第2話

 状況を整理しましょう。


(まず、私はなぜか、ロープで縛られている)


 少し身体をよじったり、動いてみたけれど、結び目がほどける様子はない。


(次に私は執事に見張られている。逃げられそうには……ないわね)


 私が振り返ると、執事は静かな瞳で私を見ていた。笑顔を見せても、執事は愛想笑いもしてくれなかった。ちょっと、凹む。


(そして、婚約者のカイジンとウィル王子がテーブルの上で……トランプゲームをやっている。キングとクイーンのフルハウスとウィル王子が言っていたから、きっとポーカーね)


 私は再び、カイジンとウィル王子を見る。変わり果てた姿のカイジンの背中は見ていて悲しかった。


(でも、ポーカーってことは賭け事をしているのかしら?)


「嘘でしょ……」


 私がカイジンに渡したお金の入った袋がテーブルの上にあった。そして、ディーラーらしき人がその袋をカイジンの手元から没収しようとしてる。


「こっ、これはダメだっ!!」


 カイジンは悪あがきをしてその袋に手を伸ばした時、ディーラーらしき人がナイフを一瞬で出して、カイジンのクビにそっとつけた。


「ルールはルールです」


「くっ……」


 カイジンはその袋を諦めた。でも、それは私の家のお金だ。私は目を覚ましたばかりで状況を把握しようとしていたら、ウィン王子は立ち上がり、ポーカーはお開きになろうとしている。


「まっ、待ってくれ」


 カイジンが手を伸ばそうとすると、ディーラーらしき人がギロっと睨む。すると、カイジンは慌てて手を引っ込めて、愛想笑いを浮かべて、


「いや、俺が悪かった。だから、もう一度チャンスをくれ」


「なら、わかるだろ? カイジン」


 そう言うと、カイジンは振り返る。


「アイツをベットする」


 ペット?

 なんで、私がペットになるの?


(いや違う……ベット。カイジンはベットと言ったっ)


「アイツ呼ばわりも好きじゃないよ、ボクは」


「あぁ、クレアをベットする」


 はしたない言葉は使いたくないですが、「どの面下げて言ってるんですかっ」と言いたくなるような偉そうな顔をしていました。


「それと、彼女を怯えさせたことも謝りたまえ」


「それはいいじゃないですか。あなただって、こんな賭けに応じた悪い……いえっなんでも。すまなかったクレア」


 王子が出ていこうとすると、カイジンは速やかに私に謝って来た。


「すまなかったじゃ……ないでしょ。ふざけないでよっ」


 私が暴れようとすると、執事の方が転ばないようにそっと私を抑える。それでも、私は暴れたけれど、王子は席に着き、カイジンもテーブルを向いてしまい、ディーラーはカードをシャッフルし出す。




 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る