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21日


その手を取ると、破滅の道へ向かうことは、分かっていた。

それでも取ってしまった。そうしないことなど、出来なかった。だって貴方が笑うから。そうして私を救い上げるから。貴方のその笑顔のためだけに、私は生きていたって思ってしまうから。

だから今回も貴方の手を取って、落ちるの。貴方と共に。


「堕天」




22日


自分は化け物なのだと知った。鏡に写った自分の顔を見た時、それはとてもとても恐ろしい顔をしていた。俺は怖くなって鏡を叩き割った。破片で手を切ったが、あまり痛くなかった。俺は化け物なのだ。痛みを感じないのだ。

ただ心だけが痛い。俺はまだ、人の心を捨てたわけではないのか。そうだといい。


「化け物になった日」




23日


君が幸せでいてくれれば良かった。君の願いが叶えば良かった。私のことなんてどうでもいいから、こんな世界もどうだっていいから。その全てを犠牲にしていいから。あの子を幸せにしてください。笑わせてあげてください。私には出来ないから、どうか、よろしくお願いします。

私はそれを、見ていたい。


「一生のお願い」




24日


「頑張れ」「君なら出来る」「大丈夫だよ」

そんな風に、声を掛け続けた。すると君は笑ってくれたから、私の言葉が君の支えになっているのなら良かった、なんて思っていたのだ。

でも君は、急に私に会ってくれなくなった。無責任な励ましに辟易していたらしい。そんなの、言ってくれなきゃ分からない。


「励ましの言葉」




25日


別に博愛主義者なわけではない。ただ君が泣いているというのなら、立ち上がりたいと思っただけだ。私には力はないと思う。でも君を助けたいと思う、その気持ちだけは誰にも負ける気がしない。それがあれば、きっと奇跡だって起こせると思うんだ。

嘘だと思う?じゃあ見ててよ。君のために吠えるから。


「遠吠え」




26日


君は霧を纏っていた。それは、夜のような色をしていた。仄かに薄ら寒くて、僕は身震いをする。でも、君から離れたくはなかった。

それが何か聞くと、孤独だよ、と返ってきた。私が一人になったとき、これに飲まれるのだと。

だから君から離れないようにしたのに。どうして、一人で行ってしまったんだ。


「君はきっと霧の中」




27日


「美味しいからこそ、虫が付くのでしょう?」

林檎を器用にナイフで切る君は、食べられていないところを、僕に差し出してくれる。僕が虫が嫌いだってわかった上で、君はこれを差し出してきている。君は意地悪だ。

「私は貴方に美味しい林檎を食べてほしいだけなのに」

クスクス笑う君。仕方ないなぁ。


「美味しい証」





28日


それは貴方にとってはきっとゴミなのでしょう。でも私にとっては宝物なのよ。だってここには私の思い出が詰まってる。この傷だって、値段を下げる代物じゃないわ。私にとってはエピーソードの目印よ。

ゴミだなんて言わないで。確かにいつかは捨てなければいけない日が来る。

でも、もう少しだけ……。


「思い出に浸る」




29日


寒いから手、繋いで〜、と甘えているカップルがいた。あれ、いいな。自然に繋ぐ流れになれて。なんて思う。隣にいる私の恋人。デートだけど、手は繋いでいない。

すると君は私の視線に気づく。君も会話を聞いていたのか、すぐに口を開いた。

「手、繋ぐ?」

「何で?」

「繋ぎたいから」

んー、好き。


「手を繋ぎたい理由」




30日


浮気なんてしてないよね。そう言う君の声が震えている。可愛いなと思って。

「君を差し置いて、そんなことするわけないじゃないか!」

「ユミとこんな親しげにして!?」

眼下にばらまかれる写真。この女は確か、君の親友の……。

「そんな男より、俺にしろよ!」

たまらず飛び出して。あ、しまった。


「ベッドの下で見ていた男」




31日


真っ暗な空に、一本の線が引かれる。それは闇を切り裂いて、きっと私の知らない遠いところまで、どこまでも照らしていくのだろう。

光の屑が、降って落ちてくる。それが私の手にも落ちて、熱いような冷たいような、不思議な感じ。

さあ、もっともっと光って。私の行く先も、どうか照らしてちょうだい。


「光の行く先は」

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