昇る気持ちで、ついっ」


「天にも昇りそうなのは私の方です。早く降ろしてください」


 周りのみんなが温かい目で見ているのだけれど、とても恥ずかしい。王子は笑いながら一回転させながら、降ろして・・・・・・降ろしたと思ったら、お姫様抱っこをしてくださいました。くださいましたけれど・・・・・・


(これはこれで・・・王子の顔が近くて・・・・・・恥ずかしい)


「では、みんな。今日はめでたい日となった」


 私はクリス王子の言葉を聞いて、私を愛でたい日だとちらっと思ってしまいましたが、慌てて雑念を消しました。


「ここの料理はとても美味しかったが、水を差されてしまった。どうだろうか、みんながよければ、今から城でパーティーを行おうと思う。ここに負けない料理と飲み物を用意しよう。どうだ?」


 そうクリス王子が言うと、みんな歓声を上げた。


「では、行こうっ。ルイズ」


 私たちは歩いて行く。

―――幸せな未来へと向かって。



FIN


◇◇◇

最後までお読みいただきありがとうございます。

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私の婚約者と妹は共謀して「私に父親殺し」の罪を被せようとしてきます。 西東友一 @sanadayoshitune

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