第4話銭湯の秘密

「ねえ、コウタ君。モーモーって何よ」

西野は嫁さんの話しを聞き流し、マッコリを飲んでいた。

「ママ、モーモーって、お尻をぷりっとするの。パパはお風呂の泡でお尻を洗うんだよ!」

「こらっ、宗一。作り話刷るんじゃない!」

「いーいや、こりゃホンとの話しですよ、奥さん」

いつの間にか、西野のテーブルに西条さんが座っていた。

「す、すいません。後で旦那を叱りますので」

「西野の旦那~、俺らと飲もうよ~」

「理恵ちゃん、もう少し飲んでいい?」

「いいよ!お金」

理恵は右手を差し出した。西野は財布から2万円取り出し渡した。

「じゃ、朝までには帰ってきてね」

「ありがとう理恵ちゃん」


西条さんのテーブルに移動した。

「初めまして、西野と申します。西条さんとは、5年来の銭湯仲間です。たまに、飲んでます」

若い衆はヤンチャな若者が5人いた。

金髪はもちろん、隠しきれないタトゥー。

だが、全員が礼儀正しかった。

西条はしつけをきっちりしていたのだ。

「あっ、西野さん。なに飲まれます?」

金髪、唇ピアスの若い子が尋ねた。

「じゃ、マッコリで」

全員飲んでいるので、猥談わいだんに花が咲いた。


若い子らは、下が21歳で一番歳上が24歳だった。

腕時計を見る。22時半である。西野は帰り支度をすると、

「ちょっと、西野さ~ん。もう一軒」

「そうだよ、西野の旦那。これからだよ」

西条は代行運転を電話して、スナックに向かった。

会社の御用達の店らしい。


バーボンを1本下ろした。若い子にバーボンは似合わず、レッドアイ、ジントニックなど飲み、西野と西条はバーボンのロックを飲んでいた。

「旦那、松の湯の番台さん身体悪いんだって!」

「え、島田さん?今日もいたよ」

「今週一杯頑張って、入院らしいんだ」

「じゃ、松の湯は?」

「さぁ~、家族の誰かが代打だな」

西野はロックを一気飲みした。若い子もバーボンとやらを飲み始めた。

彼らに、バーボンはまだ早いだろうが、経験は積むものだ。

一気飲みをしたら、カウンターの女の子が、

「あ、お兄さん、一気飲みダメ。ニホンジンの悪いクセ」

「君は、どこから来たのかい?」

「チューコクです」

「へぇ」


この辺りから、記憶が欠落し始める。明日は土曜日だから助かった。

だが、松の湯の番台さんの体調不良の事はしっかり覚えていた。

西野は西条に、2万円渡したが1万円戻された。それから、これタクシー代と言って1万円渡された。

つまり、西条さんのおごりだった。

丁重にお礼を言って店を出た。

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