義母が斡旋した相手と婚約破棄することになりまして。~申し訳ありませんが、私は王子と結婚します~

西東友一

第1話

 まず、八歳の頃。

 お母様が亡くなりました。

 とてもお美しくて、お優しいお母様。

 私とお父様は悲しみに暮れました。特にお父様はあまりの悲しさにどんどん痩せ細っていきました。


 けれど、十歳のある日。

 お父様が元気になって帰ってきました、それがお義母様との出会いでした。

 お父様は私にその女性と結婚けどいいか? と尋ねてきましたが、私はお父様が幸せなら、と思い受け入れました。お義母様も連れ子がいて、お義姉様と義妹ができました。歳が近く、私は仲良くなろうと思いましたが、お父様がいないところでは、私を無視したり、見えないところで足を踏んだりするような義姉妹でした。私は辛かったですが、痩せ細ったお父様が悲しむ顔をもう見たくないと思って黙っていました。


 いつか、分かり合える。ちゃんとした家族になれる。

 そう思っていた矢先にお父様が亡くなりました。その日はあまりのショックに私は大泣きして、疲れて早く寝てしまいました。あまりに早く寝てしまったので、夜遅くに目が覚めて、水を飲みに廊下を歩いていると、談話室の明かりが点いているのに気が付き、近寄ってみると、お義母様とお義姉様と義妹が笑っていました。どうやら、お義母様が毒を盛ったそうです。この三人はお父様の悲しみに漬け込んで、財産目当てで結婚と殺害を計ったようです。


「あの子はどうするの?」

 義妹がお義母様に尋ねました。私も殺されると思って、その場で震えながら固唾を飲んで見ていると、

「あの子が欲しいと言っている人がいてねぇ。その御方が高く買い取ってくれるのよ」

 義妹は「えー、あいつをお姉様呼ばわりするの嫌なんだけど」と愚痴を言っていましたが、義姉様が

「私がいるでしょ。二人でおもちゃにして遊びましょ」

 と宥めると、義妹は「じゃああの顔ムカつくから、火傷させるの手伝って」と怖いことを言い始めました。すると、お義母様が口調を強めて、

「駄目よ。傷をつけたらその御方に怒られてしまうわ。特に顔は駄目。いいわね?」

 と念押しすると二人はしぶしぶ頷いた。それを聞いて少しほっとしましたが、お義母様は言葉を続けて、

「でも、傷つけなければ、何してもいいわ。売れるまではごく潰しでしかないんだから、雑用でも、憂さ晴らしでも何に使ってもいいわよ」

 と言うと、二人は卑しい笑い方をしました。ろうそくに照らされた二人の顔は悪だくみをする悪魔のようで恐ろしく感じました。私は急いで逃げ出そうかと考えましたが、この家は私の家。お母様とお父様との大切な思い出があるこの家から出ていってしまえば、思い出が消えてしまうような気がして、幼い私は逃げることができませんでした。


 


 

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