第4話…過去②

「あの、確かこのクラスに榊原さかきばら方人まさとという人がいるはずなんですが…」


不思議なことに、私もちゃんとここの制服を着ている。

で、なぜか榊原さかきばらさんのクラスもわかってる。

そんな細かいことはどうでもいいとして。


榊原さかきばら?アイツなら、今だと音楽室か、化学室だよ」 


「そうだな、たぶん、そこだよ」


廊下側で話していた二人組は、にこやかに答えてくれた。


「ありがとうございます」


私はそのまま音楽室へ向かった。

ガラリとドアを開けたけど、誰もいない。

じゃあ化学室?

階段を降りて化学室へ走る。


ドアを開けたら、いた!

白衣を着た榊原さかきばらさん、何かの実験中?

振り返って私を見る。


「何か?」


「あの、私のことおぼえてますか?」


「は?何組ですか?」


「えっと、あの、いいです、おぼえてないなら。ごめんなさい」


やっぱり、記憶があるのは私だけなんだ。

榊原さんは、その時代の榊原さかきばらさんだってことか。

がっかり。


ドアを閉めてそこを離れた。

階段を上がってくる人の気配がした。

そっと隠れて、歩いてきた人を確認した。

さっき、榊原さかきばらさんの居場所を教えてくれた男子2人だった。


「おー、榊原さかきばら、ここにいたのか!」


「うん、課題の実験がまだ終わらなくて…」


「あのさ、今、女子、来なかった?」


「来たよ、名前聞くの忘れたけど」


「何か言われなかった?」


私は榊原さかきばらさんたちから見えない位置に隠れて、聞き耳を立てた。


「なんか…私のこと覚えてますか?って言われたけど」


「は?どういうこと?」


「いや、わからないんだけど」


「で、榊原さかきばらはなんて答えたんだ?」


「何組ですか?って」


うん、榊原さかきばらさんはそう言った、たしかに。


「おいおい、マジかよ、あの子のこと知らないのか?」


「うん、知らない」


「俺らの学年では1、2を争うほど可愛い女子を知らないって、ホントにお前というやつは…」


え?今、なんて言った?


「その子がわざわざお前を探してきたってことは、告白だったんじゃないのか?」


「告白って、なんの?」


「いや、だから、付き合ってくださいって言いに来たってことだよ」


えぇーーーーっ!

私が?


「付き合うって買い物とか?CDでも買いに付き合ってってことかな?」


ガタンガタンと、椅子だか机だかが崩れる音がした。

きっと、榊原さかきばらさんの答えに男子2人がひっくり返ったんだろう。

私もずっこけた。


榊原さかきばらって、ホントに鈍感だよな、頭はずば抜けていいのに、そういうとこアホな」


「アホって失礼な」



クククッと思わず笑ってしまって、足元をちゃんと見てなかったせいで、ガタンっとつまづいてしまった。


「ん?誰かいる?」


ヤバいっ、早く帰ろう。

もう5分過ぎてしまう。


階段を駆け降り、体育館の倉庫へと走る。

【BOXたられば】

の鍵を開け中へ。

ロッキングチェアに腰掛けた。


私しか記憶ないんだ…

昔に戻っても何も変わらなかった、残念。



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